営業車で日中の用事を済ませる為に走っていた時の話です。前方の道路を、やっとのたどり足で歩く老犬と、引き綱なしで前方を歩く男性がいました。
男性と犬が道路を渡り切るまで、私は停車して待ちました。その老犬は、背中の骨の中央が上方に弓なりに盛り上がり曲がっていました。４本の足は、ピンと伸びきったままであり、つっかえ棒の様に硬直していました。体中の関節が、老化の為に硬直してしまっている感じでした。
老犬は、飼い主の３ｍほどの後方を、懸命に付いていこうとヨタリながら歩いていました。
老犬が道路を渡り切るのに、かなり待ちましたが、飼い主が運転手の私を睨みつけていましたし、老犬の為に待とうと思いました。
その男性は、風体からして働いている様子がなく、荒んだ生活をしている感じでした。しかし、老犬を散歩させる優しさを持つ人なのだなと思い、彼らを見ていました。
老犬は体毛も汚れて縮れた毛玉だらけであり、部分的に抜け落ちていました。おそらく、これが最後の散歩になるかも知れないと思わせる状態でした。
私は、懸命に歩く老犬を見て、美しいと思いました。
折れそうな体で一生懸命に歩く姿は、犬としての今生の役目に「没入している」美しさを感じさせました。
人間も在るがままの自分を受け入れて、その中で懸命に生きている姿は、命が美しく輝いて見えます。
自分が何かに成ろう、変化しよう、と思い出す時点で、自分本来の美しさが消えて行くのだと感じました。
人間は自分の今の状態の中に、懸命に没入することが、改善を呼びます。
仕事を変わろう、離婚をしようと思うならば、逆に今の状態の中へ没入すれば良いのです。自分が進むべき最善の道が見え出します。その時は、決断に迷わないのです。
だから迷う間は、現状への努力がまだ不足しているし、現状への感謝が不足しているのです。
自分の内在する本能（内在神）が許可をしないから、悩むのです。
私もソフト開発会社の営業をしている時は、何度も仕事を辞めたいと思いました。そのたびに売上を伸ばして一番に成ってから辞めようと思いました。そうしている内に、天然資源に関する仕事に引き抜かれました。今になり振り返りますと、その後の会社の推移を見ますと、とてもラッキーだったと思います。
運命が決まっていたのではなく、日々の自分の姿勢と努力が未来を固めて行くのです。ここを勘違いしてはダメです。
だから、とにかく今を懸命に生きる事が、自分の命を輝かせて、自分にとっての最善へと導きます。
ベッドで寝た切りの人は、その中でも懸命に生きようとすれば輝きます。
仕事で悩む人は、その仕事も縁が在っての事です。とにかく没入しましょう。必ず変化して行きます。
どんな状態でも、目の前の事に没入している人の姿は、とても美しいのです。
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