明るい美術館の建物がさらにピカピカになりました
京都の北部、金閣寺の近くにある堂本印象(どうもといんしょう)美術館が、1年間のリニューアル工事を終えて再オープンしました。入口にカフェが設けられ、混雑することもあった館の前のバス乗り場が拡張されて利用しやすくなっています。印象自らが設計した明るい建物の外壁も、綺麗になってより明るくなりました。
リニューアルオープンを記念した展覧会には、館蔵品だけでなく全国から印象作品が集められました。まさに印象の代表作が勢ぞろいです。
印象が手掛けた障壁画マップが館内に掲示
堂本印象は、1891(明治24)年に京都市で生を受けました。大正時代に帝展に出品した「調鞠図」「木華開耶媛」などで評価を確立し、明るいタッチでエキゾチックな画風の日本画家として活躍します。
京都をはじめ全国の寺社・教会の障壁画も数多く手がけるようになります。宗教心の強かった彼は、仏画や障壁画を描く前に関連する経典を読みこなし、表現の研究に相当の時間を割いていました。東福寺・仏殿・天井画「蒼龍図」、仁和寺・黒書院・襖絵などがよく知られています。
戦後、彼の画風は大きく変わります。風俗画・風景画・抽象画を手掛けるようになります。日本画のように線ではなく、洋画のように色面で表現するようになります。日本画家と紹介しても理解できなくなるくらいの変容ですが、珍しいことではありません。戦後はモチーフや表現がとても多様になり、洋画/日本画と区別すること自体が困難になっています。
【公式サイト】 堂本印象について
印象は1966(昭和41)年、自らの作品を展示するために美術館を設立しました。1991年に美術館と所蔵作品は京都府に寄贈され、現在の京都府立堂本印象美術館となっています。
展覧会は、印象の画業人生を俯瞰できるようになっています。永青文庫蔵「調鞠図」は帝展で特選を得た彼の出世作です。中国の宮廷夫人が蹴鞠をしている様子がとてもエキゾチックに描かれています。正倉院に遺された天平絵画のような趣です。
木華開耶媛
【画像出典】公式サイト 展覧会チラシPDF
「木華開耶媛(このはなさくやひめ)」は印象作品では最も有名な作品の一つです。春の女神が満開の桜の下で春の訪れを楽しんでいる姿は、ボッティチェルリの「春」のように明るいオーラを発しています。とても元気になれる絵です。
椅子による二人
【画像出典】公式サイト 展覧会チラシPDF
「椅子による二人」を見ると、「木華開耶媛」と同じ作者とは思えません。1949(昭和24)年の作品です。まるで敗戦からの立ち直りに向かって社会を勇気づけるよう、団らんする母娘の様子が明るく描かれています。
交響
【画像出典】公式サイト 展覧会チラシPDF
「交響」は、印象が戦後挑んできた抽象画の傑作です。色の鮮やかさの中に、金粉のように繊細な点表現が加えられています。抽象絵画の創始者の一人であるカンディンスキーのコンポジション・シリーズを思い浮かべます。しかしこの絵はれっきとした日本画です。中心で目立つ黒い線模様は墨のように純粋な黒さが強調され、日本的な表現と抽象表現が見事に調和されています。
印象は、画風の変化がとても興味深い画家です。ピカソのようにころころ変わっています。そんな印象作品をたっぷり見ることができます。ぜひ春の京都・衣笠にお出かけください。
バス停も印象美術館のデザインにあわせ変身
立命館大学の通学者による混雑も緩和
こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。
堂本印象のすべてを館が編集
京都府立堂本印象美術館
リニューアルオープン記念展覧会「堂本印象 創造への挑戦」
http://insho-domoto.com/plan/new/current/index.html
主催:京都府、京都府立堂本印象美術館(指定管理者:公益財団法人京都文化財団)、京都新聞
会期:2018年3月21日(水・祝)~6月10日(日)
原則休館日:月曜日
※4/30までの前期と、5/2以降の後期で一部展示作品の入れ替えがあります。
※この展覧会は、他会場への巡回はありません。
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