ささやんの天邪鬼 ほぼ隔日刊

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

フクシマ記念日に寄せて(その2)

2023-03-12 16:12:52 | 日記
きのう3月11日で東日本大震災から12年が経つが、12年前のこの大震災について論じた新聞社説のうち、きょうは残る3紙、読売新聞、産経新聞、日本経済新聞の社説を取りあげよう。


まずは読売新聞の社説《大震災12年 移住を地域再建の足がかりに》から。
この社説の論旨もタイトルがよく示している。タイトルにいう「移住」とは、フクシマ原発事故によって汚染され、ヒトが住めなくなった「帰還困難区域」へと住民が戻り、再び住みはじめることを指している。

フクシマ原発事故によって汚染された地区の除染は遅々として進まず、住民の帰還が困難な状況は、12年経った今でも続いている。このことについては(きのうの本ブログで取りあげた)毎日新聞の社説が力説する通りだが、読売は知ってか知らずか、この「困難」がいとも簡単に除去できるかのように捉え、次のように書いている。

東京電力福島第一原子力発電所の事故によって住民らが避難を余儀なくされた福島県では、今も7市町村に、放射線量の高い帰還困難区域が残っている。
このうち駅前などのエリアは、国が『復興拠点』として除染を進め、人が住める場所が広がった。政府はさらに、復興拠点外でも帰還を望む住民の自宅周辺を除染する制度の創設を打ち出し、関連法の改正案を今国会に提出した。
制度がスタートすれば、故郷に戻りたい人は、原則として全員が帰れるようになる。


えっ、何だって?「帰還を望む住民の自宅周辺を除染する制度」がスタートすれば、「故郷に戻りたい人は、原則として全員が帰れるようになる」だって?
制度がスタートしても、実際の除染作業は計画通りには進まないのが、放射能汚染の厄介なところではないのか。12年経った今でも、除染作業が1割程度しか済んでいないのは、そのためではないのか。

除染作業が簡単に終わり、地域再建がすぐにでも実現するかのような幻想をふりまく読売の社説には、岸田政権の原発再稼働推進政策を擁護しようとする底意がありありと見え、案の定とはいえ、唖然とさせられた。


次に産経新聞はどうか。

《東日本大震災12年 伝える意思を繫がる力に 復興と防災で世界を支えたい》とタイトルを掲げたこの新聞の社説は、ロシアの侵略による戦禍を逃れて宮城県石巻市に身を寄せた、ウクライナ人・イリナさん(63)の境遇を紹介し、彼女の不幸な境遇と重ね合わせに東日本大震災の意味を描こうとする点に特徴を持っている。

戦禍に見舞われたイリナさんと、地震・大津波の災禍に見舞われた東北地方の人々、――その共通点は何かといえば、「大切な命を奪われる悲しさ。故郷が破壊される哀しさ」を味わわされた点にある。

人命は尊く、その意味は限りなく重い。人命とその喪失の重さの前では、戦禍が独裁者プーチンによるものか、災禍が大津波によるものかは、どうでも良いことのように思えてくる。

だからこの社説は、ウクライナに戦禍をもたらしたプーチンの責任を問うこともなく、東北地方の災禍を拡大させたフクシマ原発の、その設置責任、管理責任を問うこともない。

これらの責任を不問に付すことによって、産経はプーチンや東北電力を免罪しているように見えるが、次の文章を読むとき、実際、そんな産経新聞社の姿勢など、どうでもよいことのように思われてくるのである。

平成二十三年三月十一日
『あの日』が刻まれた墓碑がある。
12年の時が流れた。
十三回忌である。
死者 1万5900人
行方不明者 2523人
震災関連死 3789人
忘れることはできない、忘れてはならない。
今を生きる者が、東日本大震災のすべての犠牲者に心を寄せる『鎮魂の日』である。被災者と被災地の復興を支え抜く意思を、改めて心に刻みたい。


この社説に漂っているのは、「死者のまなざし」である。死者の目で見るとき、この世で行われる/行われた一切は虚しい。原発をめぐる岸田首相の政策転換の悪あがきも、むろん虚しい。首相の悪あがきをあれこれ論(あげつら)うことも同様に虚しい。

東日本大震災をテーマとして取りあげながら、震災と大津波の災禍にだけふれ、原発の「げ」の字にもふれようとしない産経新聞。そんな産経の姿勢についてあれこれ論うのも、虚しいことのように思われてくる。

この社説は、最後に次の一文で締めくくっている。

日本は災害多発国である。被災地の意思を共有し、苦しむ人たちを支え、復興と防災で国際社会に貢献していきたい。

取って付けたようなこの一文を、我々はどう受け止めればよいのだろうか。


さて、残るは日本経済新聞だけである。この新聞の社説は
《東北の復興は廃炉と両輪で進めよ》
というタイトルである。

このタイトルには、「東北の復興には、フクシマ原発の廃炉作業が欠かせない」との主張が込められている。原発の廃炉作業の不可欠性に言及したのは日経だけ。この点が斬新と言える。

新聞の社説をまとめる作業は、意外に疲れる。産経の社説について書き終わった時点で、どっと疲れが出た。社説をまとめる作業はこのへんで打ち止めとしたい。

きっとWBCの観戦疲れもあるのだろう。今夜のオーストラリア戦も目が離せそうにない。

あすになり、疲れが抜けていて、なおかつ書くべきネタが見つからなければ、日経の社説を詳しく取りあげたい。

きょうはここまで。
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