やっと、「妖星伝」の7巻を読むことができた。思えば長い年月だった。しかも、7巻は気がついた時には絶版になっている。いつの間に7巻が出版されていたのか、すっかり忘れ去っていた私。かくなるうえは図書館でと思い市内の図書館に昔6巻まで並べられていたのを思い出す。私が所蔵していたのは文庫本ではなく装丁された本。その図書館は3巻までは体裁のいい本だがあとの4,5,6巻は文庫本。しかし、慨に「妖星伝」は置いてない。ネットで所蔵してある図書館を調べると岡崎か醍醐の中央図書館しかない。友人に話したら家の近所なので明日仕事が休みなので行ってあげるとのこと。すぐに読みだした。
しかし、17年か20年かもしくはそれ以上経ってから呼んだので残念。とりあえずは宿題を片付けた子どもの気分。昔、7巻が出版されないので、行きつけの本屋の主人とやきもきしたものだ。今のように情報が簡単に手に入る時代ではない。主人は小説クラブに連載していたからと問い合わせもしてくれたようだ。「7巻はうちとしても、どうしてもいれたい本なのです。」
私は半村良に怒っていたから、友人が「太陽の世界」を読んで薦めたけれど読まなかった。未完のままで次の作品に取り組んでいるなんて、もう2度と半村良のものは読まないわと決心したのだ。「産霊山秘録」以降とりあえず彼の作品は片っぱしから読んでいた。本屋の主人も「これが出てますよ。」と替わりにとでもいうように「太陽の世界」を出してきたけれど、「はあ、駄目ですか。」と笑ってそれ以上は薦めなかった。
純文学は17歳の少年にでも書けるがエンターティンメントは大人にしか書けないと言われる。私としては後者は半村良を筆頭に平井和正、筒井康隆氏であるが、いずれにしても去る理由から小説の世界から足を遠ざけている。愛読者としては悲しい限りである。どうして、半村氏が7巻を出版できなかったかという理由を知って私の心の中の氏との和解は達せた。そればかりか、私の心は謝罪している。そして遅ればせながら氏の冥福を祈る今、もし転生があるなら、今度生まれ変わっても氏には小説家になってほしい。それとも小説家として私たちを充分楽しませてくれたからその役目を果たしたので、次は全く違った人生を歩むのかしら?いずれにしても次もきっと有意義な人生が待っているでしょう。