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この本は暴力とジェンダーについて書かれたものに、大震災以後の上野先生の講義録を加えたものだ。
そこに弱者の生きる道が説かれている。
中でも「津軽てんでんこ」についての
解釈は心が洗われる思いだ。
どう私が説明しようと著書の言葉に勝るものはないと思う。
怠慢そのものだが、著書からそのまま引用したい。
「津軽てんでんこは逃げるが勝ち、他人の事は構っていられない。てんでんばらばらに逃げなさいと言う意味ではない。
家族も友人も、それぞれ自分の判断できっと生き延びてくれる。だから私も自分のことだけ考えて生き延びよう、きっときっと再会出来る、という信頼と期待の言葉だと」
綺麗事過ぎると批判する人がいるかも知れないが、私はすんなり納得出来た。
人はひとりひとりで生きる。
相手の自発性を損なってはいけない。
しかし、人は人々として生きるものだと私は思う。
最終的に人が支え合わねば生きられない世の中である。
てんでんに逃げた人々も、後に寄り添い助け合った事だろう。
上野先生の著書は冷たい理知の世界でなく、理知に裏付けられた暖かい情熱が込められてると思う。