読書の森

私だけが知っている



金山梨花が亡くなって16年経つ。
16年の月日を経て、正木敬吾と藤野冴子はやっと再会した。

大学時代、二人は愛し合っていた。
そのため、敬吾は仲の良かった梨花を振ってしまった。

梨花はコケティッシュな感じの魅力的な女性である。
見た目だけなら梨花を選ぶだろう。

しかし、敬吾は同級生の冴子に講義のノートを借りた時、彼女の主題を把握した書き方に強い感動を覚えた。
この人と思考経路が同じだという親近感がわいた。

学生時代の冴子はスッピンでジーパンを着用した色気のない女だったが、話の仕方に何とも言えない情緒があった。
話せば話すほど、敬吾は冴子に惹かれ、逆に梨花がつまらない女に見えてきたのである。



今、敬吾の目の前にいる冴子は人妻として一皮剥けた落ち着きを漂わせていた。

「なあに、真相が分かったって?」
ちょっと物憂い顔で冴子は問いかけた。

休日の午後のカフェテラスは柔らかい日の光が差しかけている。

「16年前梨花が崖から落ちて死んだのは僕たちのせいじゃないって事さ」

今さら、それが分かってどうなるものでもない。

しかし、T神社の初詣で梨花が死んだ事件は二人を引き離し、世間知らずな性格に深い傷を作ったのである。

読んでいただき心から感謝します。 宜しければポツンと押して下さいませ❣️

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