好奇心を刺激する京博の入口看板
京都国立博物館で、豪商から寄贈されたコレクションを展示する「豪商の蔵」展が始まっています。寄贈したのは、大阪南部の関西空港に近い貝塚で、大正時代に巨万の富を築いた廣海(ひろみ)家です。4棟もあった土蔵を6年かけて京博が調査し、寄贈手続きも完了したことからお披露目となりました。
書画、茶道具、婚礼調度品など富裕層の暮らしぶりを垣間見ることができます。また質の高い品揃えは家柄のよさを感じさせます。宴会用の器が数十人分揃っている姿は圧巻です。豪商のコレクションがまとまって寄贈されたことはとても意味があることがわかります。
貝塚は岸和田のすぐ南にあり、江戸時代は本願寺の貝塚御坊が治める寺内町(じないちょう)でした。寺が領地の自治を行う寺内町は、浄土真宗によく見られます。大阪・富田林御坊、奈良・今井御坊、三重・津(一身田)などが著名です。古い街並みが遺されていることも多く、富田林や今井は重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)に指定されています。
廣海家は、幕末に肥料商から始め、大正時代に金融業で大きく発展しました。幕末から明治初期にかけて建てられた建物が800坪近い敷地にほぼ残っており、国の登録有形文化財に指定されています。今まで火災・戦災・家業の傾きといった美術品が失われる危機を自力で回避されてきましたが、これからは京博に居所を移して大切に守られることになります。
展示はコレクションのゆかりによって、6つの章に分かれています。第二章は茶の湯に関する展示です。交際の手段として、また数寄者としても少しずつ揃えたであろう茶道具は、質の高さを感じさせます。代々の主人が茶道具を大切にしていたことがわかります。伊藤若冲の「筍図」は茶会の際に床の間を飾ったのでしょう、茶室の雰囲気をより落ち着かせる深みのある作品です。
第三章は宴会用具です。椀や皿は、それ自体が美しくても1点だけなら中々目立ちません。廣海家では一度の宴会に必要な数十人分のセットをきちんと保管していたため、展示でも数十点の皿や椀が一堂に並べられています。座敷で大勢の客人が盛り上がっている様子が浮かんでくるようで、圧巻のビューです。
酒井抱一が尾形光琳作品の図録として出版した「光琳百図」に載っているデザインを用いた漆椀も展示されています。とても深みのある漆黒の上に、金色の蒔絵で上品に紋様が表現されています。このデザインを見るだけで、中に入っている吸い物をおいしいと感じさせる効果があると思える絶品です
第五章の嫁入り道具も素晴らしい展示です。展覧会チラシに採用された「四季草花図屏風」は、とても上品で暖かみがあります。華やかな婚礼の場でも存在感を発揮したことでしょう。江戸時代半ばに大坂で活躍した狩野派の絵師・大岡春卜の作品です。
【公式サイトの画像】 大岡春卜「四季草花図屏風」
京博館内の茶室で催される茶会に、今後廣海家から寄贈された茶道具が使われるそうです。京博のサイトをチェックしてみてください。
【公式サイト】 京都国立博物館|イベント
キヤノン綴プロジェクトも要チェック
こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。
京都国立博物館
特別企画 貝塚廣海家コレクション受贈記念
「豪商の蔵」 ─美しい暮らしの遺産─
http://www.kyohaku.go.jp/jp/project/hiromike_2018.html
会期:2018年2月3日(土)~3月18日(日)
原則休館日:月曜日
※この展覧会は、他会場への巡回はありません。
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