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日本歴史紀行

現代語訳 徳川実紀 49 元康君、岡崎城に入る


岡崎城大手門
愛知県岡崎市康生町 岡崎公園



元康君、岡崎城に入る


元康君が大樹寺で前途を悲観していた最中、義元殿から目付として元康君に付き置かれていた駿府の老臣達は三河に留まる気は毛頭無く、岡崎城に籠もる城代の山田新右衛門、武田上野介らと一刻も早く駿府に戻りたい様子であった。


矢作川の流れも元に戻りつつあると、勢いに任せて雪崩れ込んだ織田勢も西へ引き揚げた。
大樹寺門前も喧騒が収まり、静けさを取り戻していた。




この様子を見届けると、城代の山田新右衛門と武田上野介は争う様に岡崎城を引き払ってしまった。

この様子は、岡崎城下で徴税を取り仕切る鳥居伊賀守忠吉が逐一知らせていた。



〜岡崎を逃いたか…空城ならば拾おうではないか。〜


元康君は、信の置ける三河普代を周囲にそう漏らした。

駿府に戻りたい駿河、今川の老臣を見ていると滑稽に思えて呼び寄せた。

〜その方らが帰って氏真様に申すべきは、今回の凶変に同じく驚いておる。信長は思わぬ大勝利に喜び、大将は驕り、兵士は怠っているに違いない。今度はこちらが不意を突けば味方の勝利間違い無し。すぐさま兵を進められるならば、私も手勢を引き連れて旧恩に報いる覚悟であることを、必ずこの旨を氏真様はじめ、諸将、老臣に申し通せ。〜

とおっしゃった。
目付の老臣は、恭し(うやうやし)く聞き入ると足早に大樹寺をあとに、山田新右衛門達の後を追っていった。


永禄三年五月二十三日、
岡崎城代 山田新右衛門、武田上野介以下、
三浦、飯尾、岡部某ら、駿河の老臣は皆、岡崎を引き払うのを見届けると、元康君はついに岡崎城へ堂々入城された。




つづく






 



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