もうすぐコヨーテさんが大きな感銘を受けた作品『おおかみこどもの雨と雪』の発売日となります。というかヨドバシとかでは発売日より一日早く売り出すのが通常ですのでフラゲする人はいるんじゃないでしょうか。
コヨーテさんはさっきamazonから「明日商品到着」のメールが来ました。
そこで、いつか予告したおおかみメモの公開をします。
メモに書いたこと以外にも、特に、「ここはコヨーテさんはこう見ている」とか、「ここは特に注目して!」とか、「この場面の意味を考えて」という場面を書いていきます。
とりあえず劇場で
27回(2013年2月18日現在)観た実績を持つ男の意見として受け取ってください。
あ、完全にネタバレだからまだ見てない人はとりあえずレンタルでもかまわないからさっさと
見ようし。(甲州弁)
とりあえずこの作品を見ていない人には、次に挙げる人はいろいろ思うところがあるんじゃないかと思うのです。
1.子育てを終えた
2.ペットを、しっかり最期を看取るまで育てた あるいは 傷ついた野生動物を治療し野に帰した
3.親元を離れ、一人暮らしをした
以上の人には特にオヌヌメします。
コヨーテさんは2と3に該当します。
さぁ、さっさと鑑賞して分かち合う
じゃん!(甲州弁)
基本作品に出てくる順番に書いたと思うけど、ずれていたらごめんなさい。
オープニング~彼の秘密を知る
・冒頭の花が花畑の中にいるシーンは、小説中では花の夢の中だということが描かれています。
彼に出会う前に見た夢とのこと。
・彼との出会いのシーン。埃なのか何なのかわからないが光り輝いて
キラキラしているように見せています。
・そして
階段で語りかけるシーン。後に子供(雪と草平)にも同じく階段で語りかけるシーンがあります。いずれも出会ったばかりのシーンはいい印象ではないということが共通していますね。
・「
勝負服」を選ぶ花。ここで選んだ服は、後に(というかオープニングでも)出てくる「花の夢のシーン」の衣装でもあります。
・河原の道を二人並んで話すシーン。コヨーテさんは基本こういうシーンは大嫌いなのですが、なぜかこの作品は笑顔でこのシーンを見ることができます。なんでや?
・自分がすごく
興味を持ったことを饒舌に話す彼。後に雨にも受け継がれていることがわかります。
・初めての夜を越えた花がなにがしかを思うシーンは、原作では描かれていますが、「絶滅」という言葉を聞いた花がとある
決意をしたシーンでもあります。
二人の生活~雪の誕生
・この場面は淡々とBGMが流れて二人の生活が流れていきますが、この曲は秀逸だと思います。コヨーテさんは
サントラだけで泣ける程重症になってしまいました。特に花がつわりで苦しんでいる辺りの、
ベー音が入ってくるくらいからが特に好きです。
・
「おいだれ焼き鳥」と「キジうどん」の対比。それぞれ彼と花の「ポカーン」の表情が対になっています。ちなみにオーラスで再びおいだれ焼き鳥が出ますが、これは(いい意味で)反則だと思います。
・妊娠がわかるシーンで
風に吹かれるカーテンが映っていましたが、なんとなく雪の告白シーンのカーテンにも通じているかも。
・これは以前もこのブログで記事にしましたが、
お腹が大きくなった花がぬいぐるみを作る手を止めて、なにがしか考えるシーン。ここでエンディング曲の「どんな顔してるかな どんな声をしてるの」ということを考えていたのでしょう。
・「
大きくなるまで見守ってやろう」この言葉はラストの方の「子供たちをちゃんと育てた」につながっています。
彼の死~引越しの決断
・彼の死。これはかなり
受け取り方に男女差があると思います。結構このシーンで女性だけがすすり泣いている印象です。現にコヨーテさんはこのシーンではあまりグッとはきません。すべての男性がそうとは思いませんが、逆に、「俺たち男って、肝心なときに頼りないんだよな」と思ってしまうコヨーテさんであります。
・幼少のころの子供たちのシーン、ここは正直軽く流す程度でいいと思います。ただ「お母さんは大変」ということがわかれば十分かと思います。
・雨が初めて変身を見せるシーン(雪と並んで座って、ぶるぶると頭を振るう)ですが、ここでは
雨の耳がオオカミのものと人間のものと両方描かれています。「まるで迷っているようだった」という言葉とセットになります。
・「どちらでも選べるように」の時の朝日は、雨と花の別れのシーンの
朝日とつながっているように思います。『おかあさんの唄』の歌詞でいうところの「
新しい朝」です。
新しい土地での生活~収穫
・「土足でいいっすよ」といわれたがしっかり靴を脱いでいる花、ガマ口を使っている花、割烹着の花に
萌えろ!
・自転車を押して「よいしょ」と上っているとき、収穫したものを届けに行った時に免許を取ることを決意した?
・紙芝居を作ったり、ツルリンドウの絵で、花の
画力の高さを知ることができます。
・「おおかみってどうしていつも悪者なの?」雨は身体面ではともかく、あの年齢で
精神面ではかなり成長の早いことが伺えます。
・「
お母さんはオオカミの味方」と、のちの花と草平との会話「
別に嫌いじゃない」「
私と一緒」の対比。この二つの場面で心境の変化は?
・「私たちこれからどうなるの?」不安なときに子供は
手いたずらをしますが(コヨーテさんもそうだった)、よく描けています。
・「お父さんにもっといろいろ聞いておけばよかった」のところの「
お父さん」を花の父親と解説しているサイトがありますが、個人的には「お父さん」は彼を指していると思います。そうすれば雪の語りにあった「どうやって育ったか聞きそびれてしまったのを後悔しました」に対応してくると思います。
・韮崎のおばちゃんが種芋を持ってくるとき、花の湯飲みに
茶柱が立っています。よく見て。
・「土からやり直す」。これは「今まで持っていた思いは一度リセットしろよ」という意味でもあると思います。ちなみに一応コヨーテさんは農業をやってる家の倅としてわかりますが、長年畑を使っていないと土がダメになってしまいます。土も生き物です。よく深いところから耕して、酸素を混ぜてやらないと土は生き返りません。あと韮崎がジャガイモを半分に切っていましたが、ジャガイモはお分かりの通り丸いのでそのまま埋めても地上だけじゃなく地中にも芽が伸びてしまうことにもなります。地上にだけ伸びないといけないのです。「切り口を下にして」とはそういうワケです。あとググればわかりますが畝(うね)っていうのは畑で作物を埋めるために一段高くなっている部分です。「うねうね」の語源でもあります。コヨーテさんの故郷では、「畝を作る」ではなく「畝をなう」と言います。
ツイッターじゃないよ。
・結構強引ではありましたが、
韮崎なりの愛(と言っていいのかな)の告白なのかも。
・
イナカの農家は結構重機持ってるよ。
・花は韮崎に彼の姿を重ねたのかも。しかし、「
笑うな」と命じた
韮崎と「
不謹慎じゃない」と
笑うのを許可した彼とが対になっています。
雪原を駆ける~雨の「目覚め」
・ここは
映像美とBGMの両方で魅せる場面です。思い切り目と耳に焼き付けましょう。『ヒックとドラゴン』でいうところの"Test Drive"や"Romantic Flight"といった場面に該当します。
・
雨が(雨だけじゃなく純粋な人間の花も)「
目覚める」場面でもありますが、作中で初めて雨が声を上げて笑う場面でもあります。
・雪を駆ける雪と雨は、
お互いをそれぞれ見ています。
・雪上をかけた後のきらきらは、花が彼を初めて見かけたときの
キラキラとつながっています。
・かなり
ヘンな見方ですが、雨が溺れて助けられたとき直接助けたのは雪ですが、
彼が自分が生きられなかった分の命をあげたのかも。これはのちのシーンにもつながります。(以下、このフラグを
★印で示します)
雪の入学~成長(子供たちの中の人がそれぞれ変わるまで)
・花が自然観察の森に最初に行く場面で森に住む動物たち的な展示で
キツネを最初に持ってくるのはかなり意図的ですな。
・老オオカミとの対面。花が初めて
他者に子育てについて質問をする場面であります。前に地元の若い母親たちに「何でも聞いてね」といわれたときにはできなかった質問であります。
しかし、答えはなかった。
・天道理事長の言葉「
ウチで預かって治療した後に」
で終わっている意味。
・「父さんに会いたかったな」(
★)のフラグ→実は助けてもらったときに会っていた?
これはちょっと考えすぎか。
・
この頃から、花の「ふぅ」が出始めます。(加齢?)
・「ヘンな目で見られる」→
どう生きるかに目覚める場面でもありますが、雨よりはだいぶ遅くなっています。そして服の変化。徐々に
雪の目指す方向が変わっていきます。雨にとっての「野生への目覚め」と同じです。
・中の人が変わる直前の
時の経過の映し方は秀逸です。
草平・先生との出会い~きょうだいの争い
・花の質問への答えは出なかったが、
雨の質問には答えが出た。二つの対比。
・図書館で、そして階段での
雪と草平・
花と彼の対比。この場面で雪は目が泳いでいるのですが、草平が花にオオカミが見えたってどういう意味?と訊かれたときと同じです。
・草平を傷つけた雪の
目の色=大喧嘩になったときの雨の
目の色。
・「おみやげみっつ」が「効かなかった」→
大人へのステップ。
・「耳だよ」と母親を振り払うしぐさを草平がしましたが、このときから
母親についてよく思っていなかったのかも。
・「おおかみがやったんだ」の
草平の思いつめた顔。
・教室に戻った雪。このときの
男子女子の温度差。女子はどっちかといえば守る態度、男子は探るような態度。男子のコヨーテさんとしてはやはり男女差がどうしても気になってしまいます。
・大泣きする雪を見た花。たぶん順調に育ってきた
雪が泣くのを花が見たのは初めてかも。
・草平が持ってきた給食のパンを、ミシンの下にうずくまってチラ見する雪=「保育園行きたい」で部屋のカドに収まっていた幼少の頃の雪。大人への階段を昇っているとはいえ、まだ
子供?
・草平が傷を見せるシーン。ここは特に
雪の表情に注目してください。幼い頃は結構自分勝手に振舞っていたのですが、しっかりと
他人の痛みがわかるようになっている。最近コヨーテさんはここでウッときます。
・
先生の雨への手ほどき≒韮崎の花への手ほどき。
・クマから身を伏せた先生の意味。
・
見たことを饒舌に話す雨を見た花。彼の姿を重ねながらその話を聞いていたのかも。
・「オオカミにならない」と言いながらもなってしまった雪→「
また自分はどう生きるか迷ってしまった」ために泣いたのだと思います。(痛みもあるでしょうが)
・自分の子育てについての質問(というか不安)を彼の写真に語りかける花。しかしここでも
答えはない。
子供たちの目指す道~夏の豪雨
・「
お母さんのお願い」。雪が幼い頃に動物を見てわがままに振舞ったときに言った「
お願い」とはまったく異質のものだと思います。かなり
ヘンな考察ですが花は雨におおかみとして生きてほしくなかった?そこまでではないにしても、多少はそういった思いがあったはず。
・『おかあさんの唄』でいうところの「
遥か彼方見つめる眼差し」のシーン。本気で自分の将来についてと母の想いについて考える。
・「ツバメが飛べる速度」→
ツバメは巣立ちの象徴。
・担任が午後の授業はしないと言うとこのガヤ声の中に「
草平、顔がすごい」という声がかすかに聞こえます。(はっきり聞こえたわけじゃないからここは皆さんがしっかり聞いてその意味を考えてください)
・
イナカの小学校あるあるがいくつか散りばめられていましたが、地域ごとで違うでしょうから言及はしません。
雨の捜索~花が崖から滑落するまで
・
下級生のけんかを止められない雪(信乃は「けんかしない!」とたしなめることができましたが)。→
雪と雨のけんかを止められなかった花とつながってきます。
・雨の「
行かなきゃ」。何も告げずに去っていくのは、彼の死の日を思い起こさせます。
・雨を探す花はかなり
艶かしく描かれています。多数の資料で「意図的にそうした」と書かれていましたがその意味。
・花が出会った
クマの意味。韮崎の「ほっとけ」に通じる?
雪の「告白」 雨の「旅立ち」~エンディング
・雪の告白シーンもかなり
男女差はあると思います。コヨーテさんはかなりグッとくることはくるのですが、それ以上に
この後のシーンで涙腺が壊れてしまうのでちょっと薄れてしまうのです。好きなシーンだけど…。
・大切な秘密を喋って、それでもなお
笑顔である草平に雪は、花の「
笑顔の強さ」を重ねたのかも。
・「一匹『
おおかみ』で生きてく」
・雪のせりふ「
今まで苦しかった」=彼のせりふ「
怖かった」
・
草平の「
わかってた」と、この直後のシーンの
花の「
わかってた」の対比。
・ここは映像美。
風に吹かれるカーテンは秀逸です。
・夢の中での花と彼との再会。再び(
★)フラグの登場です。
花にも命をあげに来たと考えるコヨーテさんはかなり異端なのでしょうが、このほうが
涙腺崩壊確率が非常に上がります。
・雨の旅立ち、ここはコヨーテさんは何も言いません。「送り出された側」の存在であるコヨーテさんは正直涙腺が壊れっぱなしでこのシーンについて考える余裕がなくなってしまいます。とにかく、
雨の雄叫びと花の「しっかり生きて!」に「全て」が象徴されています。
ただ感じましょう。別れの悲しみから、送り出す誇らしさというか、徐々に気持ちが変わっていく花の様子もコヨーテさんには(なんとなくではあるが)わかります。
・雪の
使い込まれたランドセルと、雨の
比較的きれいなランドセルとの対比。
・「遥か遠くの峰を見るように」→雨を送り出しておしまい、ではなくきっちりと
その存在を気にかけ続けている。
・
最後の花の笑み。本当にこれにはいろいろ詰め込まれていると思います。寂しさを紛らわす?子供たちを育てた安堵?子供たちとの再会の期待?皆さん個人個人の思いでいいんじゃないでしょうか。彼からの「答え」はありませんが、子育てっていうのは
答えがないことこそが答えなんじゃないでしょうか。
作品全体を通じて
・雲の使い方は細田作品に共通していますが、この作品ではそれ以上に
風の使い方が秀逸です。ヘンな言い方ですが、コヨーテさんは他者にオヌヌメする際「ここを注目すれ」っていうときに「
風を感じてくれ」と紹介しています。この作品のポイントとなるシーンは風が吹いています。花の夢の中。彼が「秘密」を打ち明けるシーン。あめが自分の将来について考えるシーン。雪の告白シーン。雨が花の元から離れるシーン。最後の雨の雄叫びの直前のシーン…。
・
おっぱい成分の変化。かなり花の胸元にばらつきがあるように思えますが、女性らしく、母親らしく見える場面輪やや強調されているように思えました。
おっぱいソムリエじゃないからあまり深くは言及しませんが…。
・忘れちゃいけないのが牛乳瓶に生けられた
季節の花の存在です。四季折々を感じてください。
・
笑顔のおかあさんは、世界で一番強い! コヨーテさんが上市町観光協会の「おおかみこどもノート」に書き記した言葉でもあります。
以上長文駄文失礼しました。こんなに自分が考えたことを書いたのは卒論以来だろう。
もうちょっといろいろ思ったことがあってメモに書き忘れたことがあると思うけど、現時点ではこれくらいですかね。まあ皆さんの心で実際に見て実際に考えてみてください。
胸を張って他者にオヌヌメできる作品だと思います。この作品と出会えて、本当によかった。