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岐阜 永保寺 見事な中世空間が3/15に特別公開

2019年02月23日 | お寺・神社・特別公開

名古屋からJR中央線で40分ほどのところにある岐阜県多治見市に、中世の趣を如実に伝える禅寺があります。永保寺(えいほうじ)です。国宝の観音堂と開山堂が年に一日だけ公開される日を間もなく迎えます。

  • 観音堂は鎌倉時代末期の建立、禅寺にのこる建造物としては日本最古クラス
  • 夢窓疎石の作庭と伝えられる庭園は借景の岩山を巧みに利用、観音堂と庭の調和も見事
  • 中世がタイムスリップしたような空間を最も如実に体験できる国内随一の寺


南北朝時代の禅僧のスーパースター・夢窓疎石(むそうそせき)が開いた寺です。山中の隠遁生活を好んだ夢窓疎石らしい、自然と見事に調和した境内です。


国宝・観音堂と無際橋

永保寺は鎌倉時代末期の1313(正和2)年、兄弟弟子で行動を共にしていた夢窓疎石と元翁本元(げんのうほんげん)によって開かれました。夢窓疎石が鎌倉で修行していたころ、美濃の守護大名・土岐頼貞(ときよりさだ)と懇意になり、当地に招かれたことが開山のきっかけです。

夢窓疎石・元翁本元ともに後醍醐天皇の帰依を受けていましたが、建武の新政の失敗後は北朝の光明天皇の帰依を受けることになります。夢窓疎石は都と距離を置いた人物とされていますが、それを上回る人望を集めたひとかどの高僧だったのです。


山に囲まれた境内には道を下って入る

境内は西側を山に、東側を土岐川に囲まれており、天然の要害のような立地です。境内に入るには西側の山から参道を下っていくため、山に上っていく通常の寺とは逆の感覚になります。非日常感をより強く感じます。

参道を下ると、檜皮葺(ひわだぶき)の美しい屋根の堂宇が見えてきます。国宝の観音堂で、禅寺で本尊を安置する仏殿に相当する堂宇です。

1314(正和3)年の建立は、いずれも国宝で、1320(元応2)年建立の下関・功山寺(こうざんじ)仏殿、1327(嘉暦2)年建立の和歌山・海南・善福院(ぜんぷくいん)釈迦堂を上回る、日本最古の禅寺建築と考えられています。四隅が鋭く反り返りながらとんがった檜皮葺きの屋根が一層、中世の趣を感じさせています。


観音堂の天井

観音堂の外観は明らかに禅宗様(ぜんしゅうよう)建築ですが、室内は天井板があって床は板張りの和様(わよう)建築です。流木で組まれた岩窟のような厨子には本尊の聖観世音が祀られています。流木は700年の時を経たことを感じさせる質感を示しており、室内でも中世の趣を濃厚に感じることができます。

観音堂の前の池には太鼓橋の無際橋(むさいきょう)が架けられており、観音堂の外観と絶妙に調和しています。橋の中央には屋根のある亭舎が設けられています。亭舎は明治になってから付加されたものと考えられています。きっと観音堂との景観の調和を計算したものでしょう。池をはさんでのぞむ観音堂と無際橋の景観はまさに完璧です。


国宝・開山堂

観音堂から無際橋を渡って池を回り込むと、山を借景にした境内の最も奥に国宝の開山堂(かいざんどう)があります。観音堂建立から少し後の1352(文和元)年、夢窓疎石の死の翌年に足利尊氏の寄進で建立されたと考えられています。後部の祠堂と前部の礼堂を相の間でつなげた建築は、日光東照宮で知られる神社の権現造建築の原点になっているに感じます。

開山堂は建物内外とも純粋な禅宗様の意匠です。天井板がなく瓦床の室内の奥には二人の開祖の色彩豊かな像がまつられています、中国の中世にタイムスリップしたようです。


庫院 玄関

2003年の焼失後に再建された庫院と方丈では、寺宝が当日のみ展示されています。白木の実に心地よい香りが漂うピカピカの空間は、建立直後の寺院建築の美しさを実感することができます。

年に一日だけですが、素晴らしい体験ができます。普段は観音堂と開山堂を近づいて観ることはできません。お帰りには多治見名物のうなぎもぜひ。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



仏教と美術の第一人者がスーパースターの魅力を斬りこむ

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永保寺
観音堂、開山堂、宝物 特別公開

会期:毎年3月15日(日付で固定)
入館(拝観)受付時間:9:00~15:00

※この寺の境内は観光目的で常時公開されています。

永保寺
【公式サイト】http://www.kokei.or.jp/

原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:5:00~17:00



◆おすすめ交通機関◆

JR中央線「多治見」駅北口下車、東鉄バス「虎渓山」下車、徒歩7分
JR中央線「多治見」駅北口から車で10分
中央道「多治見」ICから車で10分

JR名古屋駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:1時間10分
名古屋駅→JR中央線快速→多治見駅→北口N番バス乗り場→東鉄バス小名田線→虎渓山

※鉄道やバスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることをおすすめします。
※無料の駐車場があります。
※現地付近のタクシー利用は事前予約をおすすめします。


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