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NHK 教育で、2010年9月30日に放送された、
地球ドラマチック 「 町中みんなで合唱団! ~ イギリス 涙と笑いの猛特訓 ~ 」
という番組を見て、えらく感動したので、書いてみようと思います
ロンドン交響楽団のコミュニティー合唱団は、もともと、同じ合唱好きの10人が集まって結成した、
アマチュア合唱団だった。それが、今では、堂々たる合唱団になった。
指揮者を務める、 ギャレス ・ マローン は、こうした、小さな合唱団を育てることに、情熱を注いでいる。
ギャレス 「 歌を歌うということは、特別な人たちがすることだと、思いこんでいるのです。
どんな時でも、歌は、なんらかの形で歌われています。でも、今のイギリスは、
地域ぐるみで歌おう、という想いを失いかけています。
ソロで歌うことに自信のある人、カラオケをやりたい人、
テレビに出たり、 CD を出したりする人だけが歌う、
そんな考え方は、間違っています。誰でも、どこでも、地域活動として歌うべきです。
地域と合唱は、切っても切れないものです。 」
これは、そんなギャレスの想いを、ある町で実現するまでの物語 ( 実話 ) だ。
コミュニティー合唱団作り請負い人のギャレスのもとには、
いつも、様々なコミュニティーから依頼が来る。
その中で、ギャレスが、特に目を引いたのは、
低所得者向けの巨大な団地のある、サウスオキシーに住んでいる、
パム ・ ワイズ 牧師 からの手紙だった。サウスオキシーには、目立った文化活動がなく、
「 歌を、歌いたかったら、他の町に行くしかない 」 と牧師は訴えていた。
確かに、こういう所に合唱団は生まれない。
ギャレス 「 そんな町にこそ、合唱団を作りたいんです。 」
サウスオキシーは、ハートフォードシャー州の南西部にある町で、
ロンドンの北西およそ16 km のところに位置している。
ロンドン大空襲で、焼け出された人たちに、住まいを提供するため、戦後作られた。
住民は、およそ1万2千人、商店街と6つの小学校がある。労働者階級が住む地域で、
娯楽といえば、パブが5つ、サッカーチームとボクシングジムが1つずつ。
しかし、昔のような活気は、どこにもない。
A さん 「 とにかく活気がないんだ。にぎやかなのは、パブくらいじゃないか。 」
B さん 「 まったく何もないところだよ。他の町の人は、見向きもしないし、
お金も、別のところに流れていっちまう。 」
C さん 「 私も、町の人たちみんなも、 “ 見捨てられた ” という気持ちを抱いています。 」
子供 「 サウスオキシーに住んでいる、というと、バカにされるんだ。そんなの間違ってるよね。 」
ギャレスに与えられた時間は、8か月。その間に、合唱の楽しさを、住民に知ってもらうことが目標だ。
今のサウスオキシーの人たちには、日々の楽しみが、ほとんどない。
( 商店街の店の中で、ギャレスと町の人の会話 )
D さん 「 この町は、救いを求めているんだよ。
みんな、もっと、自信をもって、胸をはって暮らせるようにね。 」
E さん 「 私は、この町に住んで、60年になるが、何も変わらないんだ。何ひとつね。 」
D さん 「 昔から、ずっと同じで、変化がないのさ。 」
E さん 「 町のことなんか、誰も気にかけていない。住んでいることを、誇りにしたいよ。 」
D さん 「 それには、みんなをまとめてくれる誰かが、必要なんだ。 」
町のいろんなところを周って、人々から話しを聞くギャレス。
ボクシング ・ ジムに通う少年の話。
「 ここは、ろくなところじゃないよ。退屈だから、この町が好きじゃない。 」
しかし、ジムに通う人々はみな、熱心に練習をしている。
ギャレス 「 このジムの少年たちは、目的意識を持っていて、感心させられます。 」
ジムのオーナー 「 でも、ここに来る前は、こうじゃなかった。ボクシングを通じて、
自信をもち、社会のルールを学んだのさ。みんな、いい子だよ。 」
ギャレス 「 あなたのやっていることと、僕が合唱団でやろうとしていることには、共通点があります。
人を集め、大切な目標を、彼らに与えたいんです。 」
ジムのオーナー 「 暴力も減るかな? 」
ギャレス 「 ええ、そう思います。 」
( 取材しているスタッフに )
ギャレス 「 この世で最高の町、とは言えなくても、最悪の場所ではありません。
確かに、多くの人々は、チャンスに恵まれていませんが、熱い心と魂を持っています。 」
ギャレスは、合唱団の練習場を確保するために、まず、小学校に向かった。
そして、町中を歩いて、団員をスカウトするために、人々に声をかけるが、答えは 「 No 」。
ギャレス 「 みんな、他の人の目が心配で、しりごみしています。 」
町のサッカーチームに行き、勧誘するが、そこでも 「 No 」。
ギャレス 「 選手のみなさん、ここにチラシを置いておきます。今日の勝利、おめでとうございました! 」
メンバーが歌うことに、積極的なクラブが、一つだけあった。
そこは、年金受給者専用のサロン。建物の外まで、みなの歌声が聴こえてくる。
そこで、素晴らしい歌声を披露してくれた、フレッドは、4週間前に、妻 ベティを亡くしたばかりだった。
合唱団の話は、悲しみをまぎらわすためにも、ちょうど良いタイミングだった。
ギャレスは、10日間かけて、サウスオキシーのいたる所に、団員募集のポスターを貼り、
チラシを、1000枚以上配った。
いよいよ、練習の初日を迎えるが、はたして、何人、集まるのか?
小学校の教室を、団員の控室に、講堂を練習場に借り、ギャレスは、人々がやって来るのを待ち受けていた。
すると、次々と、老若男女、様々な町の人々がやって来た!!
ギャレス 「 こんなに来てくれるなんて、信じられないなあ 」
( ギャレスと集まった町の人々 )
ギャレス 「 みなさん、こんばんは!サウスオキシー ・ コミュニティー合唱団へ、ようこそ!
こんなに大勢の人に集まっていただいて、今、最高に感激しています。
みなさんが、合唱を心から愛し、メンバーであることに、誇りをもてるよう、
がんばりましょう!! 」
「 こちらが、主旋律、こちらが、ハーモニー、あちらは、男性です。 」
とギャレスが言うと、町の人々が、みな、席を移動しはじめた。
( 取材しているスタッフに )
ギャレス 「 信じられません。こんなに集まるなんて … 。年齢や性別にも、偏りがなくて、
いかにも、コミュニティー合唱団という感じです。子供とその両親、お年寄り、
先生たち、この町を形作っている人たちが、たくさん集まっています。
問題は、これからです。 」
参加者は、200人近く。合唱団としては、イギリス屈指の大所帯となった。
まずは、有名な、ビーチボーイズの 『 バーバラ ・ アン 』 という曲を、みんなで歌う。
メンバーのみなさん 「 バ ・ バ ・ バー バ ・ バ ー ラ ・ アン♪ 」
みんな、恥ずかしそうだが、とても楽しそうだ。みなが、歌い終えると、
ギャレス 「 合唱団、誕生です! 」
みな、笑顔で、うれしそうな町の人たち。
( 取材しているスタッフに )
ギャレス 「 信じられません。こんなに大勢の人が、集まってくれたなんて!
これほどの人数がいると、現在の合唱団というより、ヴィクトリア朝時代にあった、
大規模な合唱団に、近いものになります。とても、興奮していると同時に、
圧倒されてもいます。 」
2回目の練習。
多くのメンバーが、これまで、歌とは、縁の無い生活を送ってきたが、
合唱団は、意外なほどのまとまりを見せている。
ギャレスは、後ろで歌っていた、新しく来たメンバーが、素晴らしい歌声を持っていることに気付いた。
ディー 「 メンバーが5人しかいない、別の町のゴスペル合唱団で、歌っていたの。 」
ギャレス 「 あなたのような、歌に自信のある方にも、参加してほしかったんです。 」
『 ハイヤー ・ アンド ・ ハイヤー 』 を練習する合唱団。
優れた歌唱力をもつディーだが、合唱団への参加は、勇気のいることだった。
2年前に、サウスオキシーの公営住宅に、引っ越してきて以来、ずっと、
地域となじめないと、感じてきたからだ。
ディー 「 私は、サウスオキシーに来て、はじめて、差別というものを経験しました。
引っ越して、早々、家の裏にたむろしていた若者が、窓に石を投げつけて、
私たちをからかったんです。仕事帰り、子供たちと車から荷物を降ろしていると、
10人くらいの若者が、ニヤニヤ笑いながら歩いてきて、
私たちを侮辱したこともありました。すごく、腹が立ちました。
この町での生活は、私たちにとっては、決して楽しいものじゃないんです。 」
( ギャレスは、練習に顔を出さなくなっていた、ジムのオーナー、マックスが経営するパブで話す )
マックス 「 自分の知っているやつが、5人しかいない。
この合唱団は、サウスオキシーを代表しているとは言えない。 」
そこで、ギャレスは、合唱団の練習時に、
ギャレス 「 みなさん、こんばんは!お知らせがあります!
そもそも、僕が、サウスオキシーにやってきた目的は、
ここを歌う町にして、何か誇れるもの、地元を愛するよりどころを、
この町に築くことでした。
今、ここにいらっしゃるみなさんは、そのことをご存じだと思います。
でも、ここに、いない人は、それを知りません。そこで、提案です。
11月21日に、第1回公演を、行いましょう! イェ~~~!! 」
メンバーのみなさん 「 パチ パチ パチ パチ ( 拍手 ) ! 」
ギャレス 「 ありがとう。ただし、現在、サウスオキシーには、合唱団全員と観客を、
収容できるような広い会場がありません。
そこで、ちょっとしたアイデアを、思いつきました。
デビューの舞台は、商店街です! 」
メンバーのみなさん 「 あはははは~ ( 爆笑 ) ! 」
ギャレス 「 何か、ご質問は? 」
F さん 「 雨が降ったら? 」
ギャレス 「 決行です! 」
準備期間は、2週間しかない。
ギャレス 「 あせらなくて、大丈夫!これまで、やってきたことに、自信をもって!
お疲れさま。 」
メンバーの カーリー ・ ハービー は、幼い娘の乗ったベビーカーを押しながら、
さっそく、周りに声をかけはじめた。
カーリー 「 たくさん人を集めなきゃならないの。あなたは、顔が広いから。 」
カーリーの友人 A 「 わかった。まかせてよ。 」
カーリー 「 ネットでも、何でも、とにかくほめまくって! 」
カーリーの友人 B 「 私だって、ちゃんと行くわよ! 」
カーリー 「 口先だけじゃダメよ。必ず見に来てね! 約束よ!絶対に来て。 」
( メールで友人に知らせまくるカーリー )
カーリー 「 初めての公演があるの。よかったら、来てくれない? 」
( 取材しているスタッフに )
カーリー ( 2人の子供をもつ母親 )
「 いっとき、母親業を離れて、自分自身でいられるのが、うれしいんです。
この6年間、仕事といえば、子供たちの世話と家事だけ。
もちろん、子供たちは、何よりも大切な存在だけど、時には、
母親じゃない自分に戻りたいの。 」
「 単に、1メンバーというだけじゃなくて、合唱団の成功に、積極的に力をかして、
あのメンバーの中で、知られた存在になりたいんです。それを、家族や友達にも、
私を誇りにしてほしい、って思っているの。 」
コンサートで歌う曲は、 『 ハイヤー ・ アンド ・ ハイヤー 』 。
しかし、合唱団は、なかなか、ソウル ・ ミュージックの感覚が掴めない。
本番まで、あと、1週間だが、ソロの担当者が、決まっていない。
ゴスペル合唱団で、歌っているにもかかわらず、ディーが手を挙げなかったが、
ギャレスにとっては、彼女が、頼みの綱だった。
ディーに、 「 歌ってみない? 」 と声をかけるギャレス。ディーのソウルフルな歌声は、文句なしだ。
ギャレス 「 彼女が、ソロでいいですね? 」
メンバーのみなさん 「 ( 大拍手 )!! 」
いくら良い歌を歌っても、聴く人がいなければ、イベントは、台無しだ。
メンバーは、観客集めにも、全力を尽くす。
( メンバーが町の人に )
メンバー 「 こんにちは!この先の商店街で、土曜日の11時から、コンサートが開かれます。
この町の、サウスオキシーの合唱団です! 」
( コンサート当日の集まりで、メンバーたちに )
ギャレス 「 音響的には、かなり、やっかいです。電車が通るし、
近くの軍事基地から、ヘリも飛んでくるでしょう。
暴走族があらわれて、クラクションを鳴らすかもしれません。
しかし、何が起きても、歌い続けましょう!
誰かが、僕をつまみ出そうとしてもです ( 笑 ) 。
とにかく、歌い続けるんです。
僕と目が合って、微笑んだら、微笑み返してください。
それが、みなさんの歌声を、より美しいものにします。
お客さんたちに、我々は、合唱が好きなんだ、というところを、見せつけるのです!
堂々と振る舞いましょう!! 」
合唱団が、商店街の即席会場に、並びはじめると、たちまち、お客さんが増えてきた。
いつもは、人けのない商店街に、500人を超える観客が、詰めかけた。
( 町の観客たちへ、挨拶の言葉を述べる )
ギャレス 「 みなさん、こんにちは!こんな寒い日に来てくださって、心から感謝しています!
どうか、あたたかく、受け入れてください。この合唱団こそ、みなさんの代表、
サウスオキシー ・ コミュニティー 合唱団だからです。 」
( 振り返り、メンバーに、 「 笑顔でいてよ 」 とジェスチャーで伝えるギャレス ^ ^ )
そして、ギャレスの指揮とともに、 『 ハイヤー ・ アンド ・ ハイヤー 』
( 詩 ・ 曲 G ・ ジャクソン / R ・ マイナー / C ・ スミス ) の合唱がはじまる。
ギャレスにうながされ、手拍子をして、もり上がる観客たち。
ギャレス 「 よくやった! 素晴らしい! 」
最後まで、思いっきり、歌い切り、さわやかな笑顔に包まれるメンバーたち。
それぞれ、メンバーが歓喜の言葉を伝えている中、ディーの言葉が、印象に残った。
ディー 「 集まった人たちの顔を見たら、笑顔がこぼれていて、
誰も、しらけた感じはありませんでした。
サウスオキシーが、一つになったんです。
それと、こんなに長い時間、商店街で過ごしたのは、初めて ( 笑 )! 」
( 制作 Twenty Twenty Television イギリス 2009 )
The Choir: Unsung Town - Episode 4 Preview Rehearsal - BBC Two
The Choir: Unsung Town - Shake Ya Mamma Episode 2 Preview - BBC Two
The Choir: Unsung Town - Singing Lesson Episode 2 Preview - BBC Two
( 動画が消えていましたら、ごめんなさい )
なんて、素晴らしい合唱団なんだろう !
こんな素敵な、合唱団作り請負い人が、日本にもいてくれたらいいなあ
読んでくださり、ありがとうございます
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