約2年間の改修工事を終えた神戸市立博物館がリニューアルオープンしました。
南蛮美術を筆頭に、館が誇る至宝を一堂に展示する「名品展」が、リニューアルの「披露宴」として行われています。
1Fホールは来館記念写真スポット
目次
- 神戸市立博物館はリニューアルでどう変わった?
- 神戸の至宝:南蛮美術の池永コレクション
- ザビエルと銅鐸の部屋もできた
- 1Fは入りやすく使いやすくなった
ここ数年は、全国的に美術館・博物館のリニューアル休館が目立っていました。
神戸市立博物館は、展示スペースが大きいことから、関西の大規模企画展の主要会場のひとつです。
2年近くに渡った休館中は、会場不足に起因する大物企画展の「関西飛ばし」を感じたことは否めません。
これには、同じく箱が大きい京都市美術館ならびに京都国立博物館の明治古都館と、休館時期が重なったことも影響しています。
京都市美術館も来年2020年3月にリニューアルオープンします。
展示会場としての箱は揃いました。
「関西飛ばし」はありえない。
そんな期待に、リニューアルした神戸市立博物館が応えてくれる予感を感じさせます。
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神戸市立博物館はリニューアルでどう変わった?
神戸市立博物館の建物は何と言っても、旧外国人居留地を象徴するような重厚でレトロな印象が特徴でしょう。
それもそのはず、1935(昭和10)年に竣工した旧横浜正金銀行神戸支店が、1995年の阪神大震災にもびくともせず、今も使い続けられているのです。
今回のリニューアルは耐震補強が主目的ではありません。
1982(昭和57)年の開館以来、時代にそぐわなくなった利用者視点の使い勝手の改善に主眼が置かれました。
神戸市立博物館が誇る至宝の常設展示と、時代に応じたトイレやミュージアムショップといったアメニティの改善が、目に見えて「よくなった」と感じられるポイントです。
泰西王候騎馬図屏風の展示室
神戸の至宝:南蛮美術の池永コレクション
リニューアルオープンを飾る展覧会「名品展」は、自館コレクションの至宝を圧巻のスケールで披露する構成になっています。
新しくなったお披露目として、忠実に自館コレクションの魅力をプレゼンしています。
神戸市立博物館の「実力」をうかがい知る絶好の機会です。
神戸市立博物館は、1982(昭和57)年に「神戸市立南蛮美術館」と「神戸市立考古館」を統合し開設されました。
源流となった2つの館名は、現在も神戸市立博物館が誇る二大至宝を象徴しています。
その一つ「南蛮美術」は、神戸の資産家・池長孟(いけながはじめ)が蒐集したものです。
安土桃山時代から江戸初期にかけて、ヨーロッパからはるばるやって来た、今まで見たこともない異国文化を表現した作品が多数制作されました。
神戸市立博物館は、そうした「南蛮美術」では、日本最高峰のコレクションを誇ります。
【所蔵者公式サイトの画像】 「泰西王侯騎馬図」神戸市立博物館
「泰西王侯騎馬図」は、池長コレクションの最高傑作の一つでしょう。
サントリー美術館所蔵品と対を成す屏風です。
ヨーロッパの強国の帝王を描いたもので、当時の世界情勢がどのように日本に伝わっていたかをうかがい知ることができます。
こうした歴史の生き証人は、他にも多数展示されています。
「四都図・世界図屏風」は、リスボン・セビリア・ローマ・イスタンブールの4都市の繁栄の様子を描いた作品です。
400年前に遠く離れたヨーロッパの繁栄を伝えたこの絵を見た日本人は、どんな印象を持ったのでしょうか?
とてもロマンが拡がります。
「都の南蛮寺図」は、京都に1576(天正4)年に開設された教会を描いたものです。
秀吉が警戒する前、信長が受容したキリスト教の姿を見事に今に伝えています。
【所蔵者公式サイトの画像】 狩野内膳「南蛮屏風」神戸市立博物館
狩野内膳「南蛮屏風」は、南蛮美術の最高傑作として教科書でも頻繁に取り上げられています。
保存状態がよく、彩色のはがれはほとんどありません。
描写は緻密です。
黒人や虎の毛皮など、当時の日本人にとっては衝撃の「出会い」を、400年後の今に見事に伝えています。
重要文化財です。展示は前期のみです。
【所蔵者公式サイトの画像】 宋紫石「寒梅綬帯鳥図」神戸市立博物館
池長コレクションは、長崎を通じて日本の絵師たちに刺激を与えた絵画にも、目を見張るものがあります。
宋紫石「寒梅綬帯鳥図」はその中でも、傑作の一つです。
宋紫石は、1731(享保16)年に長崎に招かれて日本の絵師たちに衝撃を与えた清朝の宮廷画家・沈南蘋の画風を江戸で広めました。
それまでの日本には見られなかった写実表現を、中国から学び取っていることがストレートに伝わってきます。
【所蔵者公式サイトの画像】 沼尻墨僊「大輿地球儀」神戸市立博物館
池長コレクション以外にも、観る者を納得させる名品が揃っています。
日本最古の地球儀「大輿地球儀」は注目です。
木版印刷された世界地図を球体に張り合わせたもので、幕末に造られました。
サイエンスがいかに江戸時代に発達したかを今に伝える大珍品です。
ザビエル展示室
ザビエルと銅鐸の部屋もできた
今回のリニューアルの最大の目玉が、2F「コレクション展示室」です。
これまでなかった神戸市立博物館の主要なコレクションの常設展示エリアが設けられました。
【所蔵者公式サイトの画像】 「桜ヶ丘4号銅鐸」神戸市立博物館
日本に4つしかない国宝・銅鐸の一つで、動物や農耕の様子を表した紋様の美しさが感動的です。
昨年2018年の東京国立博物館「JOMON」展では、縄文時代の土器や土偶の神秘的な美しさを強く印象付けました。
縄文の次は弥生の「銅鐸」、次のブームを予感させる見事な展示室が設けられました。
【所蔵者公式サイトの画像】 「聖フランシスコ・ザビエル像」神戸市立博物館
「聖フランシスコ・ザビエル像」は、安土桃山時代にキリスト教が日本で根付いたことを明確に物語る傑作です。
大阪府茨木市の隠れキリシタンの旧家の蔵で、永らく眠っていました。
保存状態は極めてよく、400年以上前に出会った西洋文化の印象を見事に今に伝えています。
本物の展示は約2か月間ですが、それ以外はレプリカを鑑賞できます。
1Fカフェ&ミュージアムショップ
1Fは入りやすく使いやすくなった
1Fは、神戸の歴史を3次元で体感できる展示室に生まれ変わりました。
- 国宝銅鐸が出土された古代
- 平清盛が目を付けた天然の良港
- 幕末の開港で花開いた異国情緒
旧居留地(横浜の関内に該当)時代を時系列に追ったジオラマは、日本の近代の発展をとてもわかりやすく表現しています。
常設展示でも2Fは有料ですが、1Fは無料です。
歴史的な建物空間の中で、館のある旧居留地の魅力をたっぷり堪能できます。
昭和の趣をひきずっていた「売店」が、令和の「ミュージアムショップ」として大変身したことも、リニューアル成果の象徴の一つです。
鑑賞する/しないに関わらず楽しめる「カフェ」は、とても入りやすい雰囲気にしつらえられています。
神戸の最大の魅力である異国情緒をしっかり楽しむことができます。
【神戸市立博物館公式サイト】 ミュージアムショップ
【神戸市立博物館公式サイト】 TOOTH TOOTH 凸凹茶房
博物館正面
神戸は横浜と共に、近年のインバウンド観光ブームに後れを取っていた感が否めません。
神戸ビーフ/スイーツ/パン/中華料理、日本を代表するような文化は神戸にはたくさんあります。
神戸市立博物館は、神戸の魅力を伝えるゲートウェイとして観光客に推奨できるスポットに、見事に「ヘンシン」しました。
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
博物館の周辺、旧居留地は神戸の魅力のるつぼ
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利用について、基本情報
<神戸市中央区>
神戸市立博物館
リニューアル記念
神戸市立博物館名品展
-まじわる文化、つなぐ歴史、むすぶ美-
【美術館による展覧会公式サイト】
主催:神戸市立博物館、神戸新聞社
会場:3F/2F/1F展示室
会期:2019年11月2日(土)~12月22日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~16:30(土曜~20:30)
※11/24までの前期展示、11/26以降の後期展示で一部展示作品/場面が入れ替えされます。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この展覧会は、非営利かつ私的使用目的でのみ、撮影禁止作品以外の会場内の写真撮影が可能です。
フラッシュ/三脚/自撮り棒/シャッター音と動画撮影は禁止です。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っています。
【美術館による常設展示案内】 コレクション展示室 <2F有料エリア>
【美術館による常設展示案内】 神戸の歴史展示室 <1F無料エリア>
◆おすすめ交通機関◆
JR神戸線「三ノ宮」駅下車、西口から徒歩10分
阪急神戸線「神戸三宮」駅下車、東口から徒歩10分
阪神「神戸三宮」駅下車、西口から徒歩10分
地下鉄西神・山手線「三宮」駅下車、西出口1から徒歩10分
地下鉄海岸線「三宮・花時計前」駅下車、徒歩10分
ポートライナー「三宮」駅下車、徒歩15分
JR神戸線・阪神「元町」駅下車、東口から徒歩10分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:40分
大阪駅→JR神戸線→三ノ宮駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ/渋滞/駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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