僕と彼女は高二の時知り合った
僕の高校の学園祭に彼女が来てて 意気投合した
彼女は女子校 僕は男子校 高校が近く
二人とも同じ駅から乗って 同じ駅で降りる事を知り
毎日一緒に通学した
僕は彼女に首ったけ でも手をつないだだけの清い交際だった
高三の冬休み 僕たちは京都の北野天満宮に参った
ここは学問の神様 菅原道真を祀る 総本山
受験の願掛け
彼女は短大 僕は4年制 とうける大学は違ったけれど
絵馬を結んだのは同じ場所だった つぼみを付けた梅の木のそば
お互い受験を控えているので観光もせずに それぞれの家に帰った
そして受験
僕は前日に風邪を引いてしまい 高熱を押さえながらの受験となった
僕は落ちた
一方君はゆうゆうとパスした
僕は浪人となり 君は花の女子大生
そこから二人は徐々に離れていきはじめた
僕が受験勉強をしているあいだ 君はテニスの同好会に入り
コンパだ 合宿だ と青春を謳歌していた
二人が会うことも少なくなっていった
夏の終わり頃 君から手紙が来た
前略 お元気ですか
最近は 会うことさえまれになってしまいましたね
つきあい始めた高二のころが懐かしいです
あのころは 毎朝会っていましたものね
非常に言いづらいことなんですが
ここらで二人の仲を精算しませんか
別に 他に好きな人が出来たというわけではないんです
でも 逢えない恋人同士っていうのも無理があります
はっきり言って辛いんです
友達はみんな彼がいて 楽しく会って過ごしています
それを見て羨ましくなって
どうかお願いです 私を見捨ててください
あなたの優しさは 私が一番良く知っています
それだからこそ あなたから切って貰わなければ
私は自分を失いそうになるんです
お願いします
ショックだった
あと半年待ってくれれば 僕だって大学生になって自由に彼女と会えるのに
手紙を書いた
解りました 自由になってください
僕のことはもう忘れて
返事はこなかった
彼女のことは忘れられなかったけれど 勉強に打ち込んだ
そして受験シーズンがやってきた
今度は健康に留意して 万全の体勢でのぞんだ
合格した
合格して一番最初にしたことは彼女に電話することだった
元気?
うん
彼氏出来た?
出来ない
大学に受かったよ
おめでとう
ねえ やり直せないだろうか 僕たち
もう いつでも逢えるよ
電話の向こうで 彼女がすすり泣くのが聞こえた
あなたはやっぱり優しいままなのね
あんなひどいやり方でふった私に声を掛けてくれるなんて・・・
はい やり直させてください
僕らは復活最初のデートを 北野天満宮に決めた
そしてくくりつけた二人の絵馬を探した
見つけた
風雨にさらされて黄ばんでいたけれど
読んでみた
○○大学に受かりますように
その横に二人とも書いていた
一生この人と繋がっていられますように
君は聞いた
こんなの書いたこと 覚えてた?
もちろん 忘れちゃったのかい?
大粒の涙が彼女の目から ぽとりと落ちた
梅の花が笑っていた