介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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「英国における公正なケア市場の形成」(三輪まどか・『社会保障法第23号』

2008-04-29 11:58:35 | 地球→ドイツブログ
【社会保障への法律学的な接近】
社会保障の分野では、包括的な学会がない。
しいていえば、『日本社会保障法学会』という法律学の専門家による学会がある。

法律学という性格から、扱うテーマには立法論や政策が目立っている。
このほど、届いた学会誌『社会保障法』23号(法律文化社から市販されている。214ページ、3300円+税)には、最近の学会報告が掲載されている。
第51回大会 『若者』と社会保障
第52回大会 育児支援と社会保障法

社会福祉学会などとはちがい、公募の発表ではなく、テーマに即した専門家の発表が行われ、この学会誌に、質疑応答が記録されていて参考になる。

【介護保険の契約規制の事例:イギリス】
今日、ここでご紹介しようとしたのは、今回取り上げられているテーマではなく、
個別報告として行われたものである。p166-p180

「英国における公正なケア市場の形成ーOFTにみる施設ケア契約の規制ー」
(三輪まどか。大分大学。本稿は、著者の博士論文の一部を加筆修正したもの)

【制度の創設から適正な運用へ】
介護保険については、制度が創設されるまえに行われる立法政策的な論議の時代から、制度が適正に運用されるための法律学的な論議の時代になっている。

著者は、日本においても、イギリスにおいても、介護契約に関する法的整備はまだその途上にあるとしながらも、イギリスの経験はこれからの日本における介護契約の公正な運用に資するところがあるとの視点から、イギリスの現状をレビューしている。

【イギリスにおける施設契約に関する規制】
1 イギリスにおいては、まず、施設契約への形式的な規制を行う組織がある。 
CSCI Comission for Social Care Inspection 

 実質的な規制を行うものとして、公正取引の観点から
  OFT Office of Fair Trading がある。

2 この2つの監視機関の位置づけが明確である。
3 両機関の連携がとられている。

【ヨーロッパの中のイギリス】
このブログでは、細かな事例などを引用することはできませんが、日本でも、介護をめぐってサービスを受ける側にたった視点からの法学的考察がもっと必要だと思いました。イギリスが、ヨーロッパの動向からも影響を受けているとの指摘が印象に残ります。

この論文では、契約の起草から締結までを扱った考察であり、契約の履行や救済というケアの本質に関わる問題は、これからだとされています。
このような地道な研究が蓄積されることを評価したいです。
(消費者行政の組織をいじるよりはね)
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1 コメント

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ありがとうございます。 (三輪)
2008-04-29 21:43:56
丁寧に読み込んでくださり、またご紹介いただきありがとうございます。

研究の方は、最近、なかなか進みませんが、地道にがんばっていきたいと思いますので、ぜひ、ご指導のほど、よろしくお願いいたします。

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