新・アドリアナの航海日誌

詩と散文、日記など。

あなたに

2023-09-06 05:18:50 | ポエム
あなたに

せめて一篇でも
どこにもないうつくしい詩を
とどけたいとおもうのに

せめて一篇でも
だれよりもやさしい詩を
おくりたいとおもうのに

書ききれない
書いては消し消しては書く
思いを告げきれない恋文のように

きっとどこかに
置きわすれてきたのだろう
言葉のつまったたいせつな箱を

夕べの山畑でキジが鳴いた
夕陽のかがやくなか
声をかぎりに

そんなふうに伝えられたら
たった一行でいい
そんなふうに綴ることができたなら

あなたに贈るだろうに
この地上で偶然にも
おなじ時を生きているあなたに
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