人吉球磨広域行政組合は11年前に日本で最初に住民ディレクター講座を取り入れてくれた地域だ。今でこそ全国の行政から声がかかるが当時は「住民ディレクター」という発想自体を私が思いついたばかりの時だった。勿論全く前例はあるはずはないので、今思えばよくやってくれたなあと思う。ここで3年間14市町村一人ずつの職員が、3年間で合わせて約45人の役場住民ディレクターが生まれた。もともと住民ディレクターは地域の振興を担うリーダーを養成することが目的だったので行政も民間も幅広く養成することを考えていた。しかし、田舎のほうに行けば行くほど情報は役場にあり、優秀な行政マンに集中している。民間がやろうとするときに行政マンが理解していないといいフォローができない。そこで、人吉球磨では最初から行政マンの養成を戦略的に考えていた。そして、4年目から民間人の養成をスタートしたときには見事に狙いが当たった。行政が民間の後押しをする態勢が自然とできていた。
もうひとつ14市町村の行政マンが3年間(実際は4年目以降も続いたが)一緒に講座を受け、毎月30分の番組作りの企画から取材、編集、放送後の反省会、次の企画会議・・・、と循環していったので3年後には情報発信を得意とし、住民の話にじっくり耳を傾ける行政マン約45人が育っていた。(勿論、100%ではないだろうが)おかげで、日本経済新聞の地域情報化大賞の日経新聞社賞をいただいたり、全国の行政、マスコミ、大学、研究機関などから視察や研修が相次ぎ、先進地山江村をかかえながら14市町村が全体的にひとつの地域として浮かび上がってきたと思う。
当時の担当者にこの事業の中で一番身についたことは何ですか?と聞くとマスコミで取り上げられたり、交流人口が増えたり、いろんなことはあるが、一番大きな効果は14市町村の職員が住民ディレクター活動を共にしたことで、市町村の枠を越えて仲良くなりコミュニケーションが深まったことだったと話していた。現在では地域のオリジナル番組を民放でもつほどになった。
今回は行財政の構造の話にまで行かないが、この広域で始まった動きは熊本県の国体で応用され、熊本県での住民ディレクター活動の広まりに大きな力になっていった。そこに私は行財政構造の要になるポイントを発見していった。(つづく)
(写真はオリジナル番組で鍾乳洞の魅力をリポートする役場職員)
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