セレンディピティ ダイアリー

映画とアートの感想、食のあれこれ、旅とおでかけ。お探しの記事は、上の検索窓か、カテゴリーの各INDEXをご利用ください。

すばらしき映画音楽たち

2017年12月05日 | 映画

DVDで鑑賞。名作映画を彩る映画音楽にスポットを当てたドキュメンタリー映画です。ハリウッドで活躍する約40人の映画音楽作曲家へのインタビューを中心に、映画のメイキングやシーンを交えて構成。映画史や心理学の視点からもアプローチしています。

すばらしき映画音楽たち (Score: A Film Music Documentary)

ジョン・ウィリアムズ、ハンス・ジマーなど、ハリウッド映画のビッグネームが続々登場。ミシェル・ルグランやニーロ・ロータなど、ヨーロッパの作曲家は取り上げられていませんが、誰もが知る名作映画の音楽がどのように生まれ、映画を彩る音楽はどうやって作られるのか、映画に欠かせない音楽のあれこれを知ることのできる楽しい作品でした。

あたりまえのことですが2時間の映画には2時間の音楽があるのですものね。”サイコ”にしても、”ジョーズ”にしても、音楽がなく映像だけだったらあそこまで怖くはなかった...と本作の中で検証しています。音楽のもつ力、映画における音楽の大切さを改めて実感しました。

まずは映画音楽の歴史から。無声映画の時代は、劇場にシアターオルガンが設置され、映画の進行にあわせてオーケストラから効果音まで演奏されていたそうです。このシアターオルガンというのが時代がかっていて仰々しい。^^ 世界でひとつの音を求めて、めずらしい民族楽器からおもちゃのピアノまで集める作曲家の話もありました。

映画音楽にオーケストラを初めて取り入れたのは”キングコング”、そしてビッグバンドを初めて取り入れたのは”007"。”パイレーツ・オブ・カリビアン”はオーケストラのレッド・ツェッペリンとよばれたなど、映画音楽史には欠かせない記念碑的な作品も紹介されました。

心理学者による解説もおもしろかったです。人は自分の意思で好きなようにスクリーンを見ていると思っていますが、実際には音楽によって誘導されていることを”カールじいさんの空飛ぶ家”を使って説明していました。音楽が変わると、人は何かが起こるというメッセージを読み取り、そこに視線を動かすのだそうです。

それからテーマ曲は、同じメロディを映画の中で何度も繰り返すことによって、いつのまにか見る人の心になじんでしまうのだとか。ある作曲家が、観客の反応を見るために初日に映画館に足を運び、映画が終わるとトイレにこもって観客がテーマ曲を口ずむのを聴く...というエピソードもほほえましかったです。

一方、映画音楽は商業音楽でもあるので、スケジュールや興行成績というプレッシャーも半端ありません。あのハンス・ジマーでさえ、依頼を受けた時は天にも昇る心地でも、街で映画のポスターを見かけると、まだ全然できていないと不安になったり、ジョン・ウィリアムズに頼んでくれと逃げ出したくなることがあるそうです。

そして映画音楽といえば、ジョン・ウィアムズを抜きにしては語れません。”E.T."、"スターウォーズ”、”インディジョーンズ”、”ハリーポッター”などなど数々の名曲を生み出しました。スピルバーグの横でウィリアムズが、こんなのどう?という感じでピアノをさらさら~と弾いて、”ジョーズ”や”E.T.”のテーマ曲が生まれていくところは感動的でした。

映画音楽の収録風景も興味深かったです。なんとオーケストラのメンバーはほとんど初見で演奏するそうです。なぜなら全員の音がぴたりと合うより少しずれた方が、合唱のような効果が生まれるから。そういえば”マッドマックス”でも、パーカッションの音をいくつも重ねることで、大勢で演奏しているような効果を出すと話していました。

今や映画音楽は私たちの共通認識にもなっています。例えばダースベーダーのテーマが流れると、誰もがこの人は悪者だとわかるように...。オバマ大統領の就任演説で、”タイタンズを忘れない”のテーマが使われたというエピソードは印象的でした。映画音楽は伝えたいメッセージを表現する手段にもなっているのですね。

...というわけで大いに楽しんだ本作。エンドロールの途中で、ジェイムズ・キャメロン監督が”タイタニック”のあるシーンにまつわるすてきなエピソードを紹介しているので、飛ばさずに是非ご覧になってくださいね。

コメント (4)