論語を現代語訳してみました。
泰伯 第八
《原文》
子曰、好勇疾貧、亂也。人而不仁、疾之已甚、亂也。
《翻訳》
子 曰〔のたま〕わく、勇〔ゆう〕を好〔この〕むも貧〔ひん〕を疾〔にく〕めば、乱〔みだ〕る。人〔ひと〕にして不仁〔ふじん〕なる、之〔これ〕を疾むこと已甚〔はなは〕だしきときは、乱る。
《現代語訳》
孔先生はまた、次のようにも仰られました。
〈修養によって得た知識を、〉他者〔ひと〕に押し付けることを良しとすることは、貧しくても心豊かな人にとってみれば迷惑千万〔めいわくせんばん〕であり、結果として忌〔い〕み嫌われる。
また、〈自分からみて〉その人物が心貧しき人であったとき、それを戒〔いまし〕めようとして、半〔なか〕ば威圧的な態度で臨んだりすれば、結果として疎〔うと〕んじられる。
〈つづく〉
《雑感コーナー》 以上、ご覧いただき有難う御座います。
この語句の意味するところとしては、里仁第四『朋友に数からんとすれば、斯ち疏ぜらる』にも見られますが、孔子はこうした "傲慢さ" というものを非常に嫌っていたことが窺い知ることができます。
また、たとえ自分が修養し、 "知識人" という立場になったとしても、決して、それに驕ることなく、さらなる修養を心せよとの、孔子の弟子たちに対する気持ちみたいなものも伝わってきます。
なお、『乱』を語訳するあたっては、そうした傲慢さというのは、結果として自分自身の心を傷つけてしまい、やがては自分自身そのものも心までもを見失ってしまう(=乱)、というふうに捉え語訳してみました。
※ 孔先生とは、孔子のことで、名は孔丘〔こうきゅう〕といい、子は、先生という意味
※ 原文・翻訳の出典は、加地伸行大阪大学名誉教授の『論語 増補版 全訳註』より
※ 現代語訳は、同出典本と伊與田學先生の『論語 一日一言』を主として参考