「秋立つは水にかも似る」と申しますが、今年の秋の始まりは何に似てますか。
私、散歩途中で見事に白い曼珠沙華を見て浪漫を感じました。
本日は昔の作品で、戦国時代の秋が舞台になったものを紹介します。
お恥ずかしいですが、又お付き合い下さいませ。
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戦国の世も終わりを告げようとしていた。
飛騨の国の奥深い山城の一角に、人目を避ける様な紫姫の住まいがあった。
姫とはいえ、城主戸田泰昌の実の娘ではない。
泰昌の兄、先の城主戸田泰清と正室佐代子の忘れ形見であり、泰昌の養女として育てられた。
姫は木立に囲まれた離れの居室で、罪人さながらに人から隔てられて暮らしいた。
戸田城下は勿論、城内に於いても紫姫の存在を知る人は殆ど居ない。
世間から忘れられた事さえ姫は自覚していない。ひっそりとと言うより、生まれついての自然児のように山奥に住んでいた。
紫姫は娘盛りの15になったというのに、村の童のように裏山に登り、花を愛で、虫と遊ぶ事を止めなかった。
紫姫の外見も姫君という身分に凡そ相応しくない。
世間から忘れられた事さえ姫は自覚していない。ひっそりとと言うより、生まれついての自然児のように山奥に住んでいた。
紫姫は娘盛りの15になったというのに、村の童のように裏山に登り、花を愛で、虫と遊ぶ事を止めなかった。
紫姫の外見も姫君という身分に凡そ相応しくない。
彼女は動作が機敏で、よく光る眼差しと艶やかな小麦色の肌を持つ。
この山猿の様な娘をよくよく注意して見ると、如何にも利発そうな表情を示すのに気がつくだろう。
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生活の不自由が無い様に、忠実な下男と下女が付けられてはいるが、城下から全く隔離された。
姫から城へ出向く事は出来ず、城からの使いに言伝てするだけである。
姫はただ一人の姫付きの家臣、高井飛雄馬を通じて外界と接触していた。
先の城主のたった一人の忘れ形見を、人目につかせないように山中に閉じ込めた形にしてるのは、戸田家城主の命による。
この山猿の様な娘をよくよく注意して見ると、如何にも利発そうな表情を示すのに気がつくだろう。
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生活の不自由が無い様に、忠実な下男と下女が付けられてはいるが、城下から全く隔離された。
姫から城へ出向く事は出来ず、城からの使いに言伝てするだけである。
姫はただ一人の姫付きの家臣、高井飛雄馬を通じて外界と接触していた。
先の城主のたった一人の忘れ形見を、人目につかせないように山中に閉じ込めた形にしてるのは、戸田家城主の命による。
というより重臣達の配慮がある。
幼い女性の姫に叛乱を企てる野心もある訳がないのに、何故これほど蔑まれ、疎んじるのか?
このように姫を処遇するのは、叔父である城主の本意ではない。
奥方の波子が、「姫にある重要な事実を知らせぬ」様に画策した結果となった。
真実とはいつの世も残酷さを含む。
実は姫の両親は城下の人に決して知らせてならぬ最期を遂げたのだった。
つまり、戸田城主とその妻はお互いの刀で差し違えて死んだのである。
満月の美しい晩、突然紫姫の母が傍の夫を自分の懐剣で何度も刺した。
息の残る夫は溢れる血で目が見えぬまま、「賊だ!佐代子早く逃げろ」と叫んで枕元の刀で傍の賊(実は自分の妻佐代子)を袈裟懸けに倒した。
丁度その時紫姫は、乳母の懐で絹の夜着にくるまれスヤスヤと眠っていた。
凄い程冴え冴えした月光の下、開け放たれた寝間の純白の布団は真っ赤に染まって、仲の良かった夫妻は朱に染まり、目を見開いて亡くなっていた。
丁度その時紫姫は、乳母の懐で絹の夜着にくるまれスヤスヤと眠っていた。
凄い程冴え冴えした月光の下、開け放たれた寝間の純白の布団は真っ赤に染まって、仲の良かった夫妻は朱に染まり、目を見開いて亡くなっていた。
注:この物語は全くの空想で事実ではございません。