介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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徳永哲也『たてなおしの福祉哲学』を読む

2008-02-03 07:22:57 | 社会福祉
【福祉哲学】
著者の福永哲也は、長野大学教授。専攻は、哲学・倫理学。
1959年生まれ。

副題に「哲学的知恵を実践的提言に」とある。
2007年10月、晃洋書房(京都)刊。195ページ、1900円+税。

【構成】
6章からなり、序章と終章がある。

序章から4章までの5つの章では、「福祉哲学」の意義と方法について
5章から終章までの3つの章では、社会福祉の当面する課題への提言のようなこと。

【読者層】
社会福祉学に関する基本的な本は少なく、私のように「社会福祉概論」を教壇で担当するものにとっては貴重な本です。

巻末の文献を見ると、最近において話題となった本や基礎的な文献が80本近くも挙げられており、著者の研究範囲と思考のバランスがうかがえる。

この本の語り口は平明で、社会福祉に関して初めての人にも理解できるように書かれてあります。著者が、教壇で話してきた体験からくるものでしょう。

ですが、学部1年生には難しいと思います。
社会の一般の方にも内容面で難しい。
となると、本書は、私のように社会福祉を教える立場のもの、学部4年生でこれから社会福祉の現場に飛び立とうとしている人が読むのに適しているかと思います。

大学院修士1年の方にも進めたいです。

【問題の解きほぐし】
「徹底的に考える」という哲学の方法からもたらされる知恵には傾聴すべきものがあります。
・社会の生き詰まり感 p7
・研究室の中の「学問知」でなく、「臨床知」「現場の知」でありたい。 p58
・人と人との多様な力のつなぎ会い  p136
・黎明期の仕事としての気概をもって p155

【提言を受けとめる】
第5章では、「自立」についての平板な解釈へ疑問を呈していて、細川瑞子の労作を思い出す。
第6章では、倫理の問題を、「応用倫理学」の立場から、社会全体の倫理問題に広げて考察する。
終章では、国民すべてに一律の金額を給付する提案が示されている。この案には、全額消費税による基礎年金という昨今の議論と類似の流れがある。

【心配なこと】
最後の提案などが、副題にいう「実践的提言」なのだろうか?
年金問題などについての著者のスタンス(p104)を読むと、戦後の日本社会の政治過程・・公共事業の展開、「バラマキ福祉」による後代への負担のツケまわし
という病弊への反省が「哲学」されていないように感じます。

日本の国際社会での孤立はなぜおきたのか。
アメリカ文明をなぜ無原則にまねるのか。
東京中心の価値観が一層進んでいるが、この流れへの対抗軸はあるのか。

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