いつもの喫茶店
僕はコーヒーを飲みながら、本を読んでいた
昼過ぎで店はかなり混んでいた
「ここ 相席いいですか」
とても素敵な女性だった
「もちろん、どうぞ」
それからが大変
僕は読書そっちのけで、彼女ばかり見ていた
そのうち、目がばっちり合ってしまった
「失礼だけど、何の本を読んでるの?」
僕は彼女に本を手渡した
純愛小説だった
一瞬、微笑んだかに見えたが、すんなり返してきた
「今時、こんな本を読む男性がいるとは知らなかったわ
あなた、明日もここにいるかしら?」
「いるよ」
翌日、彼女は来た
自分の純愛小説を持って
それ以来、週末を除いて、僕と彼女は同じテーブルで読書をした
挨拶以外、お互い何も言わなかった
けれど、僕は彼女がどんどん好きになっていった
でも、言えなかった
ちらちら顔を見るだけ
1ヶ月もした頃、彼女が言った
「あなた、この1ヶ月、私に一言も声かけなかったわね
普通は口説くものよ
これでも少しはもてるんだから
でも、そこがあなたのいいところね
今時滅多にいない、純愛青年」
僕は真っ赤になった
「じゃあ、僕が口説いたら君はのったのかい」
「のらないわ、それじゃ純愛青年でなくなるもの
だから 私が口説いてあげる
お名前は?」
「山岡浩」
「携帯番号は?」
「090********」
「私は山下愛、携帯はここに書いてあるわ
で、最初のデートはどこにする?」
「ここがいい、君とゆっくり話してみたい」
「決まりね、じゃあ、明日」
次の日君はにこにこしてやってきた
「何にこにこしてるの」
「今ね、彼と別れて来ちゃった
やっぱり恋をするなら純愛青年ね」
やっぱり僕は真っ赤になった