昼間の鎧をはずした
あなたの背中を眺めている
そこは
わたしの見知らぬ場所でもある
窓からの西陽が斜めに射していて
あなたの肩をオレンジ色に染めている
―― 枯葉の落ちる音さえ聞こえてきそうな静かな静かな日暮れどき
あなたを捉えているものは何なのでしょうね
窓・屋根・樹木・風
たぶん街でもなく 空でもなく
そのもっともっと向こう
地平線の彼方
もしかしたらバビロンの河のほとり
または記憶という海の
底の底
一番深い暗闇に沈んでいる廃船のこと
おそらくわたしにはいつまでたっても見えないもの
――限りなく遠いところにひとは行くことができる
パタン!
そそっかしい私が
うっかり小さな音をたてると
あなたは振り向いて笑う
どうした?
そしてあなたは
あっちからこっちへと
戻ってくる
短い旅を終えた人のように
少し疲れて
けれどいつも
このうえない笑顔で
白い家の日暮れどき
わたしとあなたの永遠の距離のはざまに
世界はやさしく傾(かし)いでいる
引力の法則にわずかにはずれた角度で
空にはつつましい星の電灯が灯りはじめた