紀の川に春を告げるモモの花
和歌山県北部の紀の川市では、サクラとほぼ同じ時期に花を咲かせるモモの花が、春に一面を覆いつくします。その光景が近年「桃源郷」のようだと注目を集めています。サクラよりもピンクの色の濃いモモの花はどこか神秘的です。普段と違う春の花見はいかがでしょうか?
【公式サイト】紀の川市はフルーツ王国!
吉野の山あいから高野山の麓を通り四国に面した太平洋にそそぐ紀の川は、紀伊(きい)の国、現在の和歌山県の母なる大河です。川沿いでは温暖な気候を活かし、フルーツの栽培が盛んです。モモ・イチジク・ハッサクなど全国有数の出荷量を誇ります。
全国的に有名になった紀の川市のモモのブランド「あら川の桃」は、紀の川の水の恵みの賜物です。モモは春に花を咲かせてから果実を熟し始め、初夏に旬を迎えて出荷されます。初夏に味わえる甘味とみずみずしさは、温かい紀州のかけがえのない恵みを感じさせてくれます。
春の花と言えば、まずサクラがあがります。淡いピンク色の可憐さが日本人の心にかけがえのない風物詩となっています。モモの花もサクラによく似ています。春の少し前のウメもよく似ています。いずれも白・ピンク・紅と色とりどりですが、品種改良が盛んで色だけでは見分けがつきません。モモも濃いピンクが一般的ですが、白や紅の色もあります。
モモ:花びらの先端がとんがっている
サクラ:花びらの先端が割れている
ウメ:花びらの先端がまるい
このように花びらの先端の形状で見分けるのが一般的です。かなり近づいて見ないと正確な違いは判りませんが、そんな違いが一面に重なった光景には、それぞれの花の個性の違いを楽しむことができます。
2月から咲き始めるウメは、春の温かさの到来を最も早く告げてくれます。まだ寒いのに一生懸命花を咲かせようとしています。花びらの先端がまるいのは、少しずつ春の訪れを押し出そうとしているからだと思えてなりません。
サクラはウメより少し後、暖かくなってから咲き始めます。花びらの先端を少しでも延ばすことで春の到来をより主張しています。モモは春の到来の主張をもっと明確にしていると思えます。サクラとは異なり、果実の熟成のためにたっぷりと栄養を空襲する必要があります。そのためサクラ以上に花びらを咲かせようとしているのでしょう。
春の紀の川の休日はモモを見ながらピクニック弁当
モモが一面を覆いつくす光景は、ピンク色が濃いこともあってどこか非日常的な空間を醸し出します。「桃源郷」とは中国の古典で表された概念で、日常の世界とは真逆のたどり着きたくても絶対にたどり着けない世界を指します。そこは不快のない理想郷、すなわちユートピアではありません。100%理想的な社会は絶対にありえないという、ある意味“戒め”を表すものです。
そんな古典の世界観をどこかで聞きつけたのか、近年は香港・台湾の観光客が春にたくさんやってきます。日本人にも決して有名ではない観光地をどうやって知ったのか、おそらくSNSがきっかけだとは思いますが、彼らの情報収集への意欲には頭が下がります。
菜の花の黄色がモモの花をより一層神秘的に見せる
モモの花は春に咲きますが、果実の収穫は初夏です。収穫に向けてもう少し頑張らねばなりません。一面のピンクの絨毯は「花を見て浮かれていてはまだならぬ」と人間に教えているようです。そんなように見せる紀の川のモモの花は、本当に神秘的なのです。
こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。
あら川の桃の記憶に残るような濃厚な味わいが年中楽しめます
桃源郷(あら川の桃振興協議会)
http://aramomo.server-shared.com/togenkyo.html
桃源郷(紀の川市観光協会)
http://www.kanko-kinokawa.jp/tougenkyo/
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