現在の中国経済と日本のバブル期の不気味な類似点とは?- 週プレNEWS(2013年7月17日10時00分)
ヤミ金さながらの高金利で、中国バブルを破綻させる存在として注目を集めている「シャドーバンキング(影の銀行)」。今、このシャドーバンキングから資金を借りた中国企業の多数が、倒産や夜逃げに追い込まれている。
シャドーバンキングの仕組みはこうだ。国有銀行から非常に低い金利でお金を借り、それを中堅銀行にいったん預け、資金繰りに瀕している中小企業に高金利で貸す。その顧客には中小企業のほか、地方政府まで含まれており、ヤミ金の多重債務者のような状態になっているところも少なくないという。
そこに追い打ちをかけるのが、中国経済の“成長神話”に陰りが見えていること。エコノミストの中原圭介氏が解説する。
「現首相の李克強(り・こくきょう)氏は遼寧省書記だった2007年頃、中国駐在米大使に対し、『中国の各種統計の中で信頼できるのは電力消費量、貨物輸送量、銀行融資の3つ。GDP統計は割り引いて見なければいけない』と漏らした。これに基づいて今年1月から3月期の統計を見ると、公式発表されたGDPの伸び率7.7%というのは明らかに大きすぎる。実際には5%以下まで落ち込んでいるはずです」
これでは、ただでさえ資金繰りに苦しむ経営者たちが、シャドーバンキングの返済にまで手が回らなくなってしまう。
「すでに沿岸部の中小企業を中心に、倒産する企業、夜逃げする経営者が続出し、失業者がかなり増えている。公式発表はありませんが、各種統計から考えると失業者は1億人にもなると私は見ています。政府によるGDPや失業率の粉飾も限界。昨年は20万件起きたとされる庶民による暴動が、今年は30万件になるのでは……ともいわれています」(中原氏今後、シャドーバンキングの影響で企業が連鎖破綻するような事態になれば、民衆の暴動はますます収まりがつかなくなる。実際、共産党幹部の中には、家族と財産をアメリカなどの海外に避難させる動きもあるという。
欧州系格付け会社のフィッチ・レーティングスは6月24日、「シャドーバンキングのうち6月末に1兆5000億元(約24兆円)が償還期限を迎えるが、資金不足で一部が償還困難となる恐れがある」と指摘した。
「今後も7月末、8月末……と順次、シャドーバンキングの償還期限はやってきます。ここで貸し倒れが相次げば、巨額の不良債権が生まれることになります」(中原氏)
経済アナリストの森永卓郎氏は、こうした現在の中国の状況について、日本のバブル期と非常によく似ていると指摘する。
「日本のバブル期には自動車メーカー、家電メーカーなど金融と関係のない大手企業が資金供給をして、バカみたいな不動産開発が繰り返され、本業の利益をはるかに上回る収益を上げた。それを食い止めようと政府や日銀が急激な金利上昇(不動産融資総量規制)をやって資金供給を絶つと、次々とプロジェクトが頓挫して不動産価格が急落。株価暴落を招いてバブル崩壊に至りました。今の中国でも金融と関係のない大手企業が高利貸しに変わり、貸し倒れリスクのある債権でブクブク太っている。地方政府もムダな不動産投資、公共事業をバンバンやっている。金融当局が政策を間違えたり暴挙に出たりすれば、バブル崩壊に至る可能性もゼロではありません」
現在の中国経済と日本のバブル期の不気味な符合……。森永氏の予言が現実のものとならないことを願うばかりだ。)
○○
中国共産党政権は、2~3年以内に崩壊も 異色のエコノミスト・増田悦佐氏に聞く(下)- 東洋経済オンライン(2013年7月17日08時00分)
アベノミクスやリフレ政策を批判し続けてきた異色のエコノミスト・増田悦佐氏へのインタビュー後編。前回は、アベノミクスにダマされるな、デフレこそが日本を救うとの持論を展開したが、今回は世界経済の懸念材料として浮上してきた中国問題について。同氏はこのほど『中国自壊――賢すぎる支配者の悲劇』(東洋経済新報社)を刊行したが、中国の共産党崩壊の可能性についても言及するなど、大胆予測を行った。
――中国のシャドーバンキング(影の銀行)が問題になっています。銀行を介さない金融取引で、残高は数百兆円ともいわれています。理財商品(高利回りの資産運用商品)などを通じて企業や個人から集まった資金が、地方政府などの不動産・インフラ投資や資源投資に流れています。中国政府は規制を強化する方向ですが、この問題をどう見ていますか。
■バブル崩壊で没落するのは富裕層、外資は影響受けず
シャドーバンキングの中核をなす、いわゆる理財商品を大量に買っていた人は、いずれ悲惨なことになるだろう。しかし、それらを買っていたのは、貧しい庶民ではなく富裕層だ。バブルが崩壊すれば、資産家や官僚、中国共産党の幹部などは没落するかもしれない。
ただ、国際経済への影響はそれほど大きくない。中国で活動する企業には、国有企業のほかに民族資本の企業、外資系企業の3つがある。このうち、国有企業は共産党幹部や官僚などに利権を分配するのが重要な仕事であって、効率は非常に悪い。シャドーバンキングは、主に中国の地方政府が公共事業を国有企業などに発注したことで生まれてきた仕組みだ。地方政府の資金調達手段が、シャドーバンキングというわけだ。
したがって、不動産バブル崩壊で投資プロジェクトが行き詰まれば、資金の出し手や国有企業、民族系企業は打撃を受ける。でも、外資系企業は絡んでいないから影響はほとんど受けない。
中国というのはこわい国で、共産党一党独裁体制の下、全人口の3分の1程度に過ぎない都市戸籍保有者と、残り約3分の2を占める農村戸籍保有者との間で、すさまじい格差が維持されている。
農村戸籍保有者が都市戸籍を取得するのは難しく、彼らの多くは貧困にあえいでいる。
少数の都市戸籍保有者は、共産党独裁体制の恩恵を受けていることも知っている。彼らは常に少数に保たれている。
なぜなら、都市戸籍保有者が農村戸籍保有者を人数で上回ってしまうと、政治や文化の多様性を求め、「多数決で政権が変わってもいいじゃないか」などと言い出しかねないからだ。
全人口の2~3%に過ぎない共産党幹部や官僚、資産家など一部のエリートは、ものすごい金額の蓄財をしている。
そして、それを支えているのが国有企業だ。国有企業は、一部のエリートたちに、たっぷりと利権を配分するのが仕事といっていい。
■中国経済はもはや限界、と断言できる理由
――新著『中国自壊』(東洋経済新報社刊)では、中国の資源浪費バブルは、もはや限界に来ており、近いうちに崩壊すると断言されていますね。
世界的にITバブルが崩壊した2000年の後半以降、中国は世界中から金属・エネルギー資源を買いあさり始めた。リーマンショックが起きた直後の08年末からは、その傾向が加速した。たとえば、世界の銅消費に占める中国のシェアは約4割もある。鉄鉱石や石炭でも傾向は同じだ。中国一国の消費が世界の商品市況を支えているのだ。
しかし、これほど大量の金属・エネルギー資源を買いあさって、いったい何に使うのか。中国経済の特徴は、恐ろしく投資偏重になっていることだ。2ケタの経済成長を実現してきたというのに、個人消費にはあまり寄与しない。金属工業部門を中心とする国有企業に投資が傾斜配分されているのだ中国の鉄鋼生産高は、経済的に正当化しようのないほど過剰になっている。労働者や農民の生活水準をあまり向上させることなく、壮大な資源浪費と過剰生産、過剰投資によって、表面的に高い成長率を維持してきたのだ。それを担ってきたのが国有企業であり、そこで生み出された富の多くが一部エリートへの利権として配分されてきたから、外資系企業などに比べて、効率性が大きく劣るわけだ。
■現政権は、今後あっさり内部崩壊する可能性も
人間は経済的に豊かになり、生活水準が上がると、社会的、文化的選択肢の豊かさを求めるようになる。中国の民衆が豊かになり、「政治的な選択肢も増やしてくれ。一党独裁ではいやだ」などと高望みを始めたら、大変なことになる。だからこそ、共産党の指導者たちは、壮大な資源の無駄遣いで国民が生み出した富を浪費し、経済成長率の割には労働者や農民の生活水準が上がらない仕組みを、意図的に維持してきたのだ。
だが、この仕組みは明らかに限界に来ている。これまでは橋などのインフラをつくっては壊し、つくっては壊しでやってきたが、それでも成長率は鈍化し、もはや大量の資源を使い切れなくなりつつある。中国からの輸出についても、香港を経由した大量の水増しがあったが、それがしぼんできている。
――中国の資源浪費バブルが崩壊すれば、日本にどのような影響を与えますか。
非常に大きなプラスと、細々としたマイナスの両面があると見ている。
まず、中国が資源を浪費できなくなれば、これまで高値に維持されてきた商品市況は大きく下がることになる。いままで、中国の浪費のせいで高く買わされてきた天然資源を安く買えるようになるのだから、日本経済にとっては大きなプラスだ。この点からも、アベノミクスで為替を円安に誘導することは、間違っている。円高だからこそ、世界中から天然資源を安く買えるのではないか。。
一方、中国に進出し、中国への依存度が高い日本企業にとっては、マイナスの影響が避けられない。だが全体としては、マイナスよりプラスのほうが大きいと見ている。
――中国ではこれから2~3年のうちに、共産党独裁を批判する大衆運動が盛り上がり、現政権はあっさり崩壊するのではないか、とも予想されていますね。
中国が現在はまり込んでしまったドロ沼から脱出するには、共産党独裁体制の崩壊が避けられないだろう。中国の民衆、とくに農村戸籍保有者たちの生活は、あまりにもみじめだ。国民の多数を占める彼らが、経済がどんなに発展してもわずかなおこぼれしかもらえないような状態を、いつまでも続けられるわけがない。
大衆運動の盛り上がりなど何かのきっかけさえあれば、現政権は非常にあっさり内部崩壊する可能性が高い。内部崩壊の始まりは、中国共産党中央委員会メンバーが、続々と海外に逃亡することだ。すでに、その兆候があちこちに見られる。たとえば、中国共産党高級幹部で、少なくとも家族の一人が海外に生活拠点を持っている人の比率は9割を超え、また、海外への不正送金はこの10年間で莫大な金額に達している。
政権崩壊については、内戦など中国社会の大混乱を招き、「世界中に難民があふれ出す」と言って、諸外国を脅かす共産党幹部もいる。しかし、そうはならないだろう。私は、中国文明の三大特徴は、「科挙」および「宦官(かんがん)」「纏足(てんそく)」というグロテスクな慣習であり、それが大きな弊害をもたらしてきたと思っている。
科挙の制度によって、中国では千年以上、最高の知的水準を誇る頭脳明晰な人間しか高級官僚にはなれない伝統が確立されている。彼らは全知全能を振り絞って延命策を続けるし、世襲ではないので、自分の代だけですさまじい金額の蓄財に励む。ただ、反面、先が見えすぎるので、政権が危機に瀕したときには、あっさりと権力を放棄して安全地帯に逃げ込む。中国の歴史を見ても、宋朝以降、元、明、清と、各政権の末期では、あっさりと崩れ去ってきた。
政権交代によって、実質的に国民一人に一票が与えられる民主的な社会になるだろう。また、北京語、上海語といった言語圏ごとに独立した国家になるかもしれない。政権交代によって、労働者の生活は、現状よりよくなるはずだ。だから、世界中に難民があふれ出すようなことはないと見ている。
○中国バブル崩壊後、大相場がやってくる シャドーバンキング問題は、「1997~98年型危機」に発展へ- 東洋経済オンライン(2013年7月12日08時00分)
中国のシャドーバンキング問題に、世界中の関心が集まっている。中国は、果たしてこの危機を乗り切れるのか。日本の個人投資家はどう行動すべきか。このほど、『超絶バブルの安全な投資術 バブル期に始める株式投資の勝ち方』(小社刊)を書いた安間 伸氏に、「中国バブル崩壊後、世界のマネーはどう動くか」、「日米の株式市場はどうなるか」などを、大胆に予測してもらった。
中国不動産バブル崩壊が、ついに金融システムへと波及し始めた。
中国の銀行による簿外の資金運用は、2012年には14兆5千億元(約237兆円)に達している。そのうち約半分は「利回り10%」などと謳って、個人投資家に販売している「理財商品」である。だがこの投資先は不透明であり、地方政府の地上げ資金となって焦げ付いているのではないかとの噂が広がっている。
中国政府の不動産融資規制に伴い、その「迂回路」として様々な方法が「開発」されたことは想像に難くない。かつて日本でも不動産融資総量規制への対策として、住専(住宅金融専門会社)など、ノンバンクを通じた間接融資が拡大、のちに大問題となった。
日本のバブル崩壊は、まず株式から始まり(1989年末に史上最高値、1990年から崩落)、次に不動産下落と不良債権の顕在化、そして小規模金融機関の破綻(1995年以降)が金融システム全体の危機(1997~98年)へとつながった。
中国も上海株の暴落からサブプライムショックを経て不動産価格下落、小規模金融機関の破綻と続いており、金融システム全体へ波及する段階にさしかかっている。非常に似たパターンを辿っているがゆえに、我々としては読みやすい部分もある。
実のところ、この問題の行く末を金額から予測することは不可能だ。そもそも経済統計からして怪しまれる国であるから、投資金額や損失額を正確に把握することは難しく、対比するGDPも頼りにならない。そして経済よりも政治・軍事が優先する国なので、経済原則を無視した行動を取る可能性もある。
したがってここではバブル崩壊のセオリーから、この問題が世界の株式市場に与える影響をざっくり考えてみたい。
■ポイントは最終消費地とグローバル信用創造の源
確かに中国ほどの国で金融システムが機能不全に陥れば、そのインパクトは大きいに違いない。
しかし、私はこの問題は中国を含むいくつかの新興国だけの危機で終わり、世界不況にまで発展する可能性は低いと見ている。つまり危機のタイプとしては2008年のリーマンショックよりも、日本の金融危機からアジア危機・ロシア危機へと波及した97~98年のイメージに近い。
というのも、中国経済はまだ「代替可能な世界の工場のひとつ」に過ぎないからである。日米欧のように巨大な最終消費地を提供していたり、グローバルな信用創造の源となっているわけではない。実はその2つがバブル崩壊の結末を予測する重要なポイントで、それらが崩れる前に適切な政策が取られるのであれば、危機は部分的なもので終わるのだ。
今回は欧州の景気や金融機関にやや不安があるものの、米国の経済が好調なため最終需要にはほとんど不安がない。日本企業も生産拠点をアジアに移し、北米の好調さで穴埋めできそうである。したがって中国で信用収縮が起こっても、それが連鎖して世界的な投げ売りに発展する可能性は低い。
■逃げ出した資金は中国に戻らない
もちろん影響を甘く見ているわけではない。しかし世界の金融経済とのつながりが深い日本など先進国と、特殊な制度・文化を持つ中国を同じように考えることも危険である。
日本に何かショックが起こると、リパトリエーション(資金の本国回帰)が起こる。だから97~98年危機の時も、リーマンショックのときも世界の株が売られると同時に強烈な円高となった。「3.11」の東日本大震災時(2011年)も規模は小さかったものの、円高・株安となった。これは世界一の債権国として各国に投資している日本の特徴と言えるだろう。
中国も確かに「金持ち国家」なのであるが、日本とは全く違う。政府高官からして家族や資金を国外に逃亡させ、生き残りのため「保険をかけておく」国である。中国の混乱が拡大すれば、むしろ資金の海外流出は加速する可能性が高い。いずれ「海外送金停止」「海外渡航禁止」の措置が取られる確率も低くないと考えている。そもそも、シャドーバンキングで集められた資金は本当に中国の不動産に投資されたのか?実は「投資で損をしたことにして」海外に送金されたのではないか。今の段階では想像に過ぎないが、たとえそうであっても驚くことではないだろう。
■株式市場は一時調整、そして緩和は「バブルの燃料」に
中国バブルの崩壊は、一部の国や企業にとって深刻な問題である。特に中国の成長をあてこんで大きな投資をした資源国は、過剰投資と代金不払いに悩まされることになるだろう。
しかしアメリカ・ドイツ・日本など競争力のある知的産業を抱える国にとって、そういった国の苦境はインフレ圧力を抑える「冷却材」のように感じるに違いない。輸入物価は上がらず、金利も上がらず、好調な企業収益を支える要因となるだろう。新興国での需要が落ちても、先進国企業のキャッシュフローは好調なはずだ。
97~98年の危機のとき、日本・アジア・ロシアは大変な苦しみを味わった。日本では資金調達ができずに企業がバタバタ倒産し、大幅な円高を食らって悶絶した。LTCMやタイガーファンドが破綻し、リスク管理に限界があることを思い知らされた。
しかし、欧米株式市場は95年から2000年まで続く長い株価上昇トレンドのさなかにあり、危機のピークであった98年秋に2割ほど調整をしただけである。
今回も米国経済は盤石であり、そのおこぼれで日本企業にも相当な恩恵があると考える。ドイツも基本的に問題はないが、欧州ソブリン問題に飛び火すれば盤石ではないかもしれない。すると基本的に日米の株価は上昇トレンドが続き、中国やそれに連なる新興国は反発を交えながらも長い下降トレンドが続くという2極化が見られるだろう。
そして中国の危機が本格化したとき――たとえば海外送金停止、海外渡航禁止から内乱・軍事衝突まで様々なパターンがあるが――日米株式市場も2割から3割の急落となるに違いない。それに対して日米欧が大規模な追加緩和や緊急融資に踏み切れば、「今回の」中国危機はいったん落ち着きを取り戻すだろう。
そこで生み出されたマネーは、バブルの「燃料」となり、日米の株価上昇を再加速させる可能性が高い。一時的な急落への備えは不可欠だが、恐がり過ぎて大きな上昇トレンドを取り損ねる愚は避けたい。