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100均商品も活用した“お金をかけない防災対策”数千円の備えで数十万円の出費を抑えられる

2023-03-11 19:22:12 | ニュース
100均商品も活用した“お金をかけない防災対策” 数千円の備えで数十万円の出費を抑えられる
2023/03/11 15:15
災害時、電灯やスマホはすぐに使えるようにしたいもの(写真:イメージマート)
(マネーポストWEB)
 今年も3月11日を迎え、地震の恐ろしさ、備えの大切さについて思いをはせる人も多いだろう。しかし、いざ、「ちゃんと防災を考えよう」と思っても、「何から手をつければいいのか?」「意外とお金かかる?」と気持ちが萎えてしまう人もいるかもしれない。そこで、国際災害レスキューナースの辻直美さんが「なるべくお金をかけない備え方」を解説する。「水」と「トイレ」の対策を紹介した前編に続き、後編では「落下対策」「光」「モバイルバッテリー」について解説する。【前後編の後編。前編から読む】

 * * *
 防災を行ううえで大切なのは「優先順位」。一度に完璧に備えようと気負うのではなく、「自分にとって何が大切か」を考えて、そこに手当てをしておくことです。

 生きていくために必要な水、避けられない排泄に関するトイレの優先順位は高く、まず備える必要があります。この2つが押さえられたら、落下対策、光、モバイルバッテリーの3つも備えておくべきです。

100均でできる落下対策
 大きな地震が発生すると、家中のものや家具が落ちたり、倒れたり、移動します。場合によっては、テレビや電子レンジといった重い家電が飛んできます。命を守るため、そしてすみやかに日常にもどるため、室内の落下対策は必要です。

 ここで活躍するのが、100均のアイテムです。最近では、100均に防災コーナーが設けられていたりして、ラインナップも充実しています。

 電子レンジやテレビの下は耐震ジェルを、家具の足元には耐震板をかませます。とくに100均の滑り止めシートはとても優秀。これを棚に敷いたり、収納ボックスの底に貼ったりするだけで、地震発生後の状況はまるで変わります。

 家具やものがいっぱいでどこから手をつけていいのかわからない、という場合は、「これは壊れたら嫌だな」というものから対策を。買ったばかりのパソコンや、コレクションしている食器類など、自身が守りたいところから手当てをしてください。

 100均をフル活用する一方で、「ここは!」というところはお金をかけてほしいと思っています。たとえば、棚の扉につける耐震ラッチや引き戸ストッパーなどの金属製の部品が含まれるグッズは、1000〜2000円程度のものを選びましょう。劣化や精度への安心感が違います。

 2018年6月18日に起きた大阪府北部地震で、私が住むエリアは震度6弱。わが家のキッチンは調味料のボトルが4本倒れただけでした。

 一方、同じ間取りのお隣さんは棚から食器がたくさん落ちて割れてしまい、大変な状態になっていました。リビングなども含めて、現状復帰に60万円ほどかかったとも聞きました。

 数千円の備えで、数十万円もの出費を抑えることができる。防災はいざというときの“保険”でもあるのです。

電灯も100均で十分
 光がないという状況は、人を不安にさせるものです。また、被災直後、暗闇の中を移動して、ケガをしてしまう、ということも少なくありません。足に大きな負傷を負うと、その後の避難や復旧に大きな影響が出てしまいます。
 懐中電灯を用意しているお宅は多いかもしれませんが、理想は一部屋に一つ、一人に一灯。でも、しっかりとしたものを揃える必要はありません。100均で売っているもので十分です。広く灯せるランタンタイプ、移動時に便利なヘッドランプが便利です。

モバイルバッテリーは大容量タイプを
 被災時、情報を集めるのも、大切な人と連絡をとるのもスマートフォンです。「命綱」ともいえるスマホですが、電池が切れてしまったら終わりです。

 避難所には充電スポットが設置されることがありますが、コンセントの数が限られます。充電の順番をめぐって言い争いが勃発することもしばしば。だからこそ「モバイルバッテリーがある」という事実は、被災直後の混乱時、心の安寧につながります。

 100均でもモバイルバッテリーが1100円ほどで売られていますが、容量は決して十分ではありません。

 電気の復旧まで、どれだけ時間がかかるのかわかりません。長引くことを想定し、4〜5回フル充電する可能性を考えると、20000mAhはほしいところです。理想を言えば、家族1人に1台用意し、ソーラー充電ができるタイプがあるとなお安心です。

「自分にとって大切なもの」から備える
 前編で紹介した水とトイレ、そして後編で紹介した落下対策、光、モバイルバッテリーもくわえた全部で5つの備えは、生きていくことにかかわることですから、多くの人にとって優先順位が高いものです。でも、このとおりすべてを完璧にやる必要はありません。

 例えば、ガラケーを使っていて、日常的にラジオを聴いているという人であれば、大容量のモバイルバッテリーは必要ないですし、「おなかが空くとまるで力がでない」という人は食料備蓄からはじめたほうがいい。考えるべきは「自分にとって何が大切か」です。何がないと困るのか? できるだけ日常に近い暮らしをするためには何が必要か? 日々の生活を“棚卸し”していく感覚で考えていくのがおすすめです。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
辻直美(つじ・なおみ)/国際災害レスキューナース。一般社団法人育母塾代表理事。阪神・淡路大震災を経験し、実家が全壊したのを機に災害医療の道に。現在はフリーランスのナースとして、「災害は怖いけど防災はオモロイ」をテーマに講演や防災教育を行うほか、後進の指導にも注力。主な著書は『プチプラで地震に強い家づくり』(扶桑社)、『保存版 防災ハンドメイド 100均グッズで作れちゃう!』(KADOKAWA)。最新刊(監修)『地震・台風時に動けるガイド』(メディカル・ケア・サービス)が3月末に発売予定。