医療保障関係専門誌『健保連海外医療保障』(季刊)No.87(2010年9月)の特集テーマは、「社会的入院の解消」で、ドイツ・フランス・スウェーデンの3カ国について専門家が書いています。
・田中伸至 ドイツの社会的入院・連携問題と関連法制
・篠田道子 フランスにおける長期入院への対応/在宅入院制度の展開から
・多田葉子 “望ましくない”入院の回避・解消/スウェーデンの試み
この季刊誌は、医療費問題に関する国際比較研究では歴史もあり、もっとも重要なものです。刊行は「健康保険組合連合会 社会保障研究グループ」となっていて、健保連のサイトではこの雑誌はアップされていません。
3つの論文は、それぞれの視点で独立に書かれています。
専門的な論文ですが、日本の医療問題、とくに介護問題との関連で、キーワード風に紹介しておきます。
【基礎的なデータの確認】
この号の巻末統計から、
日本 ドイツ フランス スウェーデン
総人口(千人) 127,395 82,807 62,149 9,301
高齢化率 22.8% 20.3% 16.6% 17.9%
医療費/GDP 8.1% 10.5% 11.2% 9.4%
平均在院日数 18.8 7.6 5.2 4.5
病床数(急性期)人口千対
8.1 5.7 3.5 0.3
(精神病床) 2.7 0.5 0.9 0.5
介護施設 5.8 9.7 8.4 -
医師数 2.2 3.6 - 3.6
看護師数 9.5 10.7 - 10.8
《ブログ管理者の感想》
日本の医療は、
・医療費への投資は多くはない。
・病床数は多く平均在院日数は長い。
・医師・看護師は少ない。
おおざっぱのまとめると、日本の病院は「ベッドが多く」「治療を受けずに長く居る」といえますね。
【ドイツ】
ドイツでは、介護保険の導入で要介護を理由とする「社会的入院」はほとんど生じていない。
ドイツでは、「病院診療の補完性」といって、
・開業医による入院の指示
・病院医による入院審査
・医学的根拠の基づいた入院許可
という流れがあります。
州病院法により、病院に対して、医療ソーシャルワーク部門を置き、患者の相談・援助に当たるよう求めている。
P5977 鳴海清人:日独医療保険制度比較
《ブログ管理者の感想》
ドイツでは、介護保険の導入によって「社会的入院」は解消した。日本では、上記のとおり、病床は多いが、介護施設はまだ足りない。「慢性病をもった高齢者の医療」に課題を残している。
【フランス】
「社会的入院」に相当するフランス語はない。
フランスでは、「在宅入院制度」が効果をあげている。
・病院チーム、在宅入院チーム、個人開業医による連携
・医師の関与を高めることで、強固な病診連携を構築している。
・連携のコーディネータ:在宅入院機関のコーディネート医師+管理看護師
多職種チームによる退院決定を重視している。
フランス人の強い在宅指向
篠田道子 フランスの医療・介護システム(2008.05.08)
第1604号 フランスに医療・介護(サイト案内)(2008.09.25)
《ブログ管理者の感想》
フランスでは、在宅での治療を目標としつつ、「病院」と「在宅」の間に「在宅入院」というシステムを工夫して、切れ目のないケアを意図しています。その流れを通じて医師以外の専門職の連携チームへの参画がはっきりしている。
【スウェーデン】
ソーシャル・インクルージョンの視点
相次ぐ改革
・1992年 エーデル改革
・1994年 障害者医療の改革
・1995年 精神医療の改革
医療の提供:
初期医療は、地域診療所
各県の病院
高度医療:大学病院
「レミス(紹介)チェーン」
・ドクターショッピングの回避
・患者はセカンド・オピニオンを求めることができる。
パーソナル・アシスタント制度(重度障害者が雇用する)
P 4396 スウェーデンの社会保障(厚生労働省『海外情勢報告』)
《ブログ管理者の感想》
本論文では、スウェーデンの医療が「社会的包摂」という広い視点で、関連する領域も含む再三の改革によって発展してきたことが述べられています。最も重い障害の一人暮らしの人への「パーソナル・アシスタント」に注目したい。
・田中伸至 ドイツの社会的入院・連携問題と関連法制
・篠田道子 フランスにおける長期入院への対応/在宅入院制度の展開から
・多田葉子 “望ましくない”入院の回避・解消/スウェーデンの試み
この季刊誌は、医療費問題に関する国際比較研究では歴史もあり、もっとも重要なものです。刊行は「健康保険組合連合会 社会保障研究グループ」となっていて、健保連のサイトではこの雑誌はアップされていません。
3つの論文は、それぞれの視点で独立に書かれています。
専門的な論文ですが、日本の医療問題、とくに介護問題との関連で、キーワード風に紹介しておきます。
【基礎的なデータの確認】
この号の巻末統計から、
日本 ドイツ フランス スウェーデン
総人口(千人) 127,395 82,807 62,149 9,301
高齢化率 22.8% 20.3% 16.6% 17.9%
医療費/GDP 8.1% 10.5% 11.2% 9.4%
平均在院日数 18.8 7.6 5.2 4.5
病床数(急性期)人口千対
8.1 5.7 3.5 0.3
(精神病床) 2.7 0.5 0.9 0.5
介護施設 5.8 9.7 8.4 -
医師数 2.2 3.6 - 3.6
看護師数 9.5 10.7 - 10.8
《ブログ管理者の感想》
日本の医療は、
・医療費への投資は多くはない。
・病床数は多く平均在院日数は長い。
・医師・看護師は少ない。
おおざっぱのまとめると、日本の病院は「ベッドが多く」「治療を受けずに長く居る」といえますね。
【ドイツ】
ドイツでは、介護保険の導入で要介護を理由とする「社会的入院」はほとんど生じていない。
ドイツでは、「病院診療の補完性」といって、
・開業医による入院の指示
・病院医による入院審査
・医学的根拠の基づいた入院許可
という流れがあります。
州病院法により、病院に対して、医療ソーシャルワーク部門を置き、患者の相談・援助に当たるよう求めている。
P5977 鳴海清人:日独医療保険制度比較
《ブログ管理者の感想》
ドイツでは、介護保険の導入によって「社会的入院」は解消した。日本では、上記のとおり、病床は多いが、介護施設はまだ足りない。「慢性病をもった高齢者の医療」に課題を残している。
【フランス】
「社会的入院」に相当するフランス語はない。
フランスでは、「在宅入院制度」が効果をあげている。
・病院チーム、在宅入院チーム、個人開業医による連携
・医師の関与を高めることで、強固な病診連携を構築している。
・連携のコーディネータ:在宅入院機関のコーディネート医師+管理看護師
多職種チームによる退院決定を重視している。
フランス人の強い在宅指向
篠田道子 フランスの医療・介護システム(2008.05.08)
第1604号 フランスに医療・介護(サイト案内)(2008.09.25)
《ブログ管理者の感想》
フランスでは、在宅での治療を目標としつつ、「病院」と「在宅」の間に「在宅入院」というシステムを工夫して、切れ目のないケアを意図しています。その流れを通じて医師以外の専門職の連携チームへの参画がはっきりしている。
【スウェーデン】
ソーシャル・インクルージョンの視点
相次ぐ改革
・1992年 エーデル改革
・1994年 障害者医療の改革
・1995年 精神医療の改革
医療の提供:
初期医療は、地域診療所
各県の病院
高度医療:大学病院
「レミス(紹介)チェーン」
・ドクターショッピングの回避
・患者はセカンド・オピニオンを求めることができる。
パーソナル・アシスタント制度(重度障害者が雇用する)
P 4396 スウェーデンの社会保障(厚生労働省『海外情勢報告』)
《ブログ管理者の感想》
本論文では、スウェーデンの医療が「社会的包摂」という広い視点で、関連する領域も含む再三の改革によって発展してきたことが述べられています。最も重い障害の一人暮らしの人への「パーソナル・アシスタント」に注目したい。