(この記事は、前記事の震災対応への提言からの続きです。)
震災が発生すると、被災地では大渋滞が起きることは多くの人が経験的に知っている。それを単純なモデルで可視化して考察してみようと思う。
1. 平時のトラック物流
緑の■ひとつが1台のトラックを示す。これは、人口も食料生産施設も小売店も均質に存在していて、無数のトラックが走り回りながら人々の消費生活を支えている、というモデルである。
2. 震災発生時のトラック物流
震災が発生すると、被災地からは「水も食料も枯渇している」という情報が発信されるから、全国から支援物資を積んだ善意のトラックが被災地に向けて走り出す。それが赤の■で示したトラックである。
被災地で物資が枯渇するのは、道路の損壊や、倒壊家屋で道路がふさがれたりすることが大きな理由なのに、そこに平時の何倍ものトラックが殺到する。さらに、それらの善意のトラックは、最も被害が激しかった被災地の中心に到着して荷を降ろすまで諦めることはない。
図を見ただけでも、トラック密度が激しくなっていることがわかる。
ちなみに、図中の■で示したトラックの総数は前項の図と同じである。
3. 震災発生時の全車両
しかし、震災発生時に増えるのはトラックだけではない。自衛隊、レスキュー、救急車、パトカー、水道・電気・ガス等のインフラ復旧など、普段はそこにいないはずの緊急車両が全国から駆けつける。それらを紺の■で示した。
被災地の車両密度がさらに上がったのが見てわかる。これが被災地での大渋滞の原因であろう。
4. 震災発生時の流入制限した全車両
前の記事では、被災自治体を支援自治体で取り囲むことで、全国からの支援物資を一旦周辺の支援自治体で受け取ったらどうか、と提案した。それがすなわち「善意のトラック制止ライン」であり、下図での緑の円である。
このようにすることで、被災地の車両密度が緩和したことが見てわかる。これによって、緊急車両や、避難所へ物資を配るトラックの移動が迅速化されるであろうことは容易に想像できる。
5. コンピュータシミュレーション
前項までの図でも、被災地の渋滞の様子がだいたいわかるが、もっと本格的に検証しようとしたら、渋滞のコンピュータシミュレーションと同様のことをやるのがいいと思う。
また、どうせやるなら下図のように、被災地からの「物資が足りない」の声から、全国各地の勇者が物資を調達して被災地に駆け込むまでに数日のターンアラウンドがあり、それが結果的にフィードバック制御のレスポンスの悪さになっているところまで加味したらいいと思う。
私はやらないが、興味がある理系の学生さんなどがいればやってみたらどうか。
以上。