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和歌山電鉄・喜志駅 たま駅長 ~世界の人々の心をつかんだ猫がここにいる

2018年03月23日 | 観光スポット


駅舎の屋根が猫の目

和歌山のローカル線の駅に、日本で最も有名な猫がいます。JR和歌山駅から郊外の紀の川市を結ぶ和歌山電鐵貴志川線の終点・喜志駅の駅長を務める「たま」です。喜志駅の売店の飼い猫でしたが、ひょんなことから駅長に抜擢され、人なつっこく愛嬌のある表情で一躍全国にその名をとどろかせました。たま駅長に会うために和歌山電鐵の乗客は増え、厳しい経営のローカル線をよみがえらせました。

初代のたま駅長は2015年に逝去し、現在はII世の「ニタマ」が駅長を務めています。猫の目をモチーフにした喜志駅舎を見るだけでもとてもワクワクします。訪れるだけで元気が出ること間違いなしです。

【公式サイトの画像】 新しい駅長室の完成を喜ぶニタマ駅長と小嶋社長

和歌山電鐵貴志川線は2006年から両備グループが運行しています。両備グループは岡山県を中心にバス・タクシーなど公共交通を運営する会社です。グループ代表の小嶋光信は、地方公共交通の再生請負人としてメディア出演も多い著名な実業家です。その手腕を買われて大手私鉄の南海電鉄から経営を引き継ぎ、社長に就任しました。

初代のたま駅長は、南海電鉄時代から駅のアイドルでした。しかし和歌山電鐵が経営を引き継ぐにあたって駅舎の外にあった猫小屋が立ち退きを迫られます。困った飼い主が小嶋社長に駅舎内で飼えないかと相談すると、たまにほれ込んだ小嶋社長が駅長に抜擢する人事を決断します。「招き猫」になってほしいという思いを込めた人事です。

この人事には、喜志駅が無人駅で駅長ポストが空いていたという“運”も幸いしました。以来たまは終の棲家を得るとともに、駅長として勤務する(改札口で寝転んで乗客にかわいがられる)ことになりました。

駅長就任が全国のメディアで取り上げられ、たま駅長目当ての乗客と関連グッズの売り上げが増加します。海外メディアも報道したため、外国人観光客も増加します。その功績が評価され、初代たま駅長は和歌山電鐵株式会社の社長代理にまで出世します。


初代たま駅長の在りし日を駅舎内でしのぶことができます

駅長就任から9年後の2015年、16歳の大往生で初代たま駅長はこの世を去ります。和歌山電鐵は社葬を行ってたま駅長の功績を偲び、「名誉永久駅長」の称号を追贈します。この称号は和歌山電鐵の公式サイトに現在も掲載されています。また喜志駅にあった神社にたまの魂が祀られ、神様としてあがめられることになります。

【公式サイト】 和歌山電鐵株式会社>会社概要 代表者


たま神社

たまの死はイギリスBBCなど海外の主要メディアでも報道されるほどでした。和歌山電鐵はすばやく後任人事を行います。両備グループの地元の岡山で拾われ、2012年に「貴志駅長代行」に任命されていた「ニタマ」をII世駅長に昇格させます。2018年現在、喜志駅長としてかわいがられている猫は、このニタマです。

喜志駅の電車の運行はほぼ1時間に2本ですが、駅舎の中のカフェやグッズ売り場は常に人であふれています。ローカル線の駅とは思えないほど活気にあふれています。日本人よりアジアからの外国人観光客が目立ちます。


いちご電車

いちご電車、おもちゃ電車、たま電車といった、車体や内装をカラフルに塗り替えた車両も人気を集めています。これら車両のデザインは、JR九州の特急車両デザインで著名な水戸岡鋭治によるものです。猫の目の屋根がかわいい喜志駅舎も水戸岡のデザインです。

マーケティングのやり方次第でローカル線はよみがえります。人間にとって身近な動物である猫がどれだけ人間に癒しを与えているかを強く実感させます。私は猫派ではなく犬派ですが、たま駅長はそんな派閥の枠組みを超えて尊敬できます。

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。



地方の公共交通とはどうあるべきか、不朽の一冊


和歌山電鐵
http://www.wakayama-dentetsu.co.jp/

※たまII世駅長の勤務時間は限られています。事前に公式サイトでご確認ください。
※喜志駅に駐車場はありません。必ず電車をご利用ください。


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