(1954/アルフレッド・ヒッチコック監督・製作/ケイリー・グラント、グレイス・ケリー、シャルル・ヴァネル、ブリジット・オーベール、ジェシー・ロイス・ランディス、ジョン・ウィリアムズ/106分)
“観たいモノはなるべく観たい時に”という映画ファンなので、未見の衛星放送の録画がいくら増えようが、レンタルショップにも行ってしまいます。ひと月ほど前から再見熱がジワジワと高まってきていたこのヒッチコック作品を借りてきました。数十年ぶりの鑑賞です。
アメリカ時代のヒッチコックで最も勢いがあったと云われる頃の作品で、確かに同じ54年には「ダイヤルMを廻せ!」と「裏窓」も作っています。面白いことに三作共グレース・ケリー主演の作品でした。
南フランスの緑豊かな山々に囲まれた山荘で独り静かに暮らすジョン・ロビー(グラント)。かつて、その手口から“キャット”と呼ばれた名うての宝石泥棒だが、戦時中のレジスタンス活動が認められて服役を免れ、今は引退を条件に執行猶予の身である。
ところが最近、町では彼そっくりの手口で宝石泥棒が連続発生しており、ロビーの山荘にも刑事たちがやって来る。
警察なんか大ッ嫌いだ! かつての仲間達が働いているリヴィエラのレストランに逃げ込むが、彼らもロビーを疑っており、オーナーのベルタニ(ヴァネル)以外、コックもウェイトレスもロビーに冷たい態度をとる。
ベルタニの手引きでカンヌのホテルに潜り込むことに成功。旅行中のアメリカの石油成金の母娘と知り合い、保険屋ヒューソン(ウィリアムズ)の手を借りながら、真犯人=偽者のキャットを捕まえようとするのだが・・・というお話。【原題:TO CATCH A THIEF 】
前年の53年に引退表明したケイリー・グラントを引っ張り出して、引退した宝石泥棒を演じさせるという、ここにもヒッチコックの悪戯心を感じてしまいますが、お相手が“クール・ビューティー”グレース・ケリーですから、引退は撤回せざるをえなかったでしょうな。
時にすっとぼけた表情を見せ、いかしたリゾート・ファッションの50歳。この後の「めぐり逢い(1957)」も含めてグラントのダンディぶりは子供心にも強い印象を残しました。
「真昼の決闘(1952)」、「モガンボ(1953) 」、主演オスカーを獲得した「喝采(1954)」。わずか5年ほどの女優活動の間に、星の瞬きのような輝かしい作品群を残したグレース・ケリー。“クール・ビューティー”らしい美しいドレス姿と共に、今回はカンヌを旅行中のヤンキー娘(←日本で不良の代名詞的に使われる“やんきー”とは違いますゾ!)の役ですので、ビーチ・ファッションも見せてくれます。それがまた超エレガント!
初めての会食の後、別れ際に“ちょい悪オヤジ”のロビーにキスをする。「裏窓」の素人探偵と同じように少しお転婆な感じが私は大好きで、世間で云われる“クール”とは違うイメージをもっています。交通事故で亡くなったのが82年。もう25年も前の事なんですねぇ。
“巻き込まれ型”サスペンスの一つと言ってイイでしょう。プラス、全編風光明媚なリヴィエラの景色が満喫できるお洒落な作品で、刑事との車を使った追っかけでは、当時珍しいヘリコプターによる空撮もやったようです。
刑事の車を巻いた後、ロビーが乗り込む路線バスの客の中にヒッチコックの姿が見られます。その時、グラントの隣に鳥篭を携えた女性客が居て、『おっ!「鳥」の予告か?』と思いましたが、アレは9年後の作品でした。
さて、真犯人は誰か? 警察内部の人間か? 肉体の鍛錬に余念のないビーチクラブの監視人の青年の動きも怪しいが・・・。 実はソレを忘れたために観たくなったんですが、途中で思い出しました。しかし、その黒幕がいたことは忘れておりました。(笑)
泥棒の替わりに黒猫に屋根を歩かせたり、グラントとケリーのラブシーンの盛り上がりに花火を絡ませたり、この辺りもお洒落な演出でした。半世紀前の作品なのに今回借りたDVDには特典映像がついていまして、ソレによると、そのラブシーンには倫理委員会からクレームがついたとの事で、花火の挿入はクレーム解消の意図もあったようです。
特典映像にはヒッチコックの娘や孫が出てきて、グラントやケリーについても語っていました。誰もが気心が知れ、家族のように付き合っていたようです。
ヒッチコック研究家の話では、今作品に出演のフランスの名優シャルル・ヴァネル(「恐怖の報酬(1953)」、「悪魔のような女(1955)」)は英語が全くダメで、カンペを使っても間違うので最終的には吹き替えを使ったということでした。
ジョン・マイケル・ヘイズは、プロットの組立は上手くないがウィットの効いたセリフが得意の脚本家(原作はデヴィッド・ダッジ)とのこと。ヒッチ作品にお馴染みのカメラマン、ロバート・バークスはコレで1955年アカデミー賞で撮影賞(カラー)を獲ったそうです。倫理委員会にセクシーすぎるとクレームがついた場面も、リン・マーレイの音楽によって(ユーモラスな音に変えた為)解消されたシーンもあったとのことでした。映画作りは大変だなぁ。
ハリウッドのデザイナーで、この人以上に有名な人を知らないイーディス・ヘッド女史。彼女のことも特典映像で語られていました。
仕事を始めた頃はデザイナーとしては特別優秀な方ではなかったが、プロデューサーや監督の意向だけでなく、出演者の希望も極力叶える方向で形に出来る頭の良い女性だったとのこと。その類い希なる調整力によって多くの映画人の信頼を得、多くの映画に携わった結果8個のオスカーを獲るまでのデザイナーになったようです。パラマウントのチーフ・デザイナーとなってからは独自のアイディアが幾度も注目を浴び、一般のファッションにも影響を与えたことも多々あったとのこと。トレードマークの黒いサングラスは自身の心を他人から読まれないようにとの意図でかけていたようで、自分を“自信たっぷりの教師”のように見せることの出来た女性だったようです。1981年10月24日、84歳の誕生日を迎える4日前に亡くなりました。
因みに衣装デザインの受賞作品は、「女相続人(1949/白黒)」、「サムソンとデリラ(1949/カラー)」、「イヴの総て(1950)」、「陽のあたる場所(1951)」、「ローマの休日(1953)」、「麗しのサブリナ(1954)」、「よろめき珍道中(1960)」、「スティング(1973)」。
又、本人の言によれば「泥棒成金」が彼女のベストワークだそうです。
“観たいモノはなるべく観たい時に”という映画ファンなので、未見の衛星放送の録画がいくら増えようが、レンタルショップにも行ってしまいます。ひと月ほど前から再見熱がジワジワと高まってきていたこのヒッチコック作品を借りてきました。数十年ぶりの鑑賞です。
アメリカ時代のヒッチコックで最も勢いがあったと云われる頃の作品で、確かに同じ54年には「ダイヤルMを廻せ!」と「裏窓」も作っています。面白いことに三作共グレース・ケリー主演の作品でした。

ところが最近、町では彼そっくりの手口で宝石泥棒が連続発生しており、ロビーの山荘にも刑事たちがやって来る。
警察なんか大ッ嫌いだ! かつての仲間達が働いているリヴィエラのレストランに逃げ込むが、彼らもロビーを疑っており、オーナーのベルタニ(ヴァネル)以外、コックもウェイトレスもロビーに冷たい態度をとる。
ベルタニの手引きでカンヌのホテルに潜り込むことに成功。旅行中のアメリカの石油成金の母娘と知り合い、保険屋ヒューソン(ウィリアムズ)の手を借りながら、真犯人=偽者のキャットを捕まえようとするのだが・・・というお話。【原題:TO CATCH A THIEF 】
前年の53年に引退表明したケイリー・グラントを引っ張り出して、引退した宝石泥棒を演じさせるという、ここにもヒッチコックの悪戯心を感じてしまいますが、お相手が“クール・ビューティー”グレース・ケリーですから、引退は撤回せざるをえなかったでしょうな。
時にすっとぼけた表情を見せ、いかしたリゾート・ファッションの50歳。この後の「めぐり逢い(1957)」も含めてグラントのダンディぶりは子供心にも強い印象を残しました。

初めての会食の後、別れ際に“ちょい悪オヤジ”のロビーにキスをする。「裏窓」の素人探偵と同じように少しお転婆な感じが私は大好きで、世間で云われる“クール”とは違うイメージをもっています。交通事故で亡くなったのが82年。もう25年も前の事なんですねぇ。
“巻き込まれ型”サスペンスの一つと言ってイイでしょう。プラス、全編風光明媚なリヴィエラの景色が満喫できるお洒落な作品で、刑事との車を使った追っかけでは、当時珍しいヘリコプターによる空撮もやったようです。
刑事の車を巻いた後、ロビーが乗り込む路線バスの客の中にヒッチコックの姿が見られます。その時、グラントの隣に鳥篭を携えた女性客が居て、『おっ!「鳥」の予告か?』と思いましたが、アレは9年後の作品でした。
さて、真犯人は誰か? 警察内部の人間か? 肉体の鍛錬に余念のないビーチクラブの監視人の青年の動きも怪しいが・・・。 実はソレを忘れたために観たくなったんですが、途中で思い出しました。しかし、その黒幕がいたことは忘れておりました。(笑)
泥棒の替わりに黒猫に屋根を歩かせたり、グラントとケリーのラブシーンの盛り上がりに花火を絡ませたり、この辺りもお洒落な演出でした。半世紀前の作品なのに今回借りたDVDには特典映像がついていまして、ソレによると、そのラブシーンには倫理委員会からクレームがついたとの事で、花火の挿入はクレーム解消の意図もあったようです。
特典映像にはヒッチコックの娘や孫が出てきて、グラントやケリーについても語っていました。誰もが気心が知れ、家族のように付き合っていたようです。
ヒッチコック研究家の話では、今作品に出演のフランスの名優シャルル・ヴァネル(「恐怖の報酬(1953)」、「悪魔のような女(1955)」)は英語が全くダメで、カンペを使っても間違うので最終的には吹き替えを使ったということでした。
ジョン・マイケル・ヘイズは、プロットの組立は上手くないがウィットの効いたセリフが得意の脚本家(原作はデヴィッド・ダッジ)とのこと。ヒッチ作品にお馴染みのカメラマン、ロバート・バークスはコレで1955年アカデミー賞で撮影賞(カラー)を獲ったそうです。倫理委員会にセクシーすぎるとクレームがついた場面も、リン・マーレイの音楽によって(ユーモラスな音に変えた為)解消されたシーンもあったとのことでした。映画作りは大変だなぁ。
ハリウッドのデザイナーで、この人以上に有名な人を知らないイーディス・ヘッド女史。彼女のことも特典映像で語られていました。
仕事を始めた頃はデザイナーとしては特別優秀な方ではなかったが、プロデューサーや監督の意向だけでなく、出演者の希望も極力叶える方向で形に出来る頭の良い女性だったとのこと。その類い希なる調整力によって多くの映画人の信頼を得、多くの映画に携わった結果8個のオスカーを獲るまでのデザイナーになったようです。パラマウントのチーフ・デザイナーとなってからは独自のアイディアが幾度も注目を浴び、一般のファッションにも影響を与えたことも多々あったとのこと。トレードマークの黒いサングラスは自身の心を他人から読まれないようにとの意図でかけていたようで、自分を“自信たっぷりの教師”のように見せることの出来た女性だったようです。1981年10月24日、84歳の誕生日を迎える4日前に亡くなりました。
因みに衣装デザインの受賞作品は、「女相続人(1949/白黒)」、「サムソンとデリラ(1949/カラー)」、「イヴの総て(1950)」、「陽のあたる場所(1951)」、「ローマの休日(1953)」、「麗しのサブリナ(1954)」、「よろめき珍道中(1960)」、「スティング(1973)」。
又、本人の言によれば「泥棒成金」が彼女のベストワークだそうです。
・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて、クラシック好きなら】 

ヒッチコックが予想だにしなかったのは、ロケがきっかけで大切なグレースがモナコ国王に奪われてしまったこと。「北北西」や「マーニー」は是非彼女で作りたかったでしょう。
ブログ開設当初の手抜き記事ですが、宜しかったらどうぞ。
http://okapi.at.webry.info/200510/article_101.html
観光映画としても記憶に残る映画でした。
それと、シャルル・ヴァネルが出ていたのはすっかり忘れていました。クルーゾーの二大傑作の合間の出演だったんですね。
ヒツチコック映画は大好きです。
ヒッチコックご本人が顔を出す場面を探すのが楽しみでした。
初期の『三十九夜』『バルカン超特急』などに始まり、『鳥』や『サイコ』に至るまで、盛り沢山の映画がキラ星の如く瞬いていますね。
中でも私の最も好きな作品は『裏窓』です。
カメラが主人公の部屋から出ていかないなど、ヒッチコックの遊び感覚が楽しい映画でした。
グレース・ケリーが出ていることでも私も大好きです。
ところで、私の記事は肝心の部分のネタ(真犯人が誰か?)は書かないようにしています。特にこのようなミステリー絡みは。
さっきお邪魔しましたら、アスカパパの記事には私が伏せていたネタが書かれていましたので、TBは保留させていただいて宜しいでしょうか。どこかに『ネタバレ注意』と明記されたら助かります。
それと、使われている画像が、「暴力教室」のようですが・・。
私の記事はネタバレが多いと思いますので、今後は、十瑠さんのポリシーを充分ふまえた上で、TBとコメントを差し上げるようにします。
なお、TB返しなどはお時間のある時で勿論結構ですし、必ずしも気を遣って頂かなくてもかまいませんので、よろしくお願いします。
それから、ご指摘ありがとうございます。
「暴力教室」の画像になっていますか。さっそくチェックします。