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おだやかな島だからこそ、五感を研ぎ澄ませるアート鑑賞ができる ~豊島美術館

2017年08月26日 | 美術館・展覧会

どこまでもおおらかな豊島の海と空

 

 

豊島は、岡山と高松の間に浮かぶ直島の東隣にある小さな島で、小豆島も近い。「としま」ではなく「てしま」と読む。面積は直島の倍近くあるが、人口は1/3の900人ほど、瀬戸内の典型的な、のどかさとおおらかさを体験できる島である。

 

となりの直島で1980年代から始まったアート拠点としての開発は、2010年に豊島美術館を開館するに及んだ。使われていなかった棚田を利用し、建築家・西沢立衛と彫刻家・内藤礼によるインスタレーション(空間を芸術作品として表現)を体験できる。

 

美術館は海を見下ろす小高い丘の上にある。丘を登っていく道から見える海は明るくて大きく、どんなものが見られるか期待感を高める効果があるのでは?と思ってしまうほどの絶景だ。

 

 

 

「未確認飛行物体」のように見えるが、細道が誘(いざな)う

 

 

丘の頂上らしきところまでたどり着くと、真っ白な不思議な物体が見える。何となく「ここか?」と感じたが、「美術館」という表示が見当たらない。しかし明らかに歩道とわかる細道が作られており、無言で誘っているように感じたので進んでみた。薄暗い道は丘にたどり着くまでのおおらかな道から一変して神秘的、この道で大丈夫か?とハラハラ・ドキドキしながら歩くとすぐに入口が見えてきた。

 

 

 

森の神秘的な細道の先に入口

 

 

建物に入る前に下足場があり、靴を脱ぐ理由がわからなかったが、内部に入るとその理由がすぐにわかる。柱が一本もない直径50mほどの大きなドーム型の空間には、天井の開口部から光・風・音が入ってくる。鑑賞者は座ったり寝転んだり、思い思いの格好で五感を研ぎ澄ましている。誰もおしゃべりはしていない。本当に自然の営みに対してだけ五感が反応する状態になっている。

 

水が湧き出ているところもある。底が水平を極度に追及しているのであろう、水滴はどちらにも流れず、きれいな繭(まゆ)型や瓢箪(ひょうたん)型をして、プルンプルンと風に揺られている。まるで水滴の動きをスローモーション再生する飲料水のテレビCMを見ているようだ。

 

この島にはスーパーもコンビニもない。この島での人間の営みは、自然の営みに対して本当にちっぽけなものだと感じる。この美術館は案内や説明がほとんどないが、そもそも案内や説明を求めるのは人間だけだ。人間もあらゆる生き物も、抗うことができない自然の営みの中で生きていかなければならない。このアート作品に対する作者の思いは確認できていないが、私は体験してこのように感じた。

 

 

豊島と言えば不法投棄された産廃問題を思い浮かぶ方も少なくないと思う。産廃は2017年3月に撤去が完了し、大きなヤマを越えたようだ。島民や関係者の永年の努力に敬意を表するとともに、過ちが繰り返されぬよう願ってやまない。

 

 

日本や世界には、数多く「ここにしかない」名作がある。

「ここにしかない」名作に会いに行こう。

 

 

 

豊島、MIHO、行きにくいがすごい美術館を学べる

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豊島美術館

http://benesse-artsite.jp/art/teshima-artmuseum.html(ベネッセアートサイト)

原則休館日:火曜日(3-10月)、火~木曜日(11-2月)

 

 


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