風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第一部) 其の六

2010-01-26 21:37:24 | 大人の童話

入学式が終わり教室に戻る時、夢はちょっと上を見上げました。

四小がお祝いしてくれているような気がしたからです。夢は明日からの学校生活が

待ちどおしくなりました。プールも体育館も無い学校、でも校庭は広く遊び道具も

十分あります。38人のクラス仲間といっしょに、たくさん勉強してたくさん遊ぼうと

思いました。そしてもう一つ、学校に来る一番の楽しみになりそうな四小との語りあい、

夢はわくわくしてきました。


風の向こうに(第一部) 其の五

2010-01-25 22:26:20 | 大人の童話

「うわー、きれい。校舎がキラキラ光ってる。それに、なんだか暖かい。」

四小の体全体からあふれ出る光は、この世のものとは思えない美しさでした。

やがて、あふれんばかりに四小を包んでいた光は、ゆっくりと静かに消えて

いきました。すべての光が消える間際、四小の声が響きました。

「六年間、いっしょに楽しくやりましょうね。あなたの方からわたしに会いたくなったら、

校庭に立って、わたしに会いたいと強く思って。そうすれば、また必ず会えるわ。」

瞬間、光は消え校舎は元の姿に戻り、あたりには、新入生とその保護者の

ざわめきだけが聞こえていました。

 

 

 


戸久野第八小学校の呟き

2010-01-24 22:39:47 | 校舎(精霊)の独り言

みなさん、こんにちは。

私は、戸久野第八小学校といいます。物語の一方の主人公、四小の妹です。

四小の八つ下の、昭和46年生まれです。実は、私はこの3月で閉校になります。

すごく寂しいけれど、いろいろな事情で仕方がない・・・・・・です。う、でも・・・・寂しい。

この39年間、私はたくさんのことを見てきました。39年の間に、私からたくさんの

子どもたちが巣立って行きました。その多くは、今ではもう立派な大人になって

います。今、私の所にいる子どもたちは、二十何人という、本当に少ない数ですが、

私は、最後まで子どもたちを、静かに優しく、そしてしっかりと見守ってゆきたいと

思っています。

どうか、私から巣立った子どもたちが、ずっと私のことを覚えていてくれますように。

そして、一小の姉から十小の妹が幸せでありますように。

                平成22年1月24日 

 

 


風の向こうに(第一部) 其の四

2010-01-24 22:01:29 | 大人の童話

四小はちょっと考えたあと、

「人は、自分たちが造った物には心など無いと思っているわ。たとえば、

わたしたち学校の校舎なんて、ただの箱・入れ物と。でも、違うの。

人が造った物でも、皆心はあるの。ただのコンクリートの校舎でも心はあるのよ。

わたしは造られてから今まで、ずっとこうして子どもたちに語りかけてきたわ。

でも、誰も気づいてくれなかった。あなたが始めてよ。ありがとう、気づいてくれて。

うれしいわ。」

と、本当にうれしそうに言いました。そして、更に大きな光で

自ら体全体を包み込みました。

 


風の向こうに(第一部) 其の参

2010-01-23 23:57:54 | 大人の童話

「入学おめでとう。これからよろしくね。」

それは四小の声でした。四小は暖かな眼差しで夢を見つめていました。

夢は驚きながらも、なぜか心うきうきして聞きました。

「あなたはだあれ?」

「わたし?わたしは四小よ。わたしは、校舎の精霊なの。」

「へえー、そうなの。」

夢はにこっと笑って言いました。