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中之島香雪美術館 ~村山コレクションが都心でデビュー

2018年03月25日 | 美術館・展覧会


落ち着いた入口ファザード

大阪の都心の中之島に、朝日新聞の創業者・村山龍平のコレクションを所蔵する香雪(こうせつ)美術館の分館「中之島香雪美術館」がオープンしました。建て替えが進められていた朝日新聞社とフェスティバル・ホールのツインタワーに入居、とても訪問しやすい場所にあります。

オープンを記念して、重要文化財19点を含む日本と中国・朝鮮半島の古美術品を中心とした村山コレクションを一挙公開する展覧会が始まりました。数が多いため5期に分け1年かけて行われます。1回目となる「I 美術を愛して」は、村山龍平とゆかりの深い作品が選りすぐられて展示されます。ぜひ中之島へお出かけください。

中之島香雪美術館は最新の照明技術やガラスを用いています。ガラスはその存在を感じさせないほどに反射や映り込みがなく、気づかずに顔を作品に近づけておでこをぶつける人が多いことでしょう。中に収められた美術作品はとても見やすく、やさしい自然光に包まれているようです。ガラスケースの長さは50mを超え、圧巻の長さです。天井も高いことから面積の大きい絵画作品でも窮屈な思いをせずに鑑賞できます。

美術館が入居する中之島フェスティバルタワー・ウエストは、美術館を除いて1年前にオープンしていました。建物新築時にコンクリートから出るガスが美術品の退色を促進するため、新築美術館はこのガスを取り除く期間が必要となります。そのため建物竣工と同時にオープンできません。

「枯らし」と呼ばれるこの期間は技術向上で短くなっていますが、中之島香雪美術館でも1年かけています。入館料収入が得られない中で維持費ばかりが出ていくため、「枯らし」期間を短縮するさらなる技術向上を期待したいものです。

村山龍平が朝日新聞の経営を軌道に乗せた明治20年ごろ、日本の知識人の間では日本美術の海外流出を憂う声が大きくなっていました。寺や旧大名家などから売りに出された美術品がことごとく、日本ブームに沸いていた欧米人に買われていったためです。村山龍平も海外流出を憂いていた一人で、新聞で危機感を訴えながら、少しでも国内に作品を遺そうとコレクションを始めます。

南宋の画家・梁楷(りょうかい)による「布袋図(ほていず)」は、コレクション最初期の入手品です。村山龍平の思い入れの強い作品です。ふくよかなボディとはアンバランスな、ずる賢そうに表現された布袋様のお顔が、観る者に謎かけをしているような不思議な絵です。なぜか見つめてしまいます。東山御物の一品でした。展示順の最初に登場します。

【公式サイトの画像】 梁楷「布袋図」

原在中の「双鶴図」は、鶴の美しい羽根が凛として描かれた銘品です。とても緊張感があります。伝・周文の「瀟湘八景図屏風」は中国の山河のスケールの大きさを感じさせる水墨画です。中国の雄大な時間の流れもあわせて観るものに印象付けます。「東山遊楽図屏風」は江戸時代初期に京都の人々が遊興にふける様子が生き生きと描かれています。百人百様の着物のデザインがとても印象的です。

茶人としても名高かった村山龍平は、茶道具のコレクションにも愛情を注ぎます。「利休丸壺」茶入は利休の愛用品で、江戸時代に松平不昧によって再興格付けである「大名物(だいめいぶつ)」に認定されています。同じものは絶対に作れないと思えるほど、炎が立ち上るような妖艶な色の変化が円い壺を取りまいています。茶入れなのでとても小さいですが、とても存在感があります。

【公式サイトの画像】 利休丸壺茶入


館内に再現された茶室「玄庵」

神戸の美術館本館に隣接する旧村山家住宅にある茶室「玄庵」が、中之島香雪美術館内に露地と共に再現されています。村山龍平が明治時代に、京都の茶道家元・藪内家にある茶室「燕庵」の写しを、特別な許しを得て「玄庵」として建てたものです。茶室はほとんど一般公開されないため、内部構造やデザインの巧みさを見ることができる貴重なレプリカです。館内は茶室のみ、写真撮影OKです。

本館の展示スペースの関係で展示機会が限られていた作品にも、日の目をあてることができるようになります。これからどんな作品が登場してくるか、とても楽しみです。

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。



新聞王・村山龍平の生涯


中之島香雪美術館
開館記念展「珠玉の村山コレクション ~愛し、守り、伝えた~」
I 美術を愛して
http://www.kosetsu-museum.or.jp/nakanoshima/exhibition/2018_1/

主催:香雪美術館、朝日新聞社、朝日放送
会期:2018年3月21日(水・祝)~2018年4月22日(日)
原則休館日:月曜日
※この展覧会は、他会場への巡回はありません。


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