五月雨(さつきあめ)が降る中、宮澤賢治が地域の農家の方々に土壌学や化学などを教えていた羅須地人協会(らすちじんきょうかい)を訪れたときの話である。
この建物は、もとは北上川近くの別の場所にあったのだが、今は花巻農業高校の敷地に移設されてある。
入り口脇には、白チョークで書かれたかの有名な「下ノ畑ニ居リマス」の黒板がある。
この文字は、賢治亡き後、花巻農業高校の生徒達が当時のままにずっとなぞりながら書き続けてきたものである。
微妙にブレのあるその文字に、賢治を慕う生徒達の心の歴史が読み取れる。
またこの敷地内には、『花巻農学校精神歌』の碑もある。
この詩は、1921年農学校の教諭であった賢治によるものであり、以来、農学校の生徒や職員に愛され、現在も歌い継がれている。
「こんにちは!」は、ここですれちがった生徒達からの挨拶。
そのあまりに素直な言葉に、つい傍らを歩いていた妻の顔を見てしまった。
“宮澤賢治はやはりすごい。今も子供達の中にその精神は生きている。”そう思ったからである。
冷たくうっとうしい雨も気にならなくなった。
旅する者に感動を与えるのは、何よりこうした清(すが)しく美しい心ではないか。
私は今も、そう確信している。
・羅須地人協会 ⇒ こちら
・花巻農学校精神歌 ⇒ 次のリンク先の『歌曲の部屋』にアクセスしてください。
左サイド欄にあります。
ページを開けると歌詞つきのものをダウンロードでき(MP3版(歌付き))、聞くことができます。
ついでに、そのページに紹介されている詩もご覧ください。ぜったい、感動します。
宮澤賢治の詩の世界 ⇒ こちら
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