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フェルメール 大阪展もさすがの内容_天王寺 市立美術館 5/12まで

2019年02月22日 | 美術館・展覧会

上野で68万人もの観客を集めたフェルメール展が大阪にやってきました。会場の天王寺公園の大阪市立美術館では、2000年にも大規模なフェルメール展が開催されています。日本におけるフェルメール・ブームのきっかけになったような展覧会で、くしくも19年後に再び来てくれました。

  • フェルメール作品は世界中から過去最多6点が集結、「恋文」は大阪展のみの展示
  • フェルメール作品をこれだけまとまって見られる展覧会は世界的にもめったにない
  • 他の17cオランダ絵画もとても充実、フェルメール作品との対比が面白い


まだ始まったばかりの展覧会でとても多くの人が来ており、日本におけるフェルメール人気の高さが実感できます。早めに見に行かないと大変なことになるでしょう。どの館も目玉コレクションになっているフェルメール作品を、世界中の美術館がまとまって貸し出してくれる機会は本当に貴重です。



上野展は会期が4か月もありましたが、68万人という入場者数は少なめの印象を受けます。上野展はおそらく日本初ではないかと思いますが、日時指定チケット以外は販売せず入館者数を抑えたためだと思われます。

日時指定チケットは世界の美術館ではよくあります。世界的な観光ブームで観光客が殺到するため、長蛇の列や混雑による作品への悪影響が懸念されているためです。日本ではテーマパークくらいしか採用されていませんが、美術館などの観光スポットも採用を考えるべきです。

姫路城の天守閣への入場待ちが2時間というのは、外国人観光客にとってはとても残念な思い出になってしまいます。入城したい人は高額でも入場します。行列を気にしないどころか、行列して有名な観光スポットや飲食店を体験すること自体を美化するのは日本人だけです。

日時指定チケット制度を「大阪展でも採用すべき」という声が上がってくることを期待したいものです。


展覧会の見どころ 公式 YouTube

展示はフェルメール以外の17cオランダ画家の作品をジャンル別に展示し、最後にフェルメール作品6点をまとめて展示する構成になっています。アムステルダム国立美術館を中心にフランス・ハルス美術館など、オランダの主要美術館から作品が集まっています。

【アムステルダム国立美術館公式サイトの画像】 フランス・ハルス「ルカス・デ・クレルクの肖像」

第1章の「肖像画」は、17cオランダが世界一豊かな国だった時代を最も感じ取ることができるジャンルです。一儲けすると家族の肖像画を描いてもらうことが、市民の間でとても流行していました。

オランダの肖像画と言えば、何といってもフランス・ハルスの笑顔が印象的です。「ルカス・デ・クレルクの肖像」はそんなハルスの魅力がたっぷり詰まった名品です。商売の成功に自信を持つとともに、社会に感謝するような謙虚さまでも表現しています。この作品を見てモデルは満面の笑みを浮かべたことでしょう。

【アムステルダム国立美術館公式サイトの画像】 カレル・デュジャルダン「自画像」

カレル・デュジャルダンは日本ではほとんど知られていませんが、イタリアかぶれの画家としてオランダでは知られています。イタリアの風景画や神話画をのこしています。

小品ながらこの自画像はとてもよくできています。彼はオランダ人ですが、どこかラテン系の人物のように描いています。イタリアにほれ込んだ彼自身が、そんな表現を自然と行ったように思えます。オランダの肖像画の中できらりと光っています。

【アムステルダム国立美術館公式サイトの画像】 ピーテル・サーンレダム「ユトレヒトの聖母教会の最西端」

第3章の「風景画」からもオランダの豊かさを感じました。ピーテル・サーンレダムは教会内部をモチーフにした、ちょっと珍しい画家として知られています。巨大な教会の内部空間を幾何学的な美しさで表現しています。17cオランダの絵画表現の多様性がわかる作品です。

【アイルランド・ナショナル・ギャラリー公式サイトの画像】 ハブリエル・メツー「手紙を読む女」

第5章の「風俗画」では、フェルメールに負けず劣らずオランダの日常の光景を描いた名品が並んでいます。次がフェルメールの章であるため、モチーフや表現を比較してみるのもおすすめです。

ハブリエル・メツー「手紙を読む女」は、一瞬フェルメール作品かと思ってしまうほど構図の取り方が似ています。恋文をこそこそ読む一瞬を写真のようにとらえています。その横でメイドの女性が気を利かさず、家事にいそしんでいる姿も、どこか笑えます。とても明るい作品で、客人を通す部屋に飾っていたなら、たいそうな話題になっていたことでしょう。

【展覧会公式サイト 作品紹介】 フェルメール作品全6点の画像が掲載されています

最後の第6章がフェルメールです。大阪展は以下の6作品が展示されます。

  1. スコットランド・ナショナル・ギャラリー「マルタとマリアの家のキリスト」
  2. ドレスデン国立古典絵画館「取り持ち女」日本初公開
  3. アイルランド・ナショナル・ギャラリー「手紙を書く婦人と召使い」
  4. ワシントン・ナショナル・ギャラリー「手紙を書く女」
  5. アムステルダム国立美術館「恋文」大阪展のみ展示
  6. メトロポリタン美術館「リュートを調弦する女」


私は6点の内、4点は見たことがあります。初めて見ることもあって「マルタとマリアの家のキリスト」「手紙を書く婦人と召使い」の2点が特に印象に残りました。

【スコットランド・ナショナル・ギャラリー公式サイトの画像】 フェルメール「マルタとマリアの家のキリスト」

「マルタとマリアの家のキリスト」は最初期の作品で、テーマも宗教画です。タッチは若々しく生き生きとしており、マルタとマリアをオランダの普通の女性のように描いています。室内の背景の描き方など、フェルメール・マジックを彷彿とさせるテクニックがきちんと表現されています。

【アイルランド・ナショナル・ギャラリー公式サイトの画像】 フェルメール「手紙を書く婦人と召使い」

「手紙を書く婦人と召使い」は、今回来日したフェルメール作品の中では最高傑作と感じています。1670年頃の彼の画家人生の絶頂期の作品で、光の柔らかさ、構図のバランス、メイド女性の一瞬の表情、何をとっても完成度が高い作品です。おぼろげではなく写実的に描いていることも、洗練された印象を与えます。

【アムステルダム国立美術館公式サイトの画像】 フェルメール「恋文」

「恋文」も1670年頃の作品で、表現の円熟味を感じさせます。隣の部屋からのぞき込むような構図で描かれており、人物の一瞬の表情を偶然見かけたと思わせるところが凄腕です。この作品は大阪展のみの展示です。東京展を見た方も、この1点を見るためにわざわざ大阪に足を運ぶ価値がある作品です。



会期は3カ月ありますが、美術展は会期末が近づくほど混雑します。大阪展は日時指定チケット制を採用していないため、週末を中心にひどい混雑が懸念されます。土日祝日を避ける、平日なら夕方に行く、が美術展での混雑を避ける基本です。チケット売り場も長蛇の行列ができますので、コンビニで事前にチケットを購入しておくことを強くおすすめします。

混雑を避けスムースに鑑賞する頃で、フェルメール・マジックと17cオランダ絵画の質の高さを存分に楽しめます。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。




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大阪市立美術館
特別展 フェルメール展
【美術館による展覧会公式サイト】
【主催メディアによる展覧会公式サイト】

主催:大阪市立美術館、産経新聞社、関西テレビ放送、博報堂DYメディアパートナーズ
会期:2019年2月16日(土)~5月12日(日)
原則休館日:2/18,2/25,3/4,3/11,3/18 ※3/19以降は無休
入館(拝観)受付時間:10:00~16:30

※東京展で実施した「日時指定入場制」は大阪展では行われません。
※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※この会場で展示されない作品があります。
※この展覧会は、2019年2月まで上野の森美術館、から巡回してきたものです。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※コレクションの常設展示も並行して行われています。



◆おすすめ交通機関◆

JR・大阪メトロ「天王寺駅」、近鉄「大阪阿部野橋」駅、阪堺電車「天王寺駅前」駅下車
各駅から天王寺公園内を通って徒歩5~10分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:25分
JR大阪駅(梅田駅)→大阪メトロ御堂筋線→天王寺駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。有料の天王寺公園地下駐車場が利用できます。
※駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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