知る人ぞ知るシブいフォーク-ロックアーティスト、ジャクソン-ブラウンに「Time the Conqueror (時代の制覇者)」というアルバム・タイトルにも成っている曲があります。
この歌は自分が時代を制覇すると云った気概と、時代が全ての人を制覇すると云った面の両方が唄われています。 ブラウンの青年時代はヒッピー全盛時代で、彼もそのムーブメントにドップリと漬かってインドに長期滞在しました。 そうした徴兵逃れのヒッピー達の暮らしは決して平坦なモノではなく、彼ほどその苦悩を誠実に歌ったアーティストは他に居ないかと思えます。
私もこのインドに逃れたヒッピー達を「Synの物語」の終章「幸」で登場させましたが、こうした近代史を現代の広い視野から大局的に「制覇」するのは容易なコトです。 しかしやはり当時者の苦悩に共感する必要性はあり、それを知るのにブラウンやジョーン・バエズのようなアーティストの存在は大きな価値があります。
歴史物語では個人的な価値観を極力廃して、史実をありのままに描き読者に評価を任せるのが上道とされます。 しかし物語を作成する以上どうしてもそれは作者の世界と成り、それを制覇してしまうのは宿命かと思えます。 日本を代表する近代史作家、司馬遼太郎もこのコトは認めており、それを行うには多大な自制心と謙虚さが必要だとしています。 これを浅田次郎は「All you need is love」としており、池澤夏樹は「時代に夢と希望を描きたい」と語っています。
私もこうした偉大な先達者に習いたいと思い、昨日テレビで「短歌甲子園」をやってたので久しぶりに思いのタケを「五七五七七」にまとめてみます。
ーー 物語 時を制すは 朗らかに 人への共感 素直に描こう ーー やはり共感こそが物語の要かと思うので、それに一番のウエイト(重き)を置こうと思います。
ーー 型破る 必要性は まるで無く フツーの言葉が 一番届くや ーー 甲子園ではやたらと意表突く言葉が目立ちましたが、それを詩だと思うのは子供っぽいでしょう。
ーー 人はみな 同じ夢見て 生きて来た それは希望と 愛の思い出 ーー これを描くのが物語作家の使命かと思い、「大平等観」に達せられたら善いかと思います。