1先ほどから海を見つめていた。
正確には海の上にかかる、色づいてきつつある雲を見ていた。日本海を行くフェリーのデッキで、東の空に昇る朝日をとらえようと、CANON EOS1Dを構えていた。やがて、雲の上に太陽が顔を出した。太陽に合わせると、暗く写るので、周辺の雲に露出を合わせ、シャッターを押し続けた。太陽が雲の上に完全に姿を現すと、カメラを下し、ピアニシモに火を点けた。「美しいわね」後ろ . . . 本文を読む
まるで初夏のような日差しに目がくらんだと思うと僕は横たわっていた気がつくと 傍らで可愛い女の子がハンカチに水を浸し僕の首筋と脇の下に当ててくれていた「熱中症ね 救急車を呼ぶまでもないわ 私看護師なの」彼女の言うとおり しばらくすると起きあがれた「無理しちゃだめ」言葉通り僕は目の前が真っ白になった「ほらね もうしばらくそうしてなさい これを飲んで」 彼女はスポーツドリンク . . . 本文を読む
一人のバス旅帰り道窓際の席事故渋滞でテールライトの長い列ができているデジカメを取り出して、窓越しに撮してみる雨上がりでにじんだ窓は、ファインダー越しに見ると幻想的にうつる赤、黄、青光の帯が踊っている「ねえ、なに撮ってらっしゃるの?」隣席の女の子が聞いてくる好みのタイプだ今まで声掛けれずにいた「テールライトだよ」「見せてくださる?」僕はデジカメのスイッチを押して、今撮った画像を彼女に見せる「うわあ、 . . . 本文を読む
たいせつな こと
たがいに おもいあうこと
ともに いきること
かこを すてること
あすを しんじること
すべてを ゆるしあうこと
それが できないならば
わたしたちに あすは こない
えいえんに
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猛暑日の朝、僕は凍えていた
突然の大雨の中、病院まで走っている間に、頭から足下までびしょびしょになっていた待合いのエアコンが、僕の体から熱をみるみる奪っていった
「どうぞ」一人の女の子が、小さなタオルを差し出していた「ありがとう」僕は素直に受け取った「ここでは風邪を引くわ。外に出ましょ」
僕らは外へ出、喫煙コーナーに腰を下ろしたポケットからピアニシモを取りだした
箱は濡れていたが、中身は大 . . . 本文を読む
ねえ、神様今度生まれ変わったらこんなつらい恋はさせないでくださいね辛い恋はいやですかもちろんよ彼は素敵で優しくて思いやりがあってだのに私を振ったんですよ絶対に許さない二度と恋などしない今も涙が次々に溢れ出てそう、いやなんですね絶対にいやじゃあ、笑いながらこっちに来る男性はだれですかあ、彼だわ神様、またね・・ふ~~、女はこれだから・・もう、神様やめたい . . . 本文を読む
きらめく なみきみち
はらはら おちてくる まわたたち
さいこうの しちゅえーしょん
なみうつ こどう
いヴのよる
あなたは そっと
私の くちびるを みつめ
・・・・・
ああ ついに
そのしゅんかん
・・・・・
&n . . . 本文を読む
プロローグ
10月の第二月曜日、僕は休みを取った。瞳に頼まれたからだ。天王寺駅で待ち合わせした。約束の8時30分。僕が到着すると、瞳は少し浮かない表情で待っていた。
「どうしたの?」
「うん、眠れないの。それと、生理がないの。だから、今から鉄道病院の産婦人科に行くんだけど一人じゃ心細くて。だから、穣二についてきて欲しかったの」
鉄道病院は天王寺駅からわずか3分で着く。受付を済ませ、産婦人科 . . . 本文を読む
部屋の模様替えをした永年放置してあったLPプレイヤーをアンプにつなぎ、書斎のラックからアルバムを一枚とりだした別に何が聞きたいわけではなかったので、たまたま手に触った一枚
ビリー・ホリデイ/奇妙な果実25年ぶりに聞く有名なジャズボーカリストだ泣き叫ぶような声が僕の心を叩く
A面の最後の曲に差しかかった「LOVER.COME BACK TO ME」彼女と別れた後、寂しさを紛らわすために、この曲が . . . 本文を読む
梅雨入りした
昨日からずっと雨が降り続いている湿った空気が家の中まで忍び込んでくる
梅雨の季節は紫陽花の季節でもある
僕は着替えた
赤いポロシャツとチノパン
電車を乗り継いで、とある駅に降り立った
透明の傘を開き、小雨の歩道を黙々と歩くなだらかな坂道を登っていくと、目的の場所に着いた
「あじさい寺」この時期、この寺はそう呼ばれている
小道を辿 . . . 本文を読む
プロローグ
お盆が過ぎた。いつもみたいに窓を開けっ放しにして、布団も掛けずに寝てしまった。明け方、寒さに目が覚め、急いで窓を閉め、布団をかぶったが、遅かった。起きて布団をはいだ途端、寒気が襲ってきて、ぶるぶる震えた。体温を計ると、39.7度あった。急いで医者に行った。9時に開く医院は空いていた。まだ8:00だ。診察は9時だが、扉は開いている。震えはまだ止まらない。なじみの看護師が通りかかった。名 . . . 本文を読む
6
降り注ぐ光の中、カートはゆっくりと走る。やがてテラスのような所に着いた。5段ほど階段を上がると、そこはオープンバーとマリンスポーツのデスクだった。もう、夕方に近いので、マリンメニューはすべて終わっている。人影はない。テラスの上には、木造りの白い屋根があり、そこから落ちてくる光りが縞模様となって、真白いデッキチェアーやテーブルを照らしている。僕は思わず、その光景をCanon Eos1Dに納めた . . . 本文を読む
プロローグ
僕は小浜島の海を見ていた。透き通るように蒼い、海を見ていた。この海に、冬美は眠る。永遠に。5年前、冬美の遺灰を、この海にまいた。漁師に舟を出して貰って、冬美の好きだったプリメリアの花弁を、灰と共にまいた。海面に真白い花が咲き、広がっていく。冬美がまだ健康だったとき、僕らはこの島に来た。透明度の高い海に潜り、色とりどりの魚たちを見た。冬美はマスクの中で目を輝かせていた。美しい珊瑚礁の中 . . . 本文を読む