そのころ
白衣を着て
わたしは病院の窓口にいた
あなたは
写真集を売って歩いていた
まだ出会っていなかった頃
イラクで
爆弾が炸裂した
子どもが
飢え死にした
詩を書いていたわたし
詩をまだ書いていなかったあなた
イラクで
死んだ子どもには
会ったことはなかった
生涯
会うことはなかった
飢え死にはしなかったが
爆弾も浴びなかったが
人生の吊り橋を
うまくわたれなくて
つまずいてばかりいた
あなたも
わたしも
そのころ・・・
イラクで子どもが死んだ
砂漠の黄色い風の中に
眠っていたあの子の
ハタハタと翻っていた
青い服の切れ端
何もかもが
ひとつにつながる
生きるという
今日の風の中で