見出し画像

読書の森

存在証明

記憶だけを頼りに慣れない道を歩いている時、思いもかけない風景に出会った事ありませんか?

検索機能を使えば直ぐに目的地を見つけられる今日、知らない場所を彷徨くといつ危険な目に遭うかわからない今日、それでも無駄な寄り道のような散歩や山歩きが好きな方は結構多いみたいで嬉しくなります。







脚が悪い事もあって、長歩きが出来ぬ私ですが、自分がその景色の中に溶け込んで透明人間のようになれる場所を探すのが大好きです。
神戸市郊外の町は宝物のような自然がかなり多い場所でした。
これは冬枯れの頃、偶然見つけた人気の無い場所で撮った写真であります。
その一つは大きな池のある公園でした。

幼い頃の東京は自然豊かとは言えませんでしたが、結構焼け残った西洋館とか、ひっそりと佇む荒れ寺とか、子供の好奇心をそそる自然や場所が残ってました。
そんな場所であても無い空想に耽ったり、本だけで知るロマンスを夢みたりするのがとても好きでした。その時私と言う存在は空想上のどんな場所にでもいる事が出来たのです。もはや今の大都会はカメラで覆い尽くされて、影のある場所はありません。寂しいです。

本当にお恥ずかしいのですが、BABAになっても、人一人居ない場所で夢見てしまいました。ずうっと会えない昔の恋人(?)の面影、と言ってもその面影は50年近く前の若さで、実際には爺さんなのにその姿が全然浮かばないのです。

もし万一、面影の人と偶然会えて話かけてきたら、私はその人と分かるのでしょうか?疑問であります。


個人のアイデンティティが希薄な今日、人がその人である存在証明とは一体何なのでしょう?


こんな事考えたのは、最近読み直した手塚治虫の『はるかなる星』が影響しているのです。

それは宇宙空間を人間が行き来出来る未来の話。
惑星の厳しい自然環境に合わせるため、宇宙開拓士は自分の肉体と脳髄を別別にして作業した。つまり脳はロボットの体を持ち、ロボットには電子頭脳を嵌め込んだ。
ところがある日そのロボット(つまり肉体)が脱走してしまった。
地球行きの輸送ロケットに紛れ込んで乗って行った。惑星間の旅行はロボットに無理で地球に戻って1週間で死ぬと言う。
この肉体の持ち主のロボット(頭脳は人間)は驚き慌てて地球に戻るのである、、。

そこからの展開が面白い。手塚治虫は近未来を見事に予測出来ているみたいです。

注意していただきたいのは、人間の脳細胞の機能を有するロボットではなく、本体がロボットに自分の肉体を預けてる人間なのです。
ロボットはコンピュータを脳に入れているだけです。動かないと身体の機能が衰えるために入れてるだけ。
このロボットが何故自分の意志で危険な脱走を試みたのでしょうか?
事情を知らない人間からは、ロボットが本人としか見えませんね。
一体、本人が自分であるという証明はどこでとるのでしょうか?
答えは原作を読んでのお楽しみであります。

唐突にスマホ(仮に人工知能と捉える)と使用者(人間)の関係を連想してしまいました。



どんなスマホも同期にする機能がついている。とても便利なものです(友人同士に限らず保護者が子供を見る時など)が、もしハッキング乗っ取りなどに使われたらどうするのだろう、と思ってしまいます。

自分の存在を証明するのがスマホだけとすると、全く異なった自分が別にいたという場合があるのではないか?とも。
例えば「なりすまし」とか。
、、、、
ひねくれた、ネット弱者のBABAはスマホの電源を切って、ある冬の昼下がり透明人間になって、好きな人(?)の夢を見つつ見知らぬ池を陶然と眺めたのです。
ところがその時、ほんわかしてる自分の背後に忍び寄る足音が聴こえた。

「どうされました?道分かりませんか」
気分を壊された私は「ちょっと散歩してただけです」と憮然として元来た道を引き返すのでした。
結局一応現役世代の方から見える自分が(即ちBBA)自分の存在証明になるのでしょうね。

世知辛い世の中であります。そこで今は部屋の中で夢想しております。トホホ。




読んでいただき心から感謝いたします。

コメント一覧

airport_2014
@atelier-kawasemi ホントに文学者は近未来の預言者ではないか、と思う事が私もあります。
読書家の翡翠さんも実感されてるのですね❣️
だんだん壊されてしまう美しい自然や自然の生き物、共存していく手立てはないものでしょうか?
翡翠さんの故郷はたしか九州ですよね。九州から大阪、大阪から裏日本の金沢、自然が全く異なるし、厳しい世の中になりましたが、元気でいてくださいね。生きていなきゃ厳しい事も楽しい事も味わえないですから^_^
atelier-kawasemi
こんにちは(*^-^*)

高校生の頃、手塚治虫にはまってました。
逝去されて数年だったので、関連本がたくさんでていて
その中に手塚氏の小言?が載っておりました。

高速道路のようなものを描いたら荒唐無稽だと
ののしられ、数十年後 高速道路が出来たら
みな黙ってしまったという内容でした。

風の谷のナウシカでも、カビの胞子でマスクを付けないと
生きていけないとか、子供の頃はダークなメルヘンだと思っていましたが、花粉症ピークの今は、マスクなし、花粉眼鏡なしでは
歩けません( ノД`)シクシク…
個人的にナウシカの季節と呼んでいます。

マンガ家や、小説家の描く近未来には
驚かされます(^-^;
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「エッセイ」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事