美の五色 bino_gosiki ~ 美しい空間,モノ,コトをリスペクト

展覧会,美術,お寺,行事,遺産,観光スポット 美しい理由を背景,歴史,人間模様からブログします

3年毎 現代アートの定点観測_東京 六本木 森美術館 5/26まで

2019年03月22日 | 美術館・展覧会

東京・六本木・森美術館で3年おきに開催されている「六本木クロッシング」展を見てきました。最先端の日本のアートシーンを定点観測する森美術館の”定番”展覧会です。

  • 2019年のテーマは「つながり」、異質なものをつなぐ発想を感じると、頭の中が心地よく刺激される
  • 25組のアーティストによる「つながり」は、分断が進む社会に発想の転換を促している
  • 展示構成が章立てされておらず、気になる作品を自由に見比べて鑑賞するのが面白い


森美術館ならではのゆとりのある展示空間と円形の展示室配置は、コンテンポラリーアートを楽しむにあたって「次にどんな作品が飛び出すか」というワクワク感を高めてくれます。平日の仕事帰りに行くと、きっと心が軽くなるでしょう。



六本木クロッシングは、毎回時代に応じたテーマを設定しています。前回2016年は、SNSによりバーチャルなコミュニケーションの普及で、突然時代の寵児になることもありえる「個人」にスポットをあてました。その前2013年は東日本大震災後の社会的意識の高まりを通じ、既存の社会通念や規範に「疑念(ダウト)」を持つことで、新しい日本の風景を見出そうとしました。

制作されて間もないコンテンポラリーアート作品は、鑑賞時と制作時の時代背景はほぼ同じなので、時代背景を改めて学ぶ必要はありません。六本木クロッシングは社会性の強いテーマを設定していることもあり、アーティストが未来に向けて何を表現しようとしているのかを注意深く観察すると、より興味深く鑑賞できます。様々な発想が見えてくるところに面白さがあります。



展覧会入口からは、飯川雄太(いいかわたけひろ)「デコレータークラブーピンクの猫の小林さんー」の猫の顔の半分だけが見えるようになっています。この猫、展示空間にギリギリ収まっているほど巨大で全貌を一目で見渡すことはできません。とても愛嬌のある顔をしていますが、実は「フェイク」かもしれません。

情報があまりにも多すぎて正しく選別することが難しくなっている現代社会に問題意識を提起するような作品が、展示の最初からインパクトを鑑賞者に与えています。

【美術館公式サイト 展示風景】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています

林千歩(はやしちひろ)の「人工的な恋人と本当の愛」は、陶芸教室を営むAIロボットの「アンドロイド社長」が人間の女生徒と恋に落ちるストーリーを映像にしています。人間とロボットとのやり取りは「変なホテル」ですでに現実化しており、サービス業の様々なシーンでこれから目にする機会がますます増えていくでしょう。この映像は決して夢物語でもエンタテイメントでもなく、実際に起こりうることを暗示しているかのようです。



青野文昭(あおのふみあき)「なおす・代用・合体・連置―ベンツの復元から―東京/宮城(奥松島・里浜貝塚の傍らに埋まる車より)2018」は、東日本大震災で壊されていたものを拾って収集し、それらを”直す”がごとく組み合わせてアート作品にしています。打ち捨てられたモノでも組み合わせによって、新しい価値を生み出すことを強烈にアピールしている作品です。

磯谷博史(いそやひろふみ)「花と蜂、透過する履歴」は、夜釣りでイカをおびき寄せるために使用する巨大な電球の中になんとはちみつを入れ、黄金色で柔らかいはちみつ特有の温かい光を放つ作品です。灯りを通じて吸い寄せられるように鑑賞者が近づいていきます。見事な”つながり”表現です。


東京シティビュー

森美術館の展覧会のチケットはほとんどの場合、森美術館入口からエスカレーターをおりた一つ下の階の52Fを一周して東京の360度ビューを楽しむことができる「東京シティビュー」エリアにも追加料金なしで入ることができます。最近では渋谷駅のあたりが、来るたびに光景が代わっていくのを目の当たりにすることができます。

「東京シティビュー」なしの展覧会チケットは基本的にないので、しっかり楽しんでいきましょう。


できてから16年も経つとは思えない外壁の輝き

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



六本木の美術館には世界のエリートが集う

________________

森美術館
森美術館15周年記念展
六本木クロッシング2019展:つないでみる
【美術館による展覧会公式サイト】

主催:森美術館
会期:2019年2月9日(土)~5月26日(日)
原則休館日:会期中は無休
入館(拝観)受付時間:10:00~21:30(火曜~16:30)

※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っていません。企画展開催時のみ開館しています。

※この展覧会は、非営利かつ私的使用目的でのみ、撮影禁止作品以外の会場内の写真撮影と
 Web上への公開が可能です。ただしフラッシュ/三脚/自撮り棒/シャッター音は禁止です。



◆おすすめ交通機関◆

東京メトロ日比谷線「六本木」駅下車、1C出口から徒歩3分(コンコースにて直結)
都営地下鉄大江戸線「六本木」駅下車、3出口から徒歩9分
都営地下鉄大江戸線「麻布十番」駅下車、7出口から徒歩12分
東京メトロ南北線「麻布十番」駅下車、4出口から徒歩15分
東京メトロ千代田線「乃木坂」駅下車、5出口から徒歩12分

JR東京駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:20分
東京駅→東京メトロ丸の内線→霞ヶ関駅→東京メトロ日比谷線→六本木駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


________________

→ 「美の五色」とは ~特徴と主催者について
→ 「美の五色」 サイトポリシー
→ 「美の五色」ジャンル別ページ 索引 Portal


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 京都は花魁ではなく太夫_鷹... | トップ | フランス絵画と近代洋画がお... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

美術館・展覧会」カテゴリの最新記事