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タロットカードの「愚者」

2024-05-21 09:50:00 | タロットカード

【ゼロという数字が意味するもの】 

 愚者のカードが示す番号はゼロです。ゼロとは、何もないことではありません。むしろゼロには、全てが含まれています。そのため、減りもしなければ、増えもしません。1から21までの数字のカードは、連続性の中にあります。しかし、ゼロには連続性がありません。そのため、ゼロによって、一連の流れが中断されてしまいます。ゼロは「始め」と「終わり」を表す数字です。愚者は、左に向かって歩いています。タロットカードでは、左側が過去です。そのため、左に向かうことは、原点回帰を意味していました。ゼロにも原点回帰という意味があります。タロットカードの世界は、一度限りの人生ではなく、何度も生まれ変わる世界です。愚者のつけている鈴は、輪廻転生の数だとされています。 

 また、ゼロは「宇宙卵」というものの象徴です。宇宙卵は、全てを内在していますが、まだ何も表現していません。それは、顕現前の絶対性の象徴だとされています。宇宙卵は、常に回転していますが、その形が変わることがありません。それは、宇宙全体が不変であるという意味だとされています。

 【背景】

 愚者は、意識が、宇宙に向かっているので、空を見上げています。背景の崖は、危険や未知の世界の象徴です。愚者は、そちらの方向に進んでいます。その崖の危険性を警告しているのが一匹の犬です。犬は「警告」や「直感」を象徴だとされています。愚者は、犬が噛み付いている限り、外には出られません。遠くに見える山脈は、これから出会う人生やその困難のことです。その山脈には、内と外の境界線という意味もあります。

 【旅人】 

 愚者は、ボロを着た若い放浪者です。しかし、あまり他人の目は、気にしていません。愚者の心は、純粋無垢な状態にあるとされています。手に持っている白いバラは、その純粋無垢な心の象徴です。愚者の頭陀袋には、前世の記憶が入っているとされています。荷物が小さいのは、身軽にどこにでも行けるためです。愚者の花柄の服は、希望に満ちた心を表しています。手に持っている棒は「意思」「男根」「豊穣」「創造力」の象徴です。

 旅人は、冒険心に富んでいますが、その瞬間にしか生きておらず、計画性がありません。 タロットカードというものは、愚者が経験する旅だとされています。その旅とは、内面の探求のことです。現時点では、その旅は、まだ始まっていません。愚者は、今のところ楽園にいます。そこでは、無意識の状態です。楽園の内側では、全てのものにまだ意味がありません。しかし、楽園の外の世界は、意識的な意味の世界です。そのため、なんらかの価値観によって縛られています。楽園の中は、まだ価値付けされていない無垢な状態です。タロットカードの出来事というものは、愚者の創造力が生み出した夢だとされています。 

 【何者でもない者】 

 愚者は、いかなる組織に所属さず、社会との関係を断ち切っているので、まだ何者でもありません。世間では、有用な人物ではなく、正気を失った人だと思われています。世間は、常識によって作られていますが、愚者は、それに縛られていません。  常識にとらわれないので、自由な視点を持つことが出来ました。愚者の付けている羽根飾りは、その自由の象徴です。自由は、常識から見れば、無責任なことかもしれません。しかし、常識に縛られない人間は、創造力が豊かで、芸術性があったりします。それこそ、人間本来のあるべき姿なのかもしれません。

 【超越者】 

 愚者は、有と無の間を行き来することが出来るとされています。そのため、世界の枠組みにはとらわれません。世界とは、一つの世界観のことです。愚者には、頼るべき基準や特定の価値観がありません。価値基準がないので、その思考は不安定です。しかし、その常識の外側から見た、全体的な視点を持つとされています。そうした視点は、全ての物事を超えた超越者だけが持つことが出来るものでした。