音信

小池純代の手帖から

十喩詩 2 かげろふ

2020-01-17 | 日記
空海「十喩詩」より

   二 詠陽燄喩

  
  遅遅春日風光動 陽焔紛紛曠野飛
  挙體空空無所有 狂兒迷渇遂忘帰
  遠而似有近無物 走馬流川何処依
  妄想談義仮名起 丈夫美女満城囲
  謂男謂女是迷思 覚者賢人見則非
  五蘊皆空真実法 四魔與仏亦夷希
  瑜伽境界特奇異 法界炎光自相暉
  莫慢莫欺是仮物 大空三昧是吾妃



翻案八首
    かげろふ

はるの日の風の光のゆるゆるとふるふると野にもゆるかげろふ

そらのほかになにもなけれど迷ひつつ狂ひつつ子は帰らざりけり

走る馬流るる川のひとすぢを掬ひてむすぶむすびて放つ

うつろひのうはの空吹く風のうろそこにひしめくうつくしきひと

たをやめもうすものとしてみやびをもうすものとしてゆらりぬぎすつ

きよらなるそらのまなこにみづみづとほとけほどけてまものたまもの

かげろふもかげもほのほもふたつなきかたちにたちてたちてくづるる

かりそめのそめはそむしむしみとほりしみわたりのちすみわたるかな






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