ゲイに成った実朝(さねとも)の屈折と兄の悲運は無関係とは言えず、彼が男しか愛せなくなったのは兄の死が大きく関わっていると思います。
生まれながらにして王と成るべく競わされ、明らかに王の器で優れていた兄を蹴落とさなければならなかった実朝は、恐らくずっと兄の影を引き摺って生きたのかと思います。
ナツィルパル二世もそうした葛藤を経て来ており、男しか愛せない男と成っていました。
その為に彼は女性に対する思い遣りに欠け、兵士達の狼藉を無関心に許ました。
戦乱の世に育った彼にとって女性は支配される存在に過ぎず、愛するに足る存在とは成り得なかったのですが、トゥルクの出現が彼の価値観を揺さぶります。
なぜ彼女の様な美女(セイは30代ですが20代に観えた)が戦乱の世でかくも自在に振る舞えるのか?
彼女の歌はまるで世界制覇を成し遂げたかの様で、彼女がメソポタミア語を話せるのもナツィルパルを大いに惑わせました。
セイはその訳を話し、ヒマラヤのK2で死んだシバジーとの山での暮らしや、「星の旅」とシバの転生についても語ります。
これは俄には信じがたい話ですが、カヤで信じ易くなっているナツィルパルには通ずるモノがありました。
30代の彼はそれまで女性に惹かれたコトは一度も無かったのですが、初めてその気持ちを抱きます。
また、彼は王なので子を作る必要があり、それが出来ないのを「恥」と感じていたので、自分の性癖を変えられるかもと希望を持ちます。
そうしてナツィルパル二世はトゥルクに結婚を申し込み、彼女はアッサリとそれを承諾します。
さて、果たしてこの夫婦は上手く行くのか? セイの物語は思わぬ展開を見せますが、これには正直私もまだついて行けてないので、次回からまた少し現代に話を戻させて貰います。