京都・奈良の初詣3回シリーズの最後は東大寺です。東大寺と言っても大仏殿ではなく、あえて二月堂です。新年を祈るだけではない二月堂ならではの体験が、いつもと違う初詣を演出してくれます。
- お水取りの会場で有名な二月堂は、親しみを感じる空間がほっとさせてくれる
- 高台にあり、大仏殿の屋根や奈良市内の絶景が楽しめる
- 初詣も大仏殿に比べ空いており、ゆったりと祈ることができる
- 隣の法華堂で、天平の美仏に新年早々からお会いできることも魅力
大仏殿からは横の山の斜面を5分ほどのぼるだけです。奈良の優雅な初詣は二月堂です。
奈良市内の絶景、大仏殿の屋根も見える
二月堂のある高台は東大寺の中でも上院(じょういん)地区と呼ばれ、東大寺の原点のようなところです。二月堂の南隣にある法華堂が大仏殿より古い建物で、東大寺の前身寺院である金鐘寺(こんしゅじ)の堂宇と考えられているからです。
二月堂は大仏開眼の年の752(天平勝宝4)年、お水取りが始まった頃の建立と考えられています。大仏開眼の6年後に完成した大仏殿よりも古いことになります。ただし現在の二月堂は、1667(寛文7)年のお水取りが行われている際の失火で焼失し、2年後に再建されたものです。
江戸時代の再建とは言え、1,200年以上に渡って続けられているお水取りを行う堂宇として、複雑な間取りが再現されています。東大寺の建造物としては最も新しく、2005年に国宝になっています。
二月堂
二月堂へは大仏殿付近から斜面を登るルートがメインですが、春日大社から若草山の山麓を通ってくる人も少なくありません。初詣の頃は、毎年1月下旬に行われる山焼きを待つ枯れた芝生が、黄金色になって山肌を包んでいます。とても美しい風景です。
二月堂は懸造(かけづくり)の正面にある舞台には、24時間いつでも自由にのぼることができますが、元旦に日付が変わった深夜が幻想的です。日付が変わってから撞き始められる除夜の鐘の音色と共に、大仏殿から二月堂に至る参道の灯篭に火が灯されていきます。舞台からは奈良の夜景が見えます。
除夜の鐘を聞きながら過ごす二月堂での時間は、神秘的でさえあります。とても寒いですが、とても至福の一時です。
元旦の深夜は幻想的になりますが、普段の二月堂は東大寺の中でもいたって親しみやすい堂宇です。正面では線香が常に黙々と炊かれており、参拝する人が絶えません。大仏殿は参拝目的より観光目的の人が圧倒的に多いですが、二月堂は両方を兼ねた人が多い印象を受けます。
人気の秘密は、日本有数の絶対秘仏として知られる大観音(おおがんのん)・小観音(こがんのん)の二体の本尊の存在もあるでしょう。誰も見たことがないため、いわゆる存在すら疑われるような仏様ですが、日本人にはそうした神秘性を好むところがあります。
しかし、善光寺・浅草寺・三井寺本尊と共に日本最強の誰も見たことがない絶対秘仏について、いつかは見てみたいと願う人はたくさんいるはずです。仏様に祈りが通じることをひたすら待ちます。
二月堂北側にある無料休憩所
二月堂の舞台の横には無料休憩所があり、温かいお茶を無料でいただくことができます。とても寒い奈良の冬の参拝には、とてもありがたいふるまいです。内部にはお水取りで使われる巨大な松明も展示されており、興味深い時間を過ごすこともできます。
三が日とも日中は法華堂が開かれており、不空羂索観音を中心とした日本最古の仏教美術空間を味わうことができます。二月堂と法華堂が並ぶ東大寺・上院ならではの贅沢な一時です。
鎖を食べる鹿は珍しい(写真加工してません、本当です)
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
日本人の定番行事も時代と共に変わってきた
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東大寺
初詣
【東大寺公式サイトの案内】 初詣
※二月堂の参拝に条件はありません。いつでも無料で参拝できます。
※大仏殿は、毎年1/1の0:00~8:00は無料で参拝できます。
※1/1の8:00以降の大仏殿・法華堂(三月堂)・戒壇堂・東大寺ミュージアムの
開館(拝観)時間は以下の通りです。
原則休館日:なし
開館(拝観)受付時間:8:00~16:30(11-3月)
おすすめ交通機関:
近鉄奈良線「近鉄奈良」駅下車、東改札C出口から徒歩20分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:東大寺まで1時間20分
JR大阪駅→JR環状線→鶴橋駅→近鉄奈良線→近鉄奈良駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設に駐車場はありません。
※渋滞と駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。
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