音信

小池純代の手帖から

雑談50

2022-11-03 | 雑談
高橋睦郎『狂はば如何に』(‎ KADOKAWA 2022年10月刊)、
「百坂も見ゆ」より四首。※漢字は正字から新字に打ち替えて引用。


 雪降れば必ず思ふ手握りて溶け去りてのちのつめたさのこと
         *手:た

 折口の大人宣らしけり手握りて溶け去りし雪の名残りぞ歌は
    *大人:うし

 燃え易き老い穏めむ称へごと俊成九十臨終のことば
       *穏:おだや 俊成:しゆんぜい 九十:くじふ 臨終:いまは

 「めでたき物」「えもいはぬ物」「おもしろい物」雪を食うべて消えし命火
                              *命火:いのちび


       †

〈雑談47〉で触れた迢空の雪と俊成の雪の詩歌の本格版。

集中の一首一首が作者の詩歌史および人類の歴史の窓です。
覗き込めばその深淵に、振り仰げばその絶顚にくらくらします。








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