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昭和58年は私にとっては昭和の円熟期という印象があります。
日本の総理大臣が中曽根康弘、アメリカ大統領がレーガン、お二人はとても仲が良くて、日米の蜜月期でした。
それに、中国主席が鄧小平でソ連書記長がアンドロボフ、世界情勢も(その頃の印象ですが)とても安定していました。
この年の春、舞浜に東京ディズニーランドが大々的にオープンして話題を呼びました。
この豊かな年に、一大ブームとなったのが、NHK朝ドラ『おしん』です。
何の肩書もない貧しい少女が、過酷な運命に耐えながら負けることなく努力して成功をつかむ物語です。
出自には関係なく、耐え抜いて頑張れば必ず報われるという希望が持てた時代だったのですね。
主演の小林綾子が清純で健気なおしんにぴったりで、視聴率が何と60パーセントを超えたドラマでした。
勤めてた会社の先輩で、苦学して大学を出て頑張って会社に入った、かなりユニークなおじさんがいました。
その人が『おしん』の大ファンだったのです。
ビデオ録音(その頃ですからテープ)して、大事にしていたそうです。
ところが、お子さんがそのテープに別の番組を録音してしまいました。
そこまでは、よくある失敗談なのですが。
ところが、先輩はこの顛末を会社で本気で怒りながら課員に話してしまったのです。
その頃はドラマの再録CDなど販売されていませんので、大好きな『おしん』が見られず頭に来ちゃったのでしょう。
でも「自分の子供の失敗を喋るなんて」としらけてしまいました。
本当に真面目で努力家の方なのですが、全然冗談は効かないし、課員が恋バナなど話始めたら非常に怖い目で睨むので、正直バカにしてました。
しかし、一生懸命頑張りすぎたのでしょうか、在職中に病気で亡くなられました。
その時はもっと親切にしてあげれば良かったと後悔いたしました。
『おしん』の思い出すと、何故か可愛い小林綾子の顔とだぶって全然可愛くないそのおじさんの顔が浮かびます。
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外出した帰途、美しいお月様が出ていました。
満月は明日なのですね。
名月とはよく言ったものです、月見は秋が一番なのでしょう。
もうすぐ木枯らしが吹くそうですが、玲瓏とした秋の夜の月でした。