この短い小説は、日本看護協会が募集している(2019年2月1日締め切り)
「忘れられない看護エピソード」に応募するために書いたものです。
「僕の彼女は最高の名医」
ライト・アップされた建物。電飾が施された並木道。ぼくの周りだけが真っ暗だった。
余命僅かと医師から告げられた夜、新米ナースの彼女は、なぜかとても明るかった。
「やっと私の出番ね . . . 本文を読む
頭痛がする、エアコンに当たったら足ががくがくした行きつけの医者は午後の診察は3時から今はまだ2時僕は一番に診てもらえるよう、2時半に医院に行ったところが僕より先に可愛い女の子が来ていた僕は体温計を借りて脇にさした彼女はこんこんいっている僕も咳をしたお互いに目を合わせて笑った「夏風邪?」「うん、冷たいもの食べ過ぎたみたい」「僕は今朝映画館で3時間強い冷房にさらされたから」 僕は体温計を取り出した「 . . . 本文を読む
1先ほどから海を見つめていた。
正確には海の上にかかる、色づいてきつつある雲を見ていた。日本海を行くフェリーのデッキで、東の空に昇る朝日をとらえようと、CANON EOS1Dを構えていた。やがて、雲の上に太陽が顔を出した。太陽に合わせると、暗く写るので、周辺の雲に露出を合わせ、シャッターを押し続けた。太陽が雲の上に完全に姿を現すと、カメラを下し、ピアニシモに火を点けた。「美しいわね」後ろ . . . 本文を読む
まるで初夏のような日差しに目がくらんだと思うと僕は横たわっていた気がつくと 傍らで可愛い女の子がハンカチに水を浸し僕の首筋と脇の下に当ててくれていた「熱中症ね 救急車を呼ぶまでもないわ 私看護師なの」彼女の言うとおり しばらくすると起きあがれた「無理しちゃだめ」言葉通り僕は目の前が真っ白になった「ほらね もうしばらくそうしてなさい これを飲んで」 彼女はスポーツドリンク . . . 本文を読む
プロローグ
10月の第二月曜日、僕は休みを取った。瞳に頼まれたからだ。天王寺駅で待ち合わせした。約束の8時30分。僕が到着すると、瞳は少し浮かない表情で待っていた。
「どうしたの?」
「うん、眠れないの。それと、生理がないの。だから、今から鉄道病院の産婦人科に行くんだけど一人じゃ心細くて。だから、穣二についてきて欲しかったの」
鉄道病院は天王寺駅からわずか3分で着く。受付を済ませ、産婦人科 . . . 本文を読む
梅雨入りした
昨日からずっと雨が降り続いている湿った空気が家の中まで忍び込んでくる
梅雨の季節は紫陽花の季節でもある
僕は着替えた
赤いポロシャツとチノパン
電車を乗り継いで、とある駅に降り立った
透明の傘を開き、小雨の歩道を黙々と歩くなだらかな坂道を登っていくと、目的の場所に着いた
「あじさい寺」この時期、この寺はそう呼ばれている
小道を辿 . . . 本文を読む
プロローグ
お盆が過ぎた。いつもみたいに窓を開けっ放しにして、布団も掛けずに寝てしまった。明け方、寒さに目が覚め、急いで窓を閉め、布団をかぶったが、遅かった。起きて布団をはいだ途端、寒気が襲ってきて、ぶるぶる震えた。体温を計ると、39.7度あった。急いで医者に行った。9時に開く医院は空いていた。まだ8:00だ。診察は9時だが、扉は開いている。震えはまだ止まらない。なじみの看護師が通りかかった。名 . . . 本文を読む
6
降り注ぐ光の中、カートはゆっくりと走る。やがてテラスのような所に着いた。5段ほど階段を上がると、そこはオープンバーとマリンスポーツのデスクだった。もう、夕方に近いので、マリンメニューはすべて終わっている。人影はない。テラスの上には、木造りの白い屋根があり、そこから落ちてくる光りが縞模様となって、真白いデッキチェアーやテーブルを照らしている。僕は思わず、その光景をCanon Eos1Dに納めた . . . 本文を読む
プロローグ
僕は小浜島の海を見ていた。透き通るように蒼い、海を見ていた。この海に、冬美は眠る。永遠に。5年前、冬美の遺灰を、この海にまいた。漁師に舟を出して貰って、冬美の好きだったプリメリアの花弁を、灰と共にまいた。海面に真白い花が咲き、広がっていく。冬美がまだ健康だったとき、僕らはこの島に来た。透明度の高い海に潜り、色とりどりの魚たちを見た。冬美はマスクの中で目を輝かせていた。美しい珊瑚礁の中 . . . 本文を読む
テーマ:おいしい実験
僕は基本的に通販サイトは利用しない野菜や果物、魚などは個人的なルートの方が安心、安全なによりも安いまして加工食品など論外だでも例外はあるそれが↓クリック土佐香美市のバザールだ香美(かみ)市はこんなところにある山間の中に今も太古が息づく大自然が手つかずのまま残る地平家伝説陰陽道などの流れを独自に伝える いざなぎ流全国にとどろく土佐打刃物・・そんな&rdquo . . . 本文を読む
「紫陽花の花って大きいわよね。手まりみたい」
陽子は大振りの傘を斜めにして花の前で座り込んでいる。
「違うと思うな。一つ一つの花が重なって咲いているんだ」
「あら、花に詳しいのね」
陽子は嫌みを言う。僕だって自信はない。けれどこの紫陽花寺の紫陽花は、とんでもなく広い範囲で咲いている。
「有り難う、連れてきてくれて。それも二年続けて」
それは去年彼女に約束させられたこ . . . 本文を読む