月下美人 (サボテン科、夏の夜、直径15センチほどの白色の香のよい花を咲かせる)
月下美人
月下美人
夏の夜空の月の光をあびて
たった数時間だけ咲く花
神秘的ですよね
花はほんの数分だけ咲く
とても貴重な花だと聞いた覚えが有ります
ココから始まる物語
逢えない二人を始めます
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彼女は貧しい家に産まれ
わずか12歳位で
大きな屋敷に下働きに行かされた
戦争が始まる少し前の話し
その屋敷には彼女と同じ位の年齢の大事な跡取り息子がいた
でも下働きの彼女が彼の存在を知るよしも無く
1番下で働く彼女が
大きな屋敷の誰かを知る事を許されるはずもなく
だがある晴れた日
その日は彼女の月に一度の休日
まだ幼さが残る彼女はひとり町へ出る事もできず
お屋敷のまだ行った事が無い場所へ
ひとり探検気分で進んで行った
それが二人の出会いとなる
庭のずっと奥に進むと
広い芝生が敷き詰められた場所に出た
そこに彼がいた彼女は彼が誰か知らず近づいて行く
少しづつ・そ~っと
その時だった
その時だった
彼が人の気配に気付き振り向いた
お互い顔見合せビックリ
ふたりは見つめ合い沈黙
彼が口を開く「君は誰?」
彼女は「この屋敷で働いています」ッと答えた
不思議な事に二人は始めて会った気がしなかった
何故かお互いに懐かしいと思ってしまった?
互いに「何をしているの」と聞くことも無く
彼女は彼がしている事を何も言わず見ていた
いつしか時間(とき)がながれ庭に夕日が差し込む
結局二人の間には会話も無いまま・彼女は戻ろうとした時
彼が彼女に話し掛けた
「ねぇ君、僕の・・・この花が咲くまで世話をしてくれませんか?」
「ねぇ君、僕の・・・この花が咲くまで世話をしてくれませんか?」
彼女は首をかしげた
彼は沢山の花の種を
植木鉢に植えていたのに
何故ソノ花だけをを育てて下さいと言ったのか?
彼女は彼からの突然のお願いに何故私に?!と言う思いで彼を見た
彼は彼女に話しを続けた
「僕は病気で、明日から病院へ入院する事に成ったんだ、他の花は水をまくだけで良いんだけど、この花はとてもデリケートで手入れが難しいから・・・君にお願いできないかな?」
「この花は不思議な花で、夏の真夜中の満月の日に、たった一度だけ花が咲くんだ・・・、だから君が世話をしてくれると安心して入院できる・・・」
彼「この花は日のあたる昼間に外にだしてはダメなんだ、だから君にお願いしたい?」
娘はそれを聞いて花を預かる事にした
彼はありがとの言葉と
「この花が咲く時、君が僕を思い出してくれるならもう一度・・・・」
彼女は花の事は何も知らないけど
彼の事はなぜか以前どこかで・・・
それが知りたくて彼のお願いを引き受けた
月日が流れ世の中は戦争と言う名目で人と人の傷つけ合いが始まった
彼女が働いていたお屋敷は軍人達に占領され
奉公人は男を残し何も与えられず全員里に返された
自分の所有物さえ返してもらえず
彼女も他の女性と同様に田舎へ帰る事に成ってしまった
それでも彼女はただひとつ
あの時の植木鉢だけはこっそり持ち出していた
それから戦争は終わり長い月日が流れたが植木鉢にはまだ花の蕾は生まれない
一度会っただけの彼にいつしか小さな植木鉢を通し
彼女は彼に愛しさを感じていた
そんなある朝の事
小さな植木鉢に蕾を見つけた
彼女は嬉しくて涙が一粒小さな蕾に落ちた
小さな蕾は月に誘われ日に日に大きく成長していった
彼女はソレを見て毎夜真夜中に月に向かい祈りを捧げた
もう一度彼に逢いたい
それから何日の月日が経ったろうかこの夏1番綺麗な満月の夜
月の女神が彼女の願いを聞きとどけてくれたかの様に
綺麗な月の光に反応するかの如くゆっくりと花が咲いた
その時彼女は花の光に誘われる様に遠くに人影を見つけた
もう何十年待ち続けただろうか
彼女はその人影に涙を流しながら歩み寄った
するとその人影は
「待たせたね、君に会いたかった」と一言彼女に声をかけた
その瞬間まばゆい光の中に包まれたふたりは光と共にゆっくりと消えていった・・・
その後彼女を見た者は誰も居なかった・・・
不思議な花・月下美人・
その花は何年かに1度だけ
真夜中の輝く満月に誘われて
花が咲く〆