近江屋跡
坂本龍馬、中岡慎太郎 遭難地碑
京都市中京区河原町
幕末維新回天の先駆けとして駆け抜けた志士、坂本龍馬がこの日、暗殺されました。
1853年 嘉永６年４月過ぎ、江戸に入った龍馬は、土佐藩邸で起居しながら千葉定吉道場で北辰一刀流を学びます。
千葉道場 千葉定吉の長男、重太郎や妹、佐那とも親交を深め、江戸での生活も慣れてきた６月。
ペリー提督率いるアメリカ海軍の東インド艦隊【ペリー艦隊】が浦賀沖に来航しました。
浦賀沖の騒ぎは江戸にも伝わり騒然となる中、龍馬は品川の土佐藩下屋敷周辺の警備に駆り出されます。
ペリーの来航は徳川幕府の治世の下、泰平の世にあった日本を外圧により、強引に開国を迫るもので、これにより尊皇攘夷【天皇を尊崇し、外敵を排除する】を主張する志士が誕生します。
土佐では龍馬と同時期に江戸にあった武市半平太が後に土佐勤王党を結成して一大勢力を作り上げます。
尊皇攘夷運動はやがて徳川幕府を倒す倒幕へと変貌し、龍馬は対立していた薩摩と長州の手を結ばせるという薩長同盟を仲介するという大役を果たすことになります。
坂本龍馬、勝海舟 師弟の像
東京都港区赤坂６丁目
龍馬、師、勝海舟との出会い
弟子の坂本龍馬からは、日本第一の人物 と称される勝 海舟は、極貧の旗本 勝 小吉の長男でした。
ペリー来航を受けて海防に対する意見を公募した幕府に、勝が提出した海防意見書が老中 阿部正弘や海防掛 大久保一翁により認められ、出世の糸口を掴んだ勝は、1860年 万延元年に咸臨丸で日本初の太平洋横断を経てアメリカ大陸に渡りました。
アメリカで先進の技術力と軍事力を垣間見た勝は、海軍の必要性を痛感して帰国します。
帰国後、勝が目にしたのは、尊王攘夷の思想が溢れ、桜田門外の変で大老 井伊直弼が暗殺されて権威が失墜した幕府の姿でした。
皇女 和宮と将軍 徳川家茂との婚姻、公武合体で権威回復を計る幕府の軍艦奉行並に就任した勝は、海軍の必要性と開国を主張する異端の幕臣として巷で知られ、様々な志士が勝を訪ねる様になります。
1862年 文久２年、攘夷思想のあった坂本龍馬は、道場の師匠 千葉定吉の長男 重太郎と勝を斬るつもりで邸宅を訪ねて来ました。
剣術指導で知己のあった越前の松平春嶽の紹介状を千葉重太郎が持って来たため、難なく勝の屋敷内に案内されました。
勝は物騒だから刀を中に持って入りなさいと気軽に二人を邸宅に招き入れます。
勝は龍馬と重太郎に江戸の下町言葉で咸臨丸での渡航からアメリカで見た文明と軍事力、それに話はヨーロッパの情勢にまで広がりました。
最初は勝を斬るつもりで来た龍馬は、勝と質疑を繰り返して交わし、天子様は夷狄（いてき）をことのほか嫌っていることと、外国の輩が日本に土足で踏み込むのを見過ごすのかと問うも、勝は日本を守るには軍艦と船が必要であることと、龍馬の言う夷狄を追い払うには軍艦が必要で、外国の輩から日本を守るには貿易で利益を上げ、文明を手に入れなければならない、そのためには船が必要だと訴えます。
さらに勝は黒船の大砲に刀で斬り込んでも勝てないよと諭され、龍馬は勝の見識と博識にすっかり魅了され、弟子入りを直訴します。
勝は、それなら築地の軍艦操練所に来なさいと龍馬を門下に加えました。
龍馬は勝の下で航海術を神戸の海軍操練所まで学び、さらに見識と飛躍を広めて行きます。
幕府は２度目の長州征伐に失敗、14代将軍 徳川家茂が陣中の大坂城で病没と不運が続き、さらに民衆の支持を失い、将軍職に就いた15代将軍 徳川慶喜は政権を返上する決断を下し、慶応3年10月15日、大政奉還は明治天皇より奏上を勅許され、265年に及ぶ江戸幕府は終わりを告げました。
維新の原動力、龍馬散る。
大政奉還からひと月の11月15日、幕臣 佐々木只三郎指揮の京都見廻組が坂本龍馬の潜伏する近江屋を突き止め、襲撃します。
暗殺実行者の1人 今井信郎の像
静岡県島田市阪本
見廻組は、佐々木只三郎以下、渡辺篤、今井信郎、桂早之助、渡辺吉太郎、高橋安次郎、桜井大三郎、土肥仲蔵の8名で、大和 十津川郷士を偽り、店番をしていた山田藤吉を殺害し、龍馬の潜伏する2階に上がって応対した龍馬と中岡慎太郎を斬りました。
龍馬は間もなく絶命、中岡慎太郎も瀕死の重傷から３日後に亡くなりました。
慶応３年11月15日…この日
奇しくも龍馬の誕生日でした。（享年33）
