章題を「傘」としたのは、ここで持久戦を展開しているSFF(スペシャル・フロンティア・フォース)が技術的・政治的にCIAの傘下に入っているからです。
CIA(セントラル・インテリジェンス・エイジェンシー)は近未来でも世界最高の軍事インテリジェンスを誇り、ウラン鉱山での蜂起が長期間持ちこたえられたのは、ここの支援のお陰とします。
持久戦には欠かせない「兵糧入れ」もして貰い、それはCIAの軍事衛星からカプセルで投下され、地上付近で落下傘を開く手法が考えられます。
米中間での直接的な軍事衝突は避けられますが、後方支援という形ならば今のウクライナ支援と変わらず、大いに行えます。
近未来では米中の覇権争いは益々エスカレートしているので、アメリカはここぞとばかりにチベット蜂起を支援します。
それはSFFの優れた情報戦略の賜物でもあり、強制労働所であるウラン鉱山の搾取と汚染の実態を暴き、そこでの蜂起をライブ配信したコトで、世界の目を中国の非情なチベット支配へ集めました。
この動画配信は世界中に拡散しバズったので、いくら中国がファイアーウォールで観れなくしても、ネットの性質上どうしても抜け道は出来ます。
この抜け道を拓く役割は香港の若者達が担い、こうした情報戦は「時代革命」の頃からずっとやって来ています。
チベット蜂起に呼応する形でウイグル自治区の「再教育中心の解放」が行われ、この抵抗運動もネットでアピールされます。
しかしこちらは「大脱走」という性質上、あまり当事者のインタビューは出来ず、彼等を匿う必要があります。
そのため「党」としては情報戦の脅威は感じず、なるべく水面下で事件を片付けようとして、首謀者である流河の追跡にもさして力を入れませんでした。
目下「党」が一番の脅威としているのは、「死を覚悟した者達」によるウラン鉱山の蜂起で、そこでは警備兵300人余りが鉱内に収容されているので、試したくてしょうがない戦術核兵器などは撃ち込めません。
ウラン鉱山へ向かう道路や橋は破格されて、歩兵で攻めざるを得ない人民解放軍は、要塞と化した鉱山を落とすのに多大な時間と兵士を費やすコトになります。