同じ時間を共有し
同じ出来事に涙し
同じ出来事に笑い
同じ出来事に苦しみ
同じ出来事に歓喜し
同じ出来事を耐え抜き
そして同じ目標を追いかけていた仲間が逝った。
春先に腰やお腹に張りを感じ、近くの小さなクリニックで診察してもらい痛み止めを処方してもらっていた「らしい」
10月になりどうしても痛みが治まらず大きな病院で精密検査を受けた「らしい」
そこで余命1ヶ月と云う非情な宣告を受けた「らしい」
もうすでに葬儀まで済ませた「らしい」
「久商野球部のヤツラにこんなみっともない姿は見せたくない。絶対に病気の事は言わないでくれ」そう親父さんに言っていた「らしい」
「オレの死に顔は絶対に野球部のヤツラには見せないで欲しい。葬式が終わるまで絶対に言わないでくれ」そうお袋さんに言っていた「らしい」
悔しい。すべて「らしい」でしか話せない。
みっともなくてもいいじゃないか。カッコ悪いくらいもがいてもいいじゃないか。
オレらの関係ってそんなもんなのか。
みっともなかろうが格好悪かろうがそんな全てを飲み込んで来た仲間だろ。
なんでそこまで強がれるんだ。なんでそこまで耐えられたんだ。
最後くらい弱味を見せて欲しかった。
最後くらい別れを言わせて欲しかった。
最後くらい・・・
高校時代からいつもエエ格好しいだったあいつ。
自分の弱味を見せる事を嫌っていたあいつ。
何に対しても頑固だった。頑固過ぎるくらい自分の考えを曲げないヤツだった。その頑固さのせいで何度も衝突した。
まだ小学生の子供を二人残していく、さぞ苦しかっただろう。さぞ悔しかっただろう。
どれだけ心残りだろうか。どれだけ口惜しかっただろうか。
誰かに本当の心の内を明かせていたんだろうか。
誰にも告げずひとりで旅立つ事を選択し寂しくなかったんだろうか。
最後の最後まであいつらしく逝った。
これで旅立った仲間は二人になった。
今頃向こうでキャッチボールでもやってるだろう。
いつかは俺らもそっちへ行く。全員揃ったら紅白戦でもやろう。
それまでにしっかり肩を作っといてくれ。
じゃあ・・・またな。